維新の梅村みずほ氏更迭に異論、ウィシュマさん「支援者」に注目集まる

政女・浜田氏「問題提起は非常に重要」
  • 維新の梅村氏が参院法務委を更迭されたことにネットでは異論も
  • 梅村氏の発言の経緯、ウィシュマさん「支援者」への疑念を示す背景
  • 朝日は社説で発言撤回要求。維新も処分で政治生命の危機だが…

入管施設に収容されていたスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんが死亡した問題を巡り、梅村みずほ参院議員が参院法務委でウィシュマさんの支援者に疑義を呈するなど「独自」の観点から繰り広げた質問や発言について、ネットでは梅村氏を非難する野党やマスコミの論調とは異なる見方が広がりつつある。

大炎上した梅村氏だが…(18日、参院ネット中継)

「死の真相を知りたい」

事の発端は12日の参院本会議。出入国管理法改正案の審議に絡め、梅村氏が「医師の診療情報提供書や面会記録等を含めた資料とともにウィシュマさん の映像を総合的に見ていくと『良かれ』と思った支援者の一言が、皮肉にもウィシュマさんに『病気になれば仮釈放してもらえる』という淡い期待を抱かせ、医師から詐病の可能性を指摘される状況へつながった恐れも否定できない」と発言するなど支援者の対応に疑義を呈したことから騒ぎが始まった。

梅村氏は16日の法務委でも「ハンガーストライキによる体調不良で亡くなったのかもしれないし、結局、死因は分からなくなっている」とも発言。梅村氏への反発の声が広がり、翌日にはウィシュマさんの遺族が記者会見、「詐病は事実無根で、死者を冒涜している」などと抗議する事態に発展した。

梅村氏に対しては、発言の根拠を求める声や撤回を求める意見が相次いだ。18日の法務委では再び議場が騒然とする中、梅村氏は「どこがデマなのか。根拠はある」と発言の撤回を拒否。仁王立ちになり、「ウィシュマさんの死の真相を知りたいと夢に現れるまで考え抜き、導き出された“可能性”をここで発言しないのは国会議員として職務怠慢だ」と断言した。

さらに統一教会問題の際に告白した自身が“宗教2世”だった過去をその場で持ち出し、母が新興宗教に勧誘された結果、家庭崩壊した経緯を振り返った上で、「優しい者イコール正しい者か、疑う目線を持つのは当たり前」と支援者を暗に問題視するように持論を述べ続けた。

調査報告書での疑義

梅村氏が支援者への疑念を示す背景には、出入国在留管理庁によるウィシュマさんの死亡事案に関する調査報告書21年8月発表)で指摘された問題がある。

報告書では、ウィシュマさんを問診した精神科医が「一つの可能性として、詐病の可能性を考えた」と証言したことなどが記載されていた。さらに報告書の終盤には、支援者に入管当局が厳しい見方をしていた記述もある。

ウィシュマさんが死亡した名古屋入管(Gnsin /Wikimedia CC BY-SA 3.0

仮放免の保証人になることを申し出た支援者については、過去に保証人になったケースで少なからず逃亡事案があったとし、入管局側がウィシュマさんが仮放免した場合に逃亡を防げるのか、生活費や医療費を工面できるかを懸念していたと記載されている。

また、ウィシュマさんが支援者との面会を繰り返すうちに「帰国希望から在留希望に転じた」と指摘しており、ウィシュマさんがこの支援者らの下で生活するようになった場合、「在留希望の意思がより強固になり、帰国の説得や送還の実現がより一層困難になるおそれがある」と入管局側が考えるようになった経緯が記されている。

梅村氏はこれらを読み込んで一連の発言に至ったとみられるが、報告書には、支援者と詐病を関連づける記述まではなかった。梅村氏に対し発言の根拠を求める声や非難の声は高まる一方。朝日新聞19日の社説で取り上げ、梅村氏に対し「窮地の外国人を支える人々をおとしめる発言」と指摘、発言の撤回を迫るに至った。

政治生命の危機だが、維新に異論も

維新は当初、梅村氏が本会議で発言する際には「新聞等で報道されていた部分とも重なる部分があり、問題提起として容認される範囲」(音喜多政調会長)と大目に見ていたが、法務委での発言が続き、炎上が続いた。音喜多氏は記者会見で「ウィシュマさんに関わる部分については事実に基づくことであるとか、事実確認にとどめるようにして自己の主張の方は行わないように指示していたが、残念ながら守られなかった」と釈明。この日、梅村氏の法務委からの更迭を決め、党規委で本人からの弁明を聞いた上で処分する方針を決めた。

この会見とは別に、馬場代表は記者団に対し「政治家としてまだまだ未熟。居酒屋で仲間同士で話しているのとは違う」と述べた。維新幹部の1人はSAKISIRUの取材に対し、「梅村が執行部の指示を守らなかったのは今回だけではなかった」と怒り心頭の様子。最も重い除名に近い処分が下りる見通しを示した。

22年8月、維新代表選で合同街頭演説を行った馬場氏、足立氏、梅村氏(東京・有楽町で。編集部撮影)

党内でも孤立化し、マスコミで袋だたき状態の梅村氏だが、維新の対応に疑問や異論を述べる人も。

ある保守系メディアの幹部が「維新の処分は“トカゲの尻尾切り”。質問したこと自体は悪くないはず」と疑問を呈すれば、政治家時代の橋下徹氏と交流していた官僚OBは「梅村氏が冷静さを欠き、対応が稚拙だったのは確かだが、本当に支援者に問題があったのかどうか究明すべきでは」と、党の対応に批判的だ。

他党からも異論が出始めた。政治家女子48の浜田聡参院議員は18日夜、YouTubeに投稿。梅村氏更迭について「維新の会さんなりの考えがあるとは思うが、ちょっと厳しすぎるのではないか。支援者団体についての問題提起は重要」と疑問を呈した。梅村氏とは議員会館の食堂で発言の自由について話す機会があったといい、浜田氏はその際、梅村氏に対し「国会議員はサラリーマンではなく、政治家なのでやっぱり信念を持って、時には党の規制を振り切って発するような時もあるのではないか」との意見を述べたことで責任を感じているようだ。

維新内部では「梅村氏の政治生命はこれで終わった」(幹部)との見方も出ているが、ネットの維新支持者の中には「既得権に切り込む維新とは思えない姿勢」との意見も出ており、党規委に向けて難しい判断を迫られる可能性がある。

 

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