爆速ブラウザで急成長、次世代版グーグル「Brave」とは何者か?

閲覧者に広告収益…狙うゲームチェンジ
ジャーナリスト
  • 米Braveが検索エンジンを発表。爆速ブラウザとして話題の同社の戦略を解説
  • 広告ブロックの代わりに広告閲覧者に広告料の約7割分配。「脱グーグル」モデル
  • 新しい広告システムで、利用者とコンテンツメーカー、広告主の「三方良し」狙う

Brave Software/Wikimedia Commons

最新型ウェブ・ブラウザーのBraveが22日、検索エンジン「Brave Search」のベータ版を公開した。2021年内に、Braveブラウザーのデフォルトの検索エンジンになるとBrave Software社が発表している。すでに利用したユーザーからは「日本語対応だし、爆速」などと好評のようだ。

“脱グーグル”は起こるか?

大手テックの牙城を崩そうとしています

最新高速ブラウザーのBraveは、ホームページで堂々と“打倒グーグル”を宣言しており、自信のほどが伺える。「個人情報を守る」「早い」さらには「報酬を貰える」など、利用者にとっての利便性やメリットは非常に高い。早々に普及してGoogleに成り代わる次世代の検索エンジンになる可能性も、決して低くはなさそうだ。

創業者アイク氏(Brave公式サイトより)

そもそもBraveとはなにか?Braveとは、2019年11月に正式リリースされたWebブラウザー。作ったのは、Mozillaの共同創業者で、あのJavascriptの生みの親でもあるブレンダン・アイク氏だ。

この検索ブラウザはブロックチェーンの技術を基盤としているが、それによって、完全に匿名で検索を行うことができ、プライバシーが確保されるのだという。今すでに常態化しつつある“監視社会”に、このBraveが風穴を開ける可能性があるのだ。

Braveは、すでに世界での利用者が月間2500万人を超えている。世界の検索エンジンで寡占状態に近いグーグルクロームは現在月間8億人と、まだまだ差は大きいが、検索エンジンができたり利便性が高まるにつれ、利用者は今後うなぎのぼりになっていく可能性もある。

Braveの最大の特徴は、利用者のプライバシーを最大限重視していることだ。グーグルクロームと比べても3倍ともいわれる表示速度で、圧倒的に早いだけでなく、ユーザーを追跡する広告を基本的にブロックし、読み込みを早くする仕様であるために、今までの煩わしさやプライバシー上の懸念が排除された、利用者にとっては利点が多いブラウザーである。

すでに同ブラウザを利用している日本の利用者からも「YouTubeを見る時は、絶対にBraveを使ったほうがいい。最初の5秒のCMなどがなく、快適」などと評判がいいようだ。

サイト閲覧者に7割の広告料

Googleは、閲覧と同時に、利用者の情報が吸い上げられることを前提にしているが、Brave では原則、広告や行動トラッカーをブロックする設計になっているのが大きな違いだ。Braveの公式サイトによると、「平均的なユーザーのモバイル通信の50%は、広告やトラッカーが占めている」という。Braveでは、この広告をブロックするために、バッテリーの消耗も軽減される。またブラウジングの速度はgoogle chrome と比べても「圧倒的に高速で快適」(Braveホームページ)だという。

Brave公式サイトより

また逆に、自ら設定をすれば、広告を受け取ることもできる。利用者が広告を見ることで、報酬を得ることもできるというメリットも。その場合、なんと広告主からBraveに支払らわれる広告料の約7割が、ユーザー本人に分配されるのだという。現状だと、一般的な利用頻度であれば、1か月に5ドル程度の報酬が得られるともいわれている。

もらえる報酬は、BAT(basic attention tokens)という仮想通貨だ。この仮想通貨はすでに日本の仮想通貨交換所でも販売されているコイン。すでに、日本においても昨年7月から、仮想通貨交換業者のビットフライヤーと提携がはじまっており、BATをビットフライヤーの口座で受け取ることもできるようになっている。「ネットサーフィンしただけでお金がもらえるなんてすごい時代だ」などと、利用者からの声もツイッターなどから聞こえている。

YouTuberが商売あがったり!?

「Braveでユーチューバーやネットメディアの商売あがったりになる」

コンテンツを作っているメディアなどからは心配の声も多くある。広告をブロックするBraveが主流になると、 ユーチューバーやメディアなどのコンテンツ製作者には、既存のネット広告の収入が入らなくなる。ネットにおける収益構造を完全に変えるためだ。しかし、ブラウザや検索エンジンを選ぶ権利はあくまで利用者にある。そして利益配分を決めているのはブラウザを運営しているプラットフォーマーだ。メディアなど双方に介在するコンテンツ提供者がそこに抵抗しようとしても、時代の波に逆らうことは出来ないだろう。

Braveは、Brave利用者が増えることで、コンテンツ製作者の収入が減ることに対して、新しい仕組みを用意している。それが「Brave Rewards」という仕組みだ。利用者がBrave Rewardsの仕組みに登録すると、Braveが自動的にどのサイトに関心があるかを自動判別する。お気に入りサイトに自動的に収益が送られる仕組みなのだという。(収益を贈りたくなければ利用者がリストから外すこともできる)ちなみに、そのデータは本人のデバイス上にだけ保存されるので、第三者には渡らないという。

すでに、ワシントン・ポストやガーディアンなどの新聞社はじめ、世界で50万以上のコンテンツクリエイターがこのBrave Rewardsの仕組みに参加しているという。「パブリッシャー(出版社)がフェアな収益を得られる仕組みを提供します」とBraveはうたっている。

また、広告主にとっても今までにないメリットがあるという。広告代理店というのは、世界バラバラに存在しているが、Braveを使えば一気に世界共通の広告をうてるというのだ。世界戦略をとっている企業にとっては、これは非常に意味があるものになるかもしれない。

「三方良し」の広告システム

Braveが目指しているのは「分散型広告システム」だという。この新しい仕組みによって、既存の「個人情報の流出」「広告利益の仲介料」「ターゲティングの精度」など既存の問題がすべて解決するのだという。

利用者とコンテンツメーカー、広告主の三者の関係をもっと対等なものにして、「三方良し」の仕組みにすること。これによって、検索市場の巨人Googleに対抗しようという目論見のようである。

こうした仕組みは今までにないものだが、利用者の利便性を高めようとする仕組みが機能して、本格的に市場を席巻するか今後要注目だろう。Braveの目論見どおりになれば、ここ数十年で確立してきたネット広告の仕組みが、技術の進化によって早くも崩れる可能性がある。

広告全カットのブラウザで、アドセンスとかアフィリエイトとかは機能しなくなる未来しかわかない。自分のファンをどれだけ作れるかがキモになる時代が本当に来てしまった。

ツイッターでは好意的なユーザーの投稿が多いが、Braveは“ゲームチェンジャー”になるのだろうか。

 

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