維新と読売「すき間風」…読売系広告会社が「大阪IR」広報業務辞退

IR反対の社論に“抵触”?

大阪府・大阪市の統合型リゾート(IR)計画の広報企画業務を受注する見通しだった読売新聞系列の広告会社「読売連合広告社」が一転、契約を辞退することが12日、明らかになった。

大阪府は今月2日、広告各社へのコンペの結果、同社を最優秀提案事業者に選定したと発表したばかりで、10日ほどで白紙となる異例の事態。読売新聞が社説などで大阪IRへの批判を強めていることとの関連が指摘されている。

大阪IRが計画中の夢洲地区(PhotoAC)

大阪府は、府民・市民のIRの理解を深めてもらおうと、ポスターやサイネージ、動画やウェブサイトなどを通じた広報企画を行う事業者を提案コンペ方式で公募。コンペには読売連合広告社のほか、産経新聞社、ジェイアール東日本企画、JR西日本コミュニケーションズ、トライアウト、関西ぱど×マイクロアド共同企業体の5社が応募していた。

大阪デジタルコンテンツビジネス創出協議会の事務局長や近畿大学経営学部の教授らが審査員を務め、審査の結果、読売連合広告社が最多の80.58点を獲得し、最優秀提案事業者に選ばれた。

しかし、同社は8日に臨時取締役会を開催し、この契約を進めるか見直す方向に傾いた。IRの負の側面で指摘されるギャンブル依存症への対応などが問題視されたようだ。大阪・ABCの取材に対し、同社は「新聞社の関連会社として、そうした観点からの社内検討が不十分であったと判断し、辞退することが妥当である」とコメントした。

同社の辞退を受け、大阪府はこの日、次点(75.59点)だったJR西日本コミュニケーションズと契約交渉に入ることを明らかにした。

2年前に協定関係もIRで一転…

協定締結式に出席した吉村知事と読売大阪の柴田岳社長(大阪府サイト)

ギクシャクする大阪府・市と読売だが、府と読売新聞大阪本社は21年12月、包括連携協定を締結している。府民や府内の自治体職員を対象に「読む・書く・話す」取り組みや大阪府の情報発信などについて協力関係を深めていた。

協定が結ばれた当時、読売新聞オンラインで吉村知事がSNSで休日の筋トレ姿を公開して話題になったとのスポーツ報知の記事を掲載し、アンチ維新のネット民などがまるで読売本紙が載せたかのように批判するなど物議を醸したが(関連記事)、府政関係者によると、両社の締結を受けた協力関係は順調に進んでいたようだ。

しかし統一地方選を終えた4月26日朝刊では「大阪カジノ認定 万博の理念にもそぐわない」と題した社説を掲載し、「賭博に頼った成長戦略が本当に適切なのか、大いに疑念を抱かざるを得ない」「健康、長寿を掲げる万博の理念にも、カジノはそぐわない」などと維新府政が進めるIR政策に対し、ノーを突きつけた。

こうした経緯から読売の社論との整合性を合わせざるを得なくなったとの見方が強い。「会社としてはOKなのに、グループとしてはNG。ナベツネ(渡辺恒雄)会長に反対されたのではないか」(維新府議)、「社論に合わせようと現場で忖度があったのではないか」(読売OB)などの憶測が乱れ飛んでいる。大阪府と読売大阪が締結した同協定は昨年12月に更新され、2年目に入っているが、打ち切りになる可能性すら取り沙汰され始めた。

一方、渡辺会長が開成高校の後輩である岸田首相の後押しに力を入れていることは政界では公然の事実。次期衆院選での維新の躍進も予想される中、今回の契約辞退騒動が維新と読売との間に吹き始めた「すき間風」を強めるのだろうか。

 

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