「アベノマスク」が「あのマスク」だったら…コロナに強い「銅」
坂田薫『コテコテ文系も楽しく学ぼう!化学教室』第7回- もし「アベノマスク」が「あのマスク」だったら…。コロナで注目の銅について
- 銅が持つ抗菌性の原因である「ラジカル」の仕組みとその効果は?
- コロナでも有効性の研究結果。群馬大発のベンチャーは銅マスクを開発
通常国会が終わる直前の今月15日、野党4党により菅内閣不信任決議案が提出されました。不信任の理由の中に記されていたのが「アベノマスク」。みなさんは使用されたでしょうか。思えば去年の春は、日本中の店舗からマスクが消え、私自身、途方に暮れたものでした。マスクの配布自体は納得でしたが、微妙だった評判を目にするたびに「もし『アベノマスク』が『あのマスク』だったら、国民の反応は全く違うものになったのではないか」と、私は考えてしまいます。そのマスクとは、日本発の技術を取り入れた「銅のマスク」。今回はその驚くべき効果について解説します。

ラジカルと銅の抗菌性
銅は、人類が最初に利用した金属といわれており、その優れた性質ゆえ、現代に至るまでさまざまなところで利用され続けてきました。そしてコロナ禍、銅は注目を浴び、世界中で研究されることに。その理由は、銅のもつ「抗菌性」。それではまず、銅の抗菌性の原因である「ラジカル」について確認してみましょう。
身の回りの物質は、小さな粒子(ここでは「原子」とします)が集まってできています。さらに、原子の中には「電子」といわれる粒子が存在しています。電子は2個でワンセットすなわち「対(つい)」で安定します。それに対し、1個で存在する「不対(ふつい)」の電子は極めて不安定です。この不安定な不対の電子をもっている原子を「ラジカル」といいます。

ラジカルは不対の電子を対にするために、周りの物質に攻撃を仕掛け、電子を手に入れようとします。満たされていないからこそ、攻撃的なのです。例えば、ウイルスのタンパク質がその攻撃対象になります。これを利用し、ラジカルはウイルス除去をうたう空気清浄機などに利用されています。空気清浄機から放出されるラジカルによってウイルスをやっつけるのです(もちろん人間には害のない濃度に設定されています)。
また、みなさんが一度は耳にしたことがある「活性酸素」もラジカルです。老化や病気の原因として取り上げられることが多いため、怖いイメージをもっている人が多いかもしれませんが、活性酸素は呼吸によって常に体の中で生じており、体内に侵入したウイルスや細菌をやっつけてくれる役割があります。しかし、ストレスや紫外線、たばこなどにより活性酸素が過剰になったとき、正常な細胞も攻撃されてしまうため害となるのです。
さて、銅は、その表面で空気中などにある水分と反応し、水をラジカルに変えます。このラジカルがウイルスのタンパク質を破壊していくため、銅には抗菌性があるのです。実際にブドウ球菌やO157、インフルエンザウイルス、ノロウイルスなどに有効であることが確認されています。
そして、この抗菌性は純銅だけでなく60%以上銅を含む合金でも有効です。一般社団法人日本銅センターによると「A型インフルエンザウイルスを銅合金の表面に接触させ、経時後の感染価を計測した結果、ウイルスは30分後に検出限界値未満まで減少した」とあります。このように、さまざまな菌やウイルスに効果があることが立証され、病院や保育園で手すりやドアノブを真鍮(銅と亜鉛の合金)にするなど、その利用が進んでいます。
コロナウイルスと銅の研究
世界中で新型コロナウイルスの感染者が増加するなか「新型コロナウイルスにも有効に違いない…」と、銅の抗菌力が注目を浴びます。2020年、米国カルフォルニア大学とプリンストン大学の研究チームによって「新型コロナウイルスの生存期間は、プラスチックやステンレスの表面では2〜3日と長いのに対し、銅の表面では4時間と極端に短くなる」という研究結果が発表されました。
そして日本では、銅と日本発の技術である「光触媒」のコラボも実現しました。群馬大学発のベンチャー企業であるグッドアイは、ポリエステル繊維に銅箔を巻きつける技術と繊都桐生伝統の織物技術を組み合わせ、さらに光触媒を担持させたGUDシートを開発しました。このシートはGUDマスクとしても販売されています。

ただ、その効果が気になりますよね。公表されている研究結果によると、GUDシートの新型コロナウイルスに対する60分後の不活化率は、なんと99.9%!また、ウイルスがついた指をGUDシートで擦ると、10秒後には98%、30秒後には99.9%以上が除去されているという驚きの結果が出ています。古代から利用されている銅と、現代の技術である光触媒の融合によって生み出された素晴らしい結果だと思いませんか。
日本の研究を盛り上げるのは誰?
日本の研究を盛り上げていく大きなチカラの一つは「国」です(もちろん、影響力が大きいだけに、そのチカラは正しく使われなくてはいけません)。その、国の政策であった「アベノマスク」。例えばそれが、先述の「銅のマスク」だったら…。このようなベンチャー企業や大学の研究が日本中に知れ渡り、得られる利益は新しい研究の助けになるでしょう。
そして何より、受け取るみなさんは嬉しくないですか?日本の技術が使われ、効果が実証されているマスク!!きっとSNSにアップしますよね。その画像は日本だけでなく、世界中の人の目に留まるかもしれません。そう考えると、(間接的ではありますが)「わたしたち一人一人」も、日本の研究を盛り上げるチカラをもっているのです。
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