新学習指導要綱に「資産形成」登場! 今こそ投資の基本ルール実践を

コツは 「長期・積立・分散」
ファイナンシャルプランナー/キャリアカウンセラー/(株)イー・カンパニー代表
  • 「不労所得は知ってほしくない」保護者の投資教育に対する偏見が現実に
  • 人生100年時代、一生働き続けられる生涯設計のほうこそハイリスクでは?
  • 投機と投資は違う。投資の基本ルール「長期・積立・分散」を実践しよう

(編集部より)先進国のなかでも日本人の資産形成が極端に貯蓄志向であることの背景に、教育のあり方を指摘する意見は少なくありませんでした。しかし、2022年度からはじまる高校の新しい学習指導要領では家庭科の授業に資産形成の視点が入ることになりました。今からでも必要最低限のマネーリテラシーを身につけるには?

RichVintage/iStock

ファイナンシャルプランナー/キャリアコンサルタントの八木陽子です。

前回、なぜ投資が日本で浸透しないのかという理由を執筆しましたが、私は子供向けの金融教育の講座を行っており、親御さんの投資教育に対する偏見も目の当たりにしてきました。どんな偏見かというと…

「子供には、きちんと働いてほしいから、投資は教えたくない」
「子供には、不労所得は知ってほしくない」
「投資は、資産家がすることなので」

こういった言葉は、特別な方から発せられるわけではありません。教養がある保護者の方から直接言われて、心底驚きました。お金のこと以外の教養は身に着けている方なのに、学校で習ってこなかった投資については、ここまでイメージが悪いことに茫然としました。

「勤労収入だけ」狭める人生の選択肢

投資は、博打、ギャンブル、悪いイメージ。
一方、額に汗して働く勤労は、美しいイメージ。

私自身、勤労を否定するつもりはないです。もし仮に、我が家が一生働かなくてもよいほど大金持ちだったとしても、子供たちには、自分を活かす仕事をして、ぜひ社会に役に立ってほしいです。言うまでもなく、働くことは、経済的な面のみならず、生きがいといった側面でも、人生において大きな意味を持ちます。

しかし、さらに投資の実践によって、人生の選択肢を増やす可能性が高まります。お金で幸せは得られないとはいえ、お金があれば選択できることがあります。働いて得られる収入だけに頼るのは、人生において選択肢を狭めているのです。

そもそも、ずっと健康で、会社も安定して、働き続けられる保障はあるのでしょうか? また、国や企業が守ってくれるのでしょうか?

一生働き続けられる生涯設計や、一生誰かが養ってくれるといった考えは、ハイリスクなのではと思います。人生100年という時代に、自分が働くことと同様、お金にも働いてもらう。それが様々な困難や選択の一助になります。そのために、「投資の基本ルール」を学ぶことが大切だと考えています。

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投機と投資の違い:基本ルールを学ぶ

投資には手を出すべきではないと考えている方の中には、かつて痛い目にあったという方もいらっしゃいます。金融機関にすすめられるがままに購入したら、大きな損失を被った、ネットで知った情報をうのみにして投資をしたら、資産が半分になり、人生が狂ってしまった…。預貯金で十分だったかもしれないと言われたこともあります。

投資は、当たったり外れたりするようなものではないと思っています。「儲けるぞ」と狙いに行くものではありません。そもそも、どんな相場でも儲けられる人はいません。そういったものは「投機」であって、投資ではありません。どんなふうに株価が上がるか予想すらつかない一般の人は、勝ち負けを予想する投機では、勝ち続けられません。
では、「投資の基本ルール」とは何でしょうか?

私は、「長期・積立・分散」に尽きると思います。

投資の基本は何かというと、私の考えはいたってシンプル、「長期・積立・分散」という大原則を守るだけです。毎月5000円や1万円で始めて、資産を少しずつ増やしていければよいのです。「長期・積立・分散」の効果は、実は、リーマンショックやコロナ等でも発揮されてきました。

もし疑問に思われる方は、下図のこれまでをふりかえってみてください。

赤字が30年間(もしくは青字の20年間)、MSCI ACWIという株価指数に連動した、つまり世界の株式に分散して毎月積み立てた図ものです。2008年~2012年ぐらいの数年間は、預貯金のほうがよい結果になっていますが、20年や30年の長期では、いずれも世界の株式に投資することで結果が出ています。愚直に、長期・積立・分散をし続けた場合、積立総額240万円は、20年で711万円に、積立総額360万円は、30年で1,509万円というようになっているのです。

今ニュースなどで話題になっていますが、2022年度から始まる高等学校の新学習指導要領は、家計管理などを教える家庭科の授業で「資産形成」に触れるよう規定されています。時代は少しずつ変化しています。勝ち負けの投機ではなく、「長期・積立・分散」という投資の基本ルールを、多くの若者たちが学校で習得できる時代がやってくることを願っています。

 
ファイナンシャルプランナー/キャリアカウンセラー/(株)イー・カンパニー代表

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