コロナ後の地方自治を学ぶ…“意識高い”地方議員の勉強会

ZOOMで無料講座。公会計や財政、DX最新知見
  • 難局が続く自治体経営の今後に役立てようと地方議員の勉強会が勢力的に活動
  • 公会計や自治体財政、DXなどを履修。公民連携の講義では米国の刺激的な事例も
  • 企画した日本政策学校の上田博和理事長「地方から日本を動かす気概を」

現下のワクチン大規模接種をはじめ、コロナ対応は自治体のマネジメントに戦後最大級の試練を与えているといっても過言ではない。人口減少による税収減が長期的な課題だったところにコロナ不況が直撃。財政出動がかさむ一方で税収減が一気に見込まれている。また、昨年には10万円の給付金配布の遅れに、マイナンバーカードの普及が当時は2割程度にとどまるなど、DX(デジタル化)への課題も浮き彫りになった。

こうした中、時代の荒波に直面する自治体経営の今後に必要な知識を身につけようと、地方議員らが学ぶ「財政研究会 地方議員連盟」が勢力的に活動している。

Yayasya/iStock

研究会のメンバーは、住民生活の「最前線」に立つ市区町村の現職議員のほか、元議員、都道府県議、議員をめざす立候補予定者らもオブザーバーとして名を連ねる。コロナ禍とあってオンライン中心の活動になっているが、4月11日に開催された発足式には、党派を超えて約100人が集結。アメリカ政界に強い影響力を持つグローバー・ノーキスト全米税制改革協議会議長らも祝辞を贈った。発足式の後はここまで月2回のペースで計4回の勉強会を開催しており、公会計や自治体財政、ウェブを駆使した選挙活動などをテーマに学んできたという。

PPP(官民連携)がテーマとなった今月13日の勉強会では、東洋大学でアジアPPP研究所長をつとめるサム田渕教授を講師に招いた。田渕氏はアメリカでPPPを手がけ、日本では国の補助金に頼らないPPPの代表例として話題になった岩手県紫波町の「オガールプロジェクト」の仕掛け人として地方創生界隈で知られている。田渕氏は、講演で米国のPPPの成功事例を複数紹介。そのなかでもジョージア州サンデースプリング市のケースは出色だ。

サム田渕氏によるサンデースプリング市の事例講義

同市はかつて郡のなかの一エリアだったが、道路補修などの公共サービスの質が悪い割に、住民に富裕層が多いこともあって納税分に見合わないことへの不満がうっ積していた。そして州議会の審議や住民投票のプロセスを経て、2005年、地元民が市をいわば“創業”するかたちで誕生したのだ。

その経営も、企業のように徹底した効率化を追求。同市と同じ人口規模10万の日本の自治体なら、1,000人規模の職員数もめずらしくないが、サンデースプリング市は専従職員が4人に過ぎない。それ以外の業務は警察と消防をのぞき民間委託にして135人規模に抑制。それでも市民の満足度は9割に達したという。日本と違い、国からの交付金がないアメリカの自治体制度は、国情の違いとはいえ、参加者を刺激したようだ。

研究会の事務局をつとめるのは、政治家志望者らの育成に定評がある日本政策学校。同校の上田博和理事長は研究会の狙いについて「地方議員が今後の日本のキーマン。地方から日本を動かす気概を議員の皆様が持っていただきたい」と話している。

次回は27日午前10時から2時間、テーマは「地方自治体における DXの潮流」。世界各地でテクノロジーによる社会課題解決に取り組んでいる安田クリスチーナ氏(マイクロソフト・プログラムマネージャー)が講師をつとめる。その後も9月12日まで地方創生やDXなどを学ぶ予定で、秋以降のカリキュラムは受講者の希望を考慮して決めるという。参加無料。申し込みは財政研究会 地方議員連盟のウェブサイト。問い合わせは日本政策学校「財政研究会 地方議員連盟」事務局(03-5579-2808)へ。

 

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