続・ジャニーズ私の「敗戦処理策」、真に罪に向き合う「基金」スキームとは

連載『日本経済をターンアラウンドする!経済再生の処方箋』#16
  • 進展しつつあるジャニーズの「敗戦処理」に「本当に良いのか」と筆者
  • 現在の所属タレントは自力でのし上がった !? 昨今の言説を検証
  • 罪と責任に真に向き合うために筆者が提案する「基金」スキームとは

株式会社ターンアラウンド研究所
小寺昇二

ジャニーズの問題については、現社長の会見などを見るにつけ、会社をグッドカンパニーとバッドカンパニーに分けて、これまでの営業活動と被害者への補償を分ける、ジャニーズ事務所の名称を変更する、グッドカンパニーの資本については創業家と切り離すといった、前回寄稿した筆者の記事にかなり沿った内容になりそうな状況のようです。

東京・六本木のジャニーズ事務所(編集部撮影)

企業スポンサーの対応についても、契約停止などの動きが加速、またメディア側も出演者見直しなども動きが出ており、これらの点についても上記筆者のかなり強めの主張の内容と方向性自体は変わらない感じがします。

しかしながら、今の状況のままで、本当に良いのでしょうか?「違和感」と言った言葉で、ドラスティックな対応を批判したり、ジャニーズ事務所を批判はするものの「それじゃあお前には責任がないのか」と感じるような言説もまだまだ多く見られます。

代表的なものは例えば

  • ①これまで、企業もメディアも黙認してきたのに、ここで手の平返しをするのは違和感
  • ②所属タレントは自分の努力でのし上がってきたのだから責任はなく、したがって早く仕事に復帰させてやりたいし、契約を切るのはおかしい
  • ③契約については「新規契約」を結ばないということにする
  • ④メディアとして要望書は出したが、政府の基準文書に従い、直ぐに契約解除は行わない

と言ったものです。一つひとつについて筆者の印象を以下記します。

そのスターの座は自力で勝ち取ったのか?

①については、手の平返しの違和感よりも、まずは罪を認め、客観的な事実としてもコンプライアンス上に大きな疑義があった企業との取引は、満足できる対応策が出てくるまでは停止あるいは解約するのが、コンプライアンスの常識です。まずは契約を停止し、そのあとで違和感のあった過去について当事者がきっちり謝罪ないしは責任を取れば良いのではないでしょうか。

②については、現在の所属タレントは本当に自分だけの努力でのし上がってきたのか?ということです。前々社長の手腕によって築かれた独占的な事務所の力があったからこそ、チャンスを得ることができたということであり、加害に加担した、黙認した、というタレントにはもちろん責任があります。そもそも、そういう会社を取引相手として温存するのは、社会的にアウトということが前提です。

イラスト:ACworks

③上記「②」と同様に、契約がそのまま継続されること自体が問題なのです。契約を切ることが人命に係わるとか、社会システムの運営に大きな障害になるという場合を除き、許されることではありません。

④基準については、社会に色々な基準がある。基準に寄りかかって免責になったと主張するのではなく、自分たちの罪・責任に真正面から向き合い、どう対応するかを自分たちで決められるかどうかが問われているのではないでしょうか。

メディアの責任、スポンサー企業責任に関しては、今の動きで言うと多分対応されることなく、決着してしまうのではないかと危惧しています。

罪・責任に向き合う「基金」

そこで1つの提案を行いたいと思います。ひとつの「基金」を設立することです。
この基金の概要は以下です。

  • 設立母体=テレビ局、映画会社及び企業
  • 目的及び事業内容=児童(少年)虐待、性暴力に関し、撲滅に功績のあったテレビ番組、映画、広告に対して、毎年「賞」を授与し、啓蒙活動に努める
  • 基金への寄付者=過去に加害を黙認したテレビ局、映画会社、企業
    →個人の寄付も受け付けることとする(過去の被害タレントのファン、今回騒動に心を痛め、再発防止を願う「市民」を含む)
  • 運営
    →賞の審査は第三者による有識者が行い、この運営資金もこの基金から支出される

….いかがでしょうか?ここに寄付をすることが、メディアや過去にジャニーズ事務所のタレントを使った企業、そして社会全体が、その過ちを「賞」の形で後世まで語り継ぎ、そして「罪・責任に向き合い、今後そういたことに加担しないこと」の宣言になるのではないでしょうか?

本来であれば、ベストプラクティスだけではなく、悪い方のワーストプラクティスにも賞をあげる、すなわち児童虐待、性被害に関する撲滅への反動的なものの審査・社会的提示もしたいところですが、論点が散逸するし、実現性は乏しいので、ここでは対象外にした方が良さそうです。太平洋戦争、原発事故…とにかく忘れっぽい国民なのですから、自らを律して、将来に繋げていく「仕組み作り」が必要です。 

【おしらせ】

10月16日、日本経営協会主催のイベント「人的資本経営セミナー」に私、小寺も登壇予定。投資家目線での人的資本経営について語ります。是非ご参加ください。

 
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