共同通信『核のボタン携行 被爆地に』記事に「恣意的」「印象操作」批判相次ぐ

元朝日・峯村氏「忘れてきたらニュースですが(笑)」

アメリカのバイデン大統領が18日、G7広島サミット参加で現地入りした際、核ミサイルの発射命令に使う機器が入ったカバン(通称「核のボタン」)を携行したことを巡り、共同通信が「広島市の平和記念公園に持ち込まれれば、被爆者や軍縮団体から批判や疑問の声が上がりそうだ」と煽るような記事を配信したことに対し、ネット上で逆に批判が噴出する事態になっている。

サミット前夜、日米首脳会談を前に岸田首相と握手するバイデン大統領(官邸サイト)

核のボタンは英語では「核のフットボール(Nuclear football)」とも呼ばれる。英デイリー・メールが今年2月、アメリカの調査報道のベテラン記者への取材で報じた内容によれば、重さ40ポンドの革で覆われたチタン製のビジネスケース。暗号ロックで保護され、大統領が核攻撃を承認して開始するのに必要な通話機能や書類が収納されている。核のボタンを使用する際は、大統領が持ち歩いている小さなプラスチックカードを使って身分を確認し、大統領が死亡するなど対応できない場合はカードが副大統領に割り当てられるという。

「核のフットボール」はアメリカ大統領の権力の象徴とも言えるだけに、外遊先でも携行は当然で、ホワイトハウスの歴代大統領公式写真にも随行者が持ち歩く様子がたびたび撮影されている。

2013年10月、オバマ大統領時代の公式写真(パブリックドメイン)※赤枠は編集部

現職のアメリカ大統領の広島入りは史上2度目。2015年5月にオバマ大統領が訪問した際も核のボタンは持ち込まれていたが、日経テレコンによると、共同通信は当時記事にした様子はなく、朝日新聞や毎日新聞などが事後に取り上げた記事が散見された。ただ、総じて当時はマスコミで大きく問題視する論調はなかった。

今回の被爆地入りは共同通信が事前に目をつけていたようだ。18日午後、米軍岩国基地で随行する軍人がカバンを持ち歩く様子が撮影されていた。同日夕、被爆地入りを問題視する記事を配信すると、Yahoo!ニュースのコメント欄では一晩で1800を超える反響があった。

しかしその中身を見ると、上位に表示されているコメントは

もちろん核を無くしたいという気持ちはとてもあるけど、残念ながら戦争が起こっていて緊迫状態にあるのが現実。

さすがに今は隙なく抑止の力を向けていることを相手にも見せつけないといけないのでこうなってしまうのも仕方ないね

批判はあるかもしれないが世界情勢を考えると致し方ないと思う

などと、ウクライナ戦争など現下の世界情勢から、核のボタン携行に理解を示す意見が多く、問題視する記事を書いた共同通信への批判が相次いだ。

安全保障に詳しい元朝日新聞記者のジャーナリスト峯村健司氏もツイッターで「この記事は非常に不可解です」と呆れた様子。「米大統領が核のボタンを携行するのは当然。知らないで書いているのでしょうか。核と広島を結びつけようとする印象操作的な記事にすらみえます」と手厳しく指摘した上で、「もちろんバイデン氏が忘れてきたらニュースですが(笑)」と皮肉っていた。

 

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