「経産省の全執務室施錠解除」全く共感されない毎日新聞のスクープ、「ズレている」指摘も

「知る権利」と結びつけに批判

経産省が2017年以降、情報管理のために全執務室を施錠していたのが今月に入り、一部を除いて解除されたことを毎日新聞が16日配信の記事で「スクープ」したものの、施錠について「情報公開に逆行する」と改めて批判する識者談話を載せた同紙の論調について、SNSでは逆に批判が噴出。記事を紹介した毎日新聞の記者が炎上する事態にもなった。

y-studio/iStock

経産省はかつて執務室に記者が出入りしていたが、安倍政権下の17年2月、当時の世耕弘成経産相が「情報管理を徹底する」との方針で、全執務室を施錠するようになった。きっかけはその直前に日本経済新聞が、日米首脳会談で日本側が提案する内容をすっぱ抜いたことだった。

記事は「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が米国のインフラ事業に投資することなどを通じ、米で数十万人の雇用創出につなげる」と報じたもので、アメリカ側と交渉が本格化する前の内容が漏れたことを政府首脳が問題視したとされる。実際、安倍首相に随行する予定だった世耕氏の訪米はキャンセルされ、その影響が取り沙汰されていた。それ以来、記者対応は別室で行い、応対する幹部にはやり取りをメモする部下が同行することがルール化された。

しかしメディア側は安倍政権に批判的だった毎日新聞などの左派だけではなく、安倍政権を支持していた産経新聞も社説で「極めて異例」「取材活動の障害となりかねず、到底容認できるものではない」と反発していた。

今回の毎日新聞の記事はその流れにあったもので、経産省側は施錠解除に切り替えた理由について、毎日の取材に対して「常時施錠しなくても従来通りの情報セキュリティーが維持できる部署については施錠しなくてもよいルールに改めた」と説明しているという。さらに記事では、共同通信記者OBの大学教授による「執務室の施錠は情報公開に逆行」「施錠を再び強化するようなルール変更が恣意的に繰り返される可能性もある」などと批判をダメ押しする談話を掲載した。

しかし毎日新聞のスクープはSNS「X」(旧ツイッター)ですこぶる不評だ。国際政治学者の鶴岡路人・慶應大准教授は「何とももやもやする記事。どうして執務室を施錠するか否かが国民の知る権利の議論につながるのだろう・・・。国民の知る権利は、記者が執務室に勝手に入り込んで何かを見ることによって担保されるのですか?」と疑問視。

厚労省OBの千正康裕氏も「執務室の施錠について、『情報公開の流れに逆行する懸念がある』とメディアが言うのはズレている気がする。取材はいくらでもできるし、役所が情報管理を徹底するのは当たり前」と指摘した。

一般のネット民のコメントも、情報公開と情報セキュリティの話を混同するような記事の論調に批判的だ。しかし当の毎日新聞は、赤間清広記者が記事を引用しながら「意味不明なルールが6年以上も続いた異常さを、経産省は反省を込めて検証してみてもいいのでは?」と改めて経産省を批判すると、

現職の経産官僚と見られるアカウントに「毎日新聞の記者さんが資料を盗み見するから、こちらは大変だったのですが…」と言われる始末。一般のネット民からも赤間記者に対し「毎日新聞社では部外者が自由に記者の机とかPCとかをいじって情報を入手してもよかったのですね」と皮肉る声も上がった。

 

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