呪われた五輪は「朝日脳」が一番破壊力を発揮するパターン

悲観的に近未来を予測してみると
2021年07月01日 06:00
朝日新聞創業家
  • バッハ氏広島訪問の報道から再び思うオリンピックと朝日脳の関連
  • 会場の飲酒解禁騒ぎにみられる、関係者の「善意」がもたらす失策
  • ワクチン輸送、五輪後の景気V字回復…各種のシナリオが疑問だらけ

(編集部より)「朝日新聞」という題材を通して日本社会、日本的組織の悲喜こもごもを綴ってきた村山恭平さんの連載。前回から創業家としての悲哀に苦悩してきたファミリーヒストリーを綴ってきましたが、今回はオリンピック関連のニュースををみて感じた「朝日脳」がズバッとハマるパターンを指摘。究極の悲観シナリオを論じます。

リモート会議で手を振るバッハ氏と橋本聖子氏(4月28日。写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

父の話のつもりが

父母のボストン留学中、共通の友人に広島出身の医学生がいたそうです。アメリカの奨学金をもらいアメリカの大学病院で学んでいるのですから普段は親米派なのですが、少し飲みすぎると「なんで原爆なんか落としたんや。絶対にアメリカは許せない」と大声(ただし日本語)で、喚き出し、なだめるのに苦労したそうです。

…と、ここまで書いたところで、バッハ氏広島訪問のニュースが入ってきました。こんなデリケートな場所に、“重症朝日脳”の疑いがある人物を案内するとは、JOCも度胸が良すぎます。原爆ドーム前で多くの内外の大物政治家がスピーチをしましたが、印象に残っているものは意外にありません。裏を返せば、当たり障りのないことしか言えない場所なのです……嫌な予感がします。

Bossiema/iStock

たとえば「模範答案」ですが、「77年前の夏、この広島で多くの方が亡くなったことが世界平和につながりました。今年もまた日本人の犠牲の上で、平和の祭典を開きましょう。」…もはや誰も怒りさえしません。ボランティアは姿を消しますが、警備や誘導は大丈夫、自発的無観客状態だからです。テレビ中継のCMはACが独占状態。逆方向でもそれはそれで困ります。「原爆は悪魔の兵器。使用した国は地獄に落ちます」…バイデンさんの悲しそうな顔が目に浮かびます。この場合、NBCの中継が英語版ACだらけになるのでしょうか。2つの地雷を同時によけるのは結構大変です。

日本人はアメリカの核戦略にどう向き合うべきか、戦後ずっと誤魔化してきた問題が、大きく口を開け待っている場所が広島なのです。何か「良い」ことを言って名誉回復したいなどと思っている者が行ってよいところではありません。朝日脳が一番破壊力を発揮するのは善意に燃えているときです。

善意と言えば、会場の飲酒解禁騒ぎ、JOCが気を効かせようとして失敗したのが真相ではないでしょうか。夜7時、お酒さよならタイム。居酒屋のテレビに、ビールで盛り上がる五輪観客の姿が映ったら、近所の自販機が何台ひっくり返されるか分かりません。酔っ払い全員を敵に回す覚悟もないのに、自分から酒解禁を求める経営者は、朝日脳の変異株、アサヒ脳としか思えませんでした。いらぬ忖度を固辞しても、名前が出るだけで、「ステークホルダー」には結構な痛手だったでしょう。

ワクチン、景気回復?…五輪小ネタ集

FrankyDeMeyer/iStock

ここまで来たら、今回は五輪小ネタ集で行きます。私たちは、少しワクチンを当てにしすぎていませんか。断っておきますが、私は反ワクチン主義者ではありません。7月中に2回の接種予約を入れています。けれども、予防注射は打つべきだと判断することと、「ワクチンさえあれば五輪は安全・安心になり、近く景気もV字回復」と期待することは、全く別のはずです。その点、いくつか気になることがあります。

まずは、輸送の話です。たとえば、ファイザー社製ワクチンは、マイナス70度で保管や輸送をするのですが、外気温との差が約100度。熱湯の海を行く潜水艦で氷を運ぶようなものです。他社製はここまでシビアではないにしろ、やはり冷却が必須です。現に、冷却ミスで大量のワクチンがオシャカになった事故が時々おこっています。あってはならない話ですが、担当者がミスに気づかなかったり、気づかなかったふりをしたりしても、検証は難しいでしょう。一度温度が上がっても外見は変わらないからです。

面倒な作業を真面目にやる日本人でさえこのありさまですから、設備もスタッフもそろっていない国の状況は推して知るべしです。製薬会社自らが少しでも治療成績を上げようと必死になって少量のワクチンを管理をする治験と同等の品質を、世界中全ての現場で望むのは無理ではないでしょうか。予防したはずの来日五輪選手団から感染者が出たのも、この話だけで説明がつくと思います。

五輪の安全・安心を計算してみましょう。ワクチンの有効率を治験レベルの95%として、IOCの発表通り摂取率を80%としても、選手の約4分の1は免疫が十分でないまま来日しているわけです。さらに、上記の品質管理の問題や、某国製の有効率5割ちょっとのワクチンのことを考慮すると、がっちり予防のできている選手はせいぜい、5~6割ではないでしょうか。審判・コーチはさらに低いはずです。

毎日検査をするにしても、患者側に感染を隠すインセンティブがある状況で機能するのでしょうか。また、検査結果に異議を唱える国が出てきたらどうするのでしょうか。競技中や選手村で国際クラスターが発生したら、明らかな感染被害者も失格にするのでしょうか。こういうところで処理を間違えたら、平和の祭典どころか、さらに世界を殺伐とさせる「よっぽど呪われた五輪」にさえなりかねません。

Fiers/iStock

もう一つ、五輪後の景気V字回復にも疑問があります。誰もワクチンの有効期間を考えないのでしょうか。いくらなんでも種痘のように「一度打てば一生安全」というのは期待薄でしょう。既存のインフルエンザのことを考えれば、ワクチンの効果は2~3年ということも大いに考えられます。その場合、パリ五輪や大阪万博の前には、また打ち直しということになりそうです。

IATA(国際航空運送協会)が2022年中に景気がコロナ前にもどることを想定しているという話を某社の株主総会で聞きましたが、航空各社がこれを真に受けて経営計画を立てたりするのは、危険すぎるでしょう。

結局、五輪ごと4年ぐらいの周期でコロナ騒ぎが繰り返され、最後は(非常に嫌な言葉ですが)優生学的淘汰でウイルスに強い血統だけが生き残るということになり、それまで(最低でも2~3世代100年ぐらいですか)の間に、少子化の加速と観光産業の消滅で日本経済は事実上消えているかもしれません…といったら言い過ぎでしょうか。

あえてニヒルな言い方をすれば、入場制限の撤廃やら酒類の持ち込みを言い出す輩が、2021年の夏までは経済大国日本があったということの「レガシー」を残すために華々しく最後のお祭りをしようというのなら、「朝日脳」の真反対(今五輪をやるのは、邪悪で、自分勝手で、万人が反対し、きっと酷いことになると根拠を持って言えるが、どうせもうダメなんだからド派手に騒ぐぞ)で、案外「正解」だったりして…。

 

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