仁義なき広島再選挙、自民まさかの敗北で“岸田首相”消滅か
黄昏のリベラル派閥「宏池会」、存亡の危機に浮上する切り札- 参院広島再選挙、自民まさかの黒星で、岸田文雄氏と宏池会(岸田派)存亡の危機?
- 自民は買収事件の余波で苦戦するも、野党もスキャンダル噴出で選挙戦は混迷
- 大下英治氏は岸田氏の再起可能性を見るも、宏池会ニューリーダーの待望論
河井案里氏の当選無効に伴う参院広島選挙区の再選挙は25日、投開票され、元フリーアナウンサーで、野党連合が推す新人、宮口治子氏(45)が、元経産官僚で自民新人の西田英範氏(39)=公明推薦=との事実上の一騎打ちを制した。
広島県は、首相候補としての復権をめざす岸田文雄氏の地元で保守王国のはずだった。河井事件の逆風とはいえ、よもやの敗北に菅政権の足元が揺らぐだけではない。岸田氏や氏の率いる宏池会(岸田派)は存亡の危機に直面した格好だ。

河井事件の余波で保守地盤が瓦解
当落判明後の午後10時30分ごろ、岸田氏は選挙事務所で挨拶に立ち、「広島県連会長として深くお詫びします」と支持者らに頭を下げた。岸田氏は午後9時前に事務所入り。覚悟は決めたように神妙な面持ちで開票速報を見つめていたが、広島で野党を圧倒してきた歴史からすれば、まだ信じられないかもしれない。
戦後の名宰相、池田勇人を世に送った広島は、自民の「牙城」だ。2019年参院選に河井氏が出馬して分裂選挙となったように、むしろ自民党内の勢力争いが何度か起きてきたほどだ。特に民主党政権が衰亡し、安倍政権が栄えた2010年代の参院選では、自民が野党候補に倍の得票差をつけることが続いた。
しかし河井陣営による大規模買収事件で、この構図が一変。事件に対する県民の厳しい視線やコロナ禍で政権に逆風が吹き続け、さらに選挙活動の最前線を担う地方議員たちも、事件の余波やコロナの影響で出足は鈍かった。 その影響は告示の頃に早くもあらわれた。
複数の自民党関係者によると、党本部が選挙前から数回行った情勢調査で、一時は8%リードだったのがみるみる下がり、告示日の頃には逆転を許す。選挙中盤には、地元メディアの出口調査で、野党側は宮口氏の出身地である福山市など県東部で大きくリードされていた。

自民の失敗は世論を見誤ったことだ。野党側も県民もマスコミも河井事件を受けて政治とカネの問題が争点になり、自民も表向きは出直しを誓っていたが、西田氏の応援演説に来た有力政治家が「政治とカネの問題は論点になっても争点にはならない」と言い切るなど本音が見え隠れ。序盤戦のとき自民の地方議員が「河井氏と対立してきた岸田派側はどこか“被害者意識”を捨てきれていない」と懸念した通りの展開になった。
激しい情報戦で二転三転の攻防
ところが思わぬ「敵失」で流れが変わる。シングルマザーの苦労人を売り文句にしていた相手候補の宮口氏が、昨年暮れにパートナーと“挙式”していたことが発覚。式の写真入りの年賀状がネット上で広がって騒ぎになり、新聞、テレビは黙殺したものの、選挙戦中盤に週刊新潮とアサヒ芸能の2誌が報道。
参院広島再選、「シングルマザー」候補に経歴詐称疑惑 男性との婚礼写真…本人は「6月に入籍予定」
選挙に情報戦は付き物。接戦であれば尚更である。4月8日に告示された参院広島区再選挙。野党統一候補の、あらぬ写真が出回っている #宮口治子 #選挙 #デイリー新潮https://t.co/Qrry1LVCMi
— デイリー新潮 (@dailyshincho) April 22, 2021
このあたりから政党やメディアの情勢調査では、宮口氏に西田氏が追いつき始め、終盤戦は朝日だけが「宮口氏先行」と分析したが、他紙は「横一線」と報じるほどの接戦になった。 情報戦でも熾烈を極めた。投票3日前には、一部県民が、河井案里氏に対して、議員在任中に受け取った約4900万円の歳費返還を要求する訴訟を起こす見通しが相次いで報道。
ただ、当選無効による歳費返還が認められたケースは地方議員であるものの、国会議員では前例がない。実際に提訴しての記者会見をしたわけでもなく、訴状提出先の地裁も広島ではなく東京とあって「野党側の仕掛けでは」との憶測を呼んだ。
それでも西田陣営の関係者が「追いつけると思った矢先での報道は痛かった」と打ち明けたように、投票日直前でのタイミングは、県民に河井事件の記憶を思い起こさせる効果があった。
追い詰められた西田陣営は、当選無効になったケースの歳費返還の仕組み化を公約にするなど、河井事件に正面から向き合う戦術に転換。大票田の広島市などで盛り返し、接戦に持ち込んだが、序盤の遅れが最後まで響いた。
岸田氏に大試練…「前門の菅、後門の林」
振り返れば、ちょうど1年前、自らが主導し、閣議決定までしていた「所得制限付き1世帯30万円」が覆され、二階幹事長や公明党が進める「1人一律10万円」に差し替えられたあたりから岸田氏の「後退」は続いた。総裁選では2位に入ったものの、89票は、菅氏の377票に遠く及ばなかった。
自民党はこの日行われた衆院北海道2区ですでに不戦敗。野党の強い参院長野補選は想定内としても、保守地盤の広島をも落としたことで岸田氏の「天下取り」は大きく遠のいたとみる向きが強まりそうだ。

近刊『内閣総理大臣』(MdN)や『大宏池会の逆襲』(角川新書)などの著書がある作家の大下英治氏は、「(岸田氏は)大きな一つの試練ととらえるべき」と前向きだ。「次の次の総裁選となる6年後も70歳とまだ若い。麻生氏は4度目の挑戦で総裁になったことを考えると、岸田氏はまだ前回出ただけ。政界の一寸先は闇。チャンスは十分にある」とも指摘する。
ただ、政界の一部には岸田氏に代わり、宏池会の次期リーダーとして林芳正参院議員の待望論もささやかれつつある。林氏は衆院山口3区への転出をめざしており、自民は、現職の二階派幹部、河村建夫・元官房長官との分裂選挙となる可能性が強まっている。
大下氏は「もし林氏が分裂選挙を勝ち抜くようなことがあれば、かつて総裁選に林氏を推した古賀誠氏はその流れを作るのではないか」と見る。宏池会OBの古賀氏は昨年の総裁選に際し、名誉会長を辞任。岸田氏と袂を分かったが、いまも隠然たる影響力を持つ。
自民党きってのリベラル派閥、宏池会は2000年、加藤紘一が森内閣を倒そうとして失敗した「加藤の乱」を機に分裂して弱体化。宏池会を出ていった麻生氏の志公会のほうが56人と勢力を広げ、48人の「本家」を逆転、麻生氏主導でかつての宏池会勢力を結集する「大宏池会」構想の機運が強まるのか、“嫡流”の岸田氏と宏池会は大きな岐路に差し掛かっている。
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