ワグネル武装蜂起の2日前、ロシア政府系メディアが「本能寺の変」ツイート

日本で「類似点」に注目(追記あり)

ロシアの民間軍事会社「ワグネル」代表のエフゲニー・プリゴジン氏がSNSで武装蜂起を宣言する2日前、ロシア政府系メディア「スプートニク」日本語版の公式ツイッターが、日本の歴史的クーデター「本能寺の変」を取り上げる投稿をしていたことが24日分かった。

ツイッターではこの日、今回の武装蜂起と本能寺の変の類似点が話題になっていたとあって、思わぬ奇遇が注目されそうだ。

プーチン氏と織田信長

スプートニクは前身のロシア国営ラジオ局の組織を再編する形で2014年に設立。ラジオ放送に加え、ニュースサイトを運営しており、サイトの日本語版は2015年から配信している。16年のアメリカ大統領選以後、外国の選挙への介入や偽情報を流しているとの疑惑が再三指摘されており、ウクライナ侵攻でも問題視されていた。日本語版は現在も稼働しているが、EUでは昨年3月、ロシア政府のプロパガンダ拡散を防ぐため、EU域内でのラジオ放送やサイト配信が禁止された。

そんなスプートニク日本語版のツイッターは武装蜂起後も、「ロストフ州支部の周囲の状況は平穏」と強調したり、プーチン大統領の演説全文を配信したり、プロパガンダに余念がないが、注目を集めたのは事変2日前の21日、“その日の出来事”として本能寺の変に言及した。

時代劇などで本能寺の変は6月2日の発生として知られるが、これは旧暦(太陰太陽暦)の日付で、世界各国が採用している太陽暦(グレゴリオ暦)では21日に当たる。ツイートでは「1582年6月21日(天正10年6月2日)、日本では本能寺の変 が起こった」と切り出し、「武将・明智光秀が謀反を起こし、京都の本能寺に滞在中の主君・織田信長を襲撃し、自害へと追いやった」と紹介した。

プリゴジン氏が武装蜂起を決意した正確な日付は不明だが、ネットでは本能寺の変との日付の近さに注目し、「ロシア内乱を決意したのはおそらく現地時間2023年6月21日頃か」とジョークを飛ばす人も。信長はわずかな供回りだけで京都に投宿中、光秀軍に急襲されたが、この史実と今回の事態の類似点を想起する人も少なくない。

本能寺の変が起きた当時、信長が向かう予定だった中国地方の羽柴秀吉(のちの豊臣秀吉)や、北陸方面の柴田勝家らの手勢など織田家中の主力は外征中で、その間隙をつかれた。今回の武装蜂起では、ウクライナにロシア軍の主力が集められている一方、首都モスクワ周辺は軽装備の治安部隊などが主体で、重武装のワグネルに十分な抵抗ができなかったことも易々と進撃を許したとの見方が強まっている。

不意をつかれたプーチン大統領は日本時間の午後4時ごろから緊急演説を敢行。BBCによると、「前線で戦っている同志への裏切りだ」などとワグネル側を激しく非難した。日本時間の24日深夜には、大統領専用機がモスクワを飛び立った後にフライトレーダーの航跡が消えたとの情報がツイッターで駆け巡り、プーチン氏の消息に注目が集まったが、その後、クレムリンで執務中との情報も出るなど錯綜した。

プリゴジン氏の本当の狙いや要求は何か、ロシアの今後はどうなるのか…25日未明までネット上は専門家からもさまざまな見方が積極的に発信されたが、“ロシア版 本能寺の変”の行方に世界が固唾を呑んで見守っている。

【追記8:00】ワグネルによるモスクワ進撃は停止された。

 

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