「高すぎる」東京・港区の区立中学海外修学旅行に議会で指摘、区側の答弁は…

公明は賛同「一応の妥当性」

東京都港区が都内初となる実施を打ち出した全区立中学の海外修学旅行について、港区議会は12日の本会議を開き、各会派から海外修学旅行が検討された経緯や経費面の妥当性について質問が相次いだ。

港区立中学の渡航予定先、シンガポール(PhotoAC)

区長に「誠実な政治姿勢を」

海外修学旅行事業は今月1日、武井雅昭区長の記者会見で発表された。しかしSAKISIRUが複数の区議を取材したところでは、区議会には事前の根回しがなく会見直前に記者向けと同じ資料が配布されただけ。最大会派の自民から「異文化体験は良いことだが、唐突感が否めない」(区議)との声が上がるなど、区議会側では、費用対効果や政策立案のプロセスを問題視する声も出ていた。

立民や社民などの区議で作る「みなと政策会議」の清家愛氏(無所属)は「この事業をめぐって自治体間格差など大きな世論の対立が起きている。事前に区長からこうした事業を行う方針などが示されたことはなく、議会できちんと議論されたこともない」と厳しく指摘。

さらに区長と議会の二元代表制についての見解を尋ねる形で、武井区長に対し、「政策の必要性を深く認識し確実な実現を求めるのであれば、区民の代表である議会に対し事業内容と政策根拠をしっかり示し議論を深めてから進めていくべきであり、区長にはそうした誠実な政治姿勢が求められている」と迫った。

これに対し、武井氏は「今後も区議会との意思疎通を図り、必要な情報提供や根拠の提示など誠意を持って対応し、丁寧な説明を尽くしたい」と答弁したが、海外修学旅行の件には触れなかった。

また、この質疑に先立ち、自民の鵜飼雅彦氏が今回の事業を検討した経緯を尋ねたのに対し、区側は浦田幹男教育長が答弁。これまで区が独自の国際教育事業として行なってきたオーストラリアへの海外派遣で英語力の向上などで成果があったと強調。これを受け、一昨年度から学年全員が参加できる修学旅行形式による渡航の検討に入り、新型コロナが「5類」に移行し、渡航の目処が立った今年度になって具体化が進んだ、とした。

答弁する浦田教育長(区議会ネット中継)

自民「高い」公明「妥当」

しかし教育関連事業の補正予算で「記憶にない」(ベテラン区議)とされる5億円以上の投資には厳しい声も。自民の鵜飼氏は「単純に760人で割ると1人当たり68万円とかなり高いと感じる」との見解を示し、経費節減の必要を訴えた。

また、みなと政策会議の清家氏は、区立小児童の半数以上が私立中に進学することを踏まえ、「この事業が(区立中の魅力向上に)どのような効果があると考えているのか」とただす場面もあった。

これらの質問に対し、浦田教育長は「今後予定をしているプロポーザルでの事業候補者選定の中で充実したプログラム、安全安心な校庭を前提としつつ、学校ごとの研修プログラムの費用や交通費など各項目を精査そして縮減に努め、皆様の納得が得られるよう取り組む」と述べ、理解を求めた。

さらに区立中の進学との相関については、教委が保護者らに進学先の選択理由を尋ねたアンケート調査結果を引き合いに、「国際理解教育の充実を図ることは、国立中学校の魅力を一層充実させる」との見解を示した。

他方、区側の方針に踏み込んで賛同したのが公明だ。会派を代表した池田武氏は、全国修学旅行研究協会の調査をもとに「区の海外修学旅行の事業費における子どものみにかかる費用は1人当たり約50万円で、純粋な旅費はさらに低くなるので極端に費用が高いわけではなく、一応の妥当性は認められる」と理解を示した。

さらに池田氏は「今回の区立中学の海外修学旅行の報道に対し、中学受験にかける予定だった費用を子どものための別のことに回せるといったご意見もあり、子どもの教育資金の計画そのものを見直す契機にもなっているようで、大変興味深い」とも述べていた。

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