岸田政権「GX法案」、増税派にも減税派にも不幸な「無理ゲー」なワケ

「経済を良くするための税金」はありうるのか
報道アナリスト/株式会社ソーシャルラボ代表取締役
  • 岸田政権が成立をめざす2つのGX関連法案、問われるその中身
  • 左派は原発に反発。自民党政権の改革に共鳴する人たちも苦言する理由
  • 減税と引き換えに“経済を良くする税金”の提言も。政治的に現実味は?

衆参補選、統一地方選が終わり、政治の焦点は、残り2か月弱となった今国会で、どの法案が成立するかだ。選挙戦や総務省文書問題のウラで、すっかりかすんでしまったが、岸田政権が進める2つのGX(グリーントランスフォーメーション)関連法案について、環境重視の左派・リベラル派だけではなく、成長重視の改革派からも辛らつな物言いがつけられているのが興味深い。

GX実行会議で発言する岸田首相(昨年10月の第3回、官邸サイト)

2つのGX法案のうち、朝日新聞などの左派・リベラル系が神経を尖らせているのが「GX脱炭素電源法案」だすでに閣議決定し、衆院で審議中だ。同法案はエネルギー関連の5つの法律の改正案をパッケージにしている。再エネの導入を推進する再エネ特措法改正案はイメージ通りだが、左派・リベラル系が反発しているのが原子力基本法や原子炉規制法の改正案だ。

もともと日本のGX政策は、菅前政権が2050年の温室効果ガスの排出を実質ゼロにすると国際公約に掲げたことから本格化。岸田政権もGX推進の大枠は継承しているが、脱炭素に原発を活用する方向に変化した点が異なる。東京新聞が「フクシマ忘却宣言」と仰々しい見出しの社説(4月21日)を掲載したのが典型だ。

山本太郎氏が代表を務めるれいわ新選組3月末に出した声明文で「原発を推進する経済産業省が原子炉の運転規制の決定に権限を持つことになります。40年の運転制限を骨抜きにすると共に、60年超え運転も可能となる、世界に例のない危険な内容です。加えて、すでに破綻している核燃料サイクルや次世代革新炉の研究開発を今さら盛り込むなど、悪質極まりありません」などと反発を強めている。

ただ、このあたりは脱原発路線に共鳴するメディアも多く、報道もそれなりあって比較的認知されている話だ。筆者個人は原発による脱炭素はフランスでも行われており、高騰するエネルギー価格の対抗策としても安全確認が取れた原発はさっさと再稼働させよという立場だから記述をさくのも馬鹿らしく感じている。

それよりも興味深いのは、もう一つの法案「GX推進法案」に歴代自民党政権の諸改革に尽力・共鳴してきた竹中平蔵氏らの論客や、自民党よりも踏み込んだ改革を売りにする維新の国会議員が別角度から批判していることだ。論客たちからは「代案」として炭素税移行への提言もあり、“経済を良くするための税金”というフレーズまで唱えられ、全ての増税に反対する減税派の読者には心穏やかではあるまい。

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