G7広島サミット「宴の後」、冷静と情熱の間に見る2つのリスク
ダテではなかった岸田首相の外交手腕だが...G7広島サミットが21日閉幕した。近年、G7の経済的地位の低下もあって存在意義が揺らいでいたが、ロシアのウクライナ侵攻で一変した。
「中国とロシアによる経済的、政治的、軍事的に国際秩序を塗る試みに、唯一結束して立ち向かえるグループはG7だけ」(佐々木れな氏)という情勢で始まった中、揺るぎないメッセージを打ち出せるのか…。
蓋を開けてみれば、アメリカ、イギリス、フランスといった核保有国を含む首脳が被爆地ヒロシマに集結し、平和記念公園で一斉に献花。核軍縮に関するG7首脳広島ビジョンに込めた「核兵器のない世界の実現に向けた我々のコミットメントを再確認」の重みを与えた。

ウクライナのゼレンスキー大統領が対面しての出席という劇的な要素も加わって、「イベント」としてはこれ以上ないインパクトを残すことに成功した。ゼレンスキー氏の陰にやや隠れたが、国際政治学者の細谷雄一氏が「インドやブラジルといったロシアに宥和的な諸国がパートナーとして広島G7サミットに参加した意義は大きい」とツイートしたように、中ロ対策への布石としても実に有効で、韓国とのさらなる関係改善で北朝鮮対策も忘れない。日本が過去に議長国となった歴代のG7でもダントツの成果になったのは誰しも認めるところだろう。
この日午後に発表された毎日新聞と読売新聞・日本テレビの世論調査は共に政権支持率が9%アップ。首相の指導力について読売・日テレ調査では「あると思う」が53%で「思わない」の30%を上回った。内政では「検討使」と揶揄される岸田首相だが、側近議員の1人は「外相時代に積み上げてきた経験とネットワークが全て発揮された」と感無量の様子で語る。
バイデン大統領の原爆資料館訪問は実現できるかガラス細工を積み上げるような作業だったが、岸田氏が外相として副大統領時代からバイデン氏と築き上げてきた信頼関係が奏功した形だ。今回のG7で開催したQUADをはじめ、自由で開かれたインド太平洋構想を推進した「安倍外交」のレガシーの礎があっての「奇跡的なG7成功」であることは確かだが、その安倍外交を外相として歴代最長4年半、前線を担っていた岸田氏の交渉巧者ぶりはダテではなかった。
プーチンの核使用を本当に止められるか
問題は「宴の後」だ。個人的には国外と国内それぞれ注目しているリスクがある。
まずは国外。G7の「成功」は中ロにとって「屈辱」の裏返しになる。G7期間中、ウクライナへのF16戦闘機供与が注目されたが、ロシアは猛反発。ロシアの横暴は絶対に許してはならないが、「むしろ西側による支援でウクライナが強軍化すれば、プーチンを核使用に追い込むリスクが高まる可能性」(参政党・松田代表)も常に頭に入れておくこともリアリズムの要諦だ。

中国もG7中に海警局の公船が尖閣への侵入をためらうことはなかった。北朝鮮は期間中のミサイル発射こそ控えたが、G7首脳声明で非難されたことを受け、いつ再開するのかも気は抜けない。強権国家による実力行使、核威嚇が現実のものとなるリスクに限界まで向き合うチキンゲームを余儀なくされる局面もあろう。
G7はどうしていくのか。議長を務めた岸田首相が閉幕の記者会見で挙げたのがG7首脳が背負う「2つの責任」だ。1つは「現下の厳しい安全保障環境の下、国民の安全を守り抜くという厳然たる責任」で、もう1つが「『核兵器のない世界』という理想を見失うことなく、それを追い求め続けるという崇高な責任」だと強調する。
「増税ありき」でいいのか
ある議員の言葉を借りると、理想と夢想とは異なる。2つの「想」の違いは、実直に行動するか否かだ。会見を終えようとした首相に「逃げるのか」と無礼な物言いをしたフリー記者がいたが、その出身母体の新聞社は“平和憲法”の理念に毒される余り、正当な抑止力の確保すら抵抗するのでは今とこれからを生きる世代には相手にされまい。
一方で(ここでドメスティックな話は持ち出しづらいが)、抑止力確保に向けた責任と行動に「増税ありき」というのも国民生活と経済の逼迫の軽視だ。現役世代は社会保障負担増、電気代高騰も加わって回せる首ももうない状態だ。企業負担も限界に来ている。人件費の頭打ちや雇用悪化は現役世代を追い打ちする。当然子育てに振り向ける力はさらに失せ、少子化は加速する。
G7報道の熱狂のウラで、防衛財源確保法案が19日、衆院財務金融委で可決。今週には本会議を通過し、参院に送付される見通しだ。まずは宴の“酔い覚まし”に与野党の審議、主な議員らの発言を注視していきたい。
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