ジャニーズ問題、主要各紙社説・一面コラムで言及も、読売だけ“特オチ”

朝日は2度目の社説

ジャニーズ事務所創業者のジャニー喜多川前社長(2019年に死去)による性加害疑惑を巡って、これまで報道に消極的だった大手メディアも、現社長の藤島ジュリー景子氏が動画で謝罪したことからようやく追及モードになりつつある。動画が公開されてから初めての朝刊となった16日付紙面では、主要紙が社説や一面コラムで一斉に取り上げた。

東京・六本木のジャニーズ事務所(編集部撮影)

社説で取り上げたのは朝日毎日。朝日は「ジャニーズ謝罪 これで幕引き許されぬ」、毎日は「ジャニーズの性加害問題 社長は何も答えていない」とそれぞれ見出しからしてジャニーズに厳しい論調だ。

両紙が共に憤慨しているのは、第三者委員会を設置しないことを明言するなど事実究明に後ろ向きな会社側の姿勢だ。朝日が「当事者として利害関係のある事務所ではなく、第三者による独立した調査が必要なはずだろう」と苦言を呈せば、毎日は「現役の所属タレントらのプライバシーに配慮するのは当然だが、全容解明に背を向けることは許されない」と断じた。

動画と文書のみでの見解表明になったことには、朝日は「なぜ記者会見を開いて社長が直接、疑問や批判に答えようとしないのか」と疑問を投げかけ、毎日はその中身について「『ゼロ回答』に等しい」と切り捨てている。

東京・築地の朝日新聞東京本社(mizoula /iStock)

“前のめり”な朝日の報道ぶりを「手のひら返し」と揶揄する保守系ネット民は多いが、英BBCが3月に前社長の疑惑を取り上げてからは主要紙でも積極的に動いてきた。ジャニーズ問題の社説は今回で2度目。4月15日は各紙の“先陣”を切る形で「ジャニーズ『性被害』検証が必要だ」と訴えていた。

今回のジュリー社長の動画と声明が、新聞休刊日前夜の取材体制縮小を狙い打ちするかのような発表だった中でも、朝日は編集委員らが“休日返上”で被害者の元ジャニーズJr.の男性に感想を聞き、翌朝にデジタル版にアップもしていた。16日の朝刊では社説に加え1面コラム「天声人語」でもジュリー社長の対応を取り上げ、「行為を『知らなかった』とし、第三者機関による検証もしないという。芸能界に絶大な影響力を持ち、ファンを仕切ってきた立場の回答として納得できるものではない」と批判した。

このほか1面コラムでは産経が「産経妙」でジャニーズの「異常」な対応を批判的に取り上げつつも「この問題に対して小紙を含めた新聞、テレビは沈黙してきた。その『異常』にも厳しい目が向けられている」と自戒的に論じた。日経は「春秋」で経済紙らしく、事務所から独立したタレントがテレビで「干された」と噂された問題を巡って、公正取引委員会が4年前にジャニーズを注意した問題を改めて振り返った。

東京・大手町の読売新聞本社(編集部撮影)

こうした各紙の盛り上がりをよそに“特オチ”状態だったのが読売だ。この日の社説は、好調だった上場企業決算を引き合いにした経済展望と、党大会を行なった維新の減税公約批判の2本を掲載。1面コラム「編集手帳」は長寿社会を取り上げていた。この間、ジャニーズ問題についての社説は掲載したことはない。

ある大手ネットニュースの編集者は、読売中高生新聞の人気連載「ジャニーズJr.の小箱」に注目し、「新聞各社の中でも関係が深いから消極的なのか」と憶測していたが、ジュリー社長の動画公開のストレートニュースについては15日付夕刊では社会面トップで掲載し、16日付朝刊も社会面の準トップ扱いで報じている。

ライバル各紙の動きを踏まえ、17日以降、読売が紙面でどのような取り上げ方をするのか注目を集めそうだ。

 

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