花粉症も軽減 !? 木材高騰「ウッドショック」は、日本の林業にチャンス
起死回生のチャンス、材木業者と林野庁に聞く- コロナ禍で木材が高騰。「ウッドショック」が日本の林業にチャンスの理由
- 80年代のピーク以後、輸入材に追い込まれ、衰退の一途だったが起死回生
- スギの伐採、植え替えが進むことで、花粉症も軽減されることへの期待
米国で4倍!跳ね上がる木材価格
世界的な木材の価格高騰「ウッドショック」。コロナ禍で、世界の輸入木材価格が高騰している。ウッドショックの発端は、コロナ禍により米国を中心にテレワークが広がったことで、会社のある都心から郊外に一戸建て住宅を建てる需要が急増したからだとも、いわれている。アメリカでは1年で4倍近く価格が吊り上がっているというのだから驚きだ。世界中で木材の品薄状態が続いている。

海外での値上がりに伴い、日本の木材価格も平均で約1.3倍程度価格が上昇しているという。だが、アメリカでは4倍も上がっているというのに比べて、価格上昇が緩やかなのは、なぜなのだろうか。ちなみに、日本の米のように政府が価格操作するようなことはなく、林業市場の価格は、市場原理に基づいているという。
「もともと、木材というのは価格が上下しやすいのです。毎回乱高下に合わせて価格設定していたら、取引先が離れてしまう」と材木業者は語る。極端に価格を釣り上げられない事情があるというのだ。また、業界にはアメリカの価格高騰にも裏があるのではないかと訝しがるむきもある。「需要増とはいえ、アメリカの価格高騰は、あまりにも釣り上がりすぎている。価格高騰は先物業者が介在しているのでは?なんて噂もたっています」(前出、材木業者)
日本の林業にチャンスの理由
いずれにせよ、輸入材が足りないのであれば、日本の木材を使うのはどうなのかという疑問が浮かび上がる。そもそも日本は世界有数の森林国。森林面積は国土面積の3分の2にもなる。また、森林資源は人工林を中心に毎年7万m³のペースで増加しており、現在は約52億m³。この50年で実に6倍にも増えているのだ。林野庁によると、この国内約2,500万haもある森林面積ののうち、人工林が約1,000万haを占めているのだが、その多くがスギとヒノキなのだ。この人工林のうち約50%が、50年以上たった“伐採しどきの木”なのだという。この木を切って売れば、日本の林業にとって好機になるのではないだろうか。
「ウッドショックは、今日本の林業にとってはチャンスだという声を各方面からいただくようになりました」と喜々と語るのは、林野庁木材産業課の担当者。「もし、今のウッドショックの高価格帯がずっと続くようであれば、これから増産体制をとったとしても収益は十分成り立ちます」(同)と世界的な需要増に期待を語る。
とはいえ、需要が増えたからといって、特に林業の人材を急に増やすのはなかなか難しいという。「山の木を切る方も、工場の方も、いまフル稼働で頑張っています。ただ、今以上増産するには、人も設備も足りていません」と語る。「林業は死亡事故も多く、たいへん危険を伴う業務です。数年は経験を積まなければ働き手にはなれないともいわれています。また、担い手の25%が、65歳以上の高齢者の多い業界でもあります」とはいえ、35歳以下の若者も17%と、全く若手がいない業界というわけでもないようだ。政策的に開業3年間は助成するなど、人が減らないための政策を実行してきたからだという。

日本の林業は80年代にピークを迎え、以降は外国からの輸入材に追い込まれ、衰退の一途だった。このウッドショックは、起死回生のチャンスがあるかもしれないのだ。
花粉症の人にも朗報 !?
もう一つ、ウッドショックが日本人にとって福音になる可能性がある。それは、伐採に適した人工林の多くが、花粉症患者を苦しめてきた犯人だからだ。
人工林のうち多くを占めているスギは、多くの花粉症患者を生んできた。昭和20年頃、戦後復興で国内の木材需要が急増した際に、政府は成長の早いスギを多数植林した。スギが成長し、花粉を多く飛ばすようになったため、毎年、都心部にも多くの花粉が舞い込み、多くの日本人が花粉症に罹患し、毎年のアレルギー症状に苦しめられてきた。

花粉症の原因が人工林による多すぎるスギだとわかるようになって、社会問題のような存在となった。「花粉症ストップ」が都心部の政策課題となっても、スギが伐採される事がなかった理由は、海外からの木材の輸入が増えていたため、伐採がコストに見合わなくなっていたからだ。こうして、伐採に適した樹齢を迎えても、スギは一向に放置されたまま、という経緯があった。
そんな中いま、ウッドショックという世界的な木材の価格高騰によって、花粉症に苦しむ人たちにチャンスがやってきた。国内のスギの価格も上がったことで、国内において林業関係者に杉を伐採するインセンティブが生まれてきたのだ。これは、国内林業が潤うだけでなく、花粉症に悩む人たちにとっても苦しみが減るチャンスなのではないだろうか?
「スギを伐採すれば、またそこに新しい木を植える必要はあります。杉の木が植えられていたところに、別の種類の木を植えることも原則的に問題ありませんし、再び杉の木をまた植えるのだとしても、植え替える際には、今ほど花粉が生じない品種の苗を植えますので、今のような問題は起こらないでしょうね。花粉症はもちろんのこと、地球環境にとっても、経済のためにも、定期的に伐採することは、理にかなっているのです」(林野庁木材産業課)
強度弱いスギも、中国の需要増で追い風
スギが日本経済を潤し、日本人の鼻をも潤すならこんないいことはない。ちなみに、商品としての、スギの木の価値はどうなのだろうか?スギは高級木材であるヒノキと比べても、比較的強度には欠ケルトも言われている。ちなみに、今ウッドショックにより世界市場で、最も需要が高まっていて品薄なのはアメリカの松(米松)だが、「スギ<米松<ヒノキ」の順で強度は劣るだという。スギは柱や横架材など、強度が必要なところには使えないが、合板などそれほど強度を必要としない場所であれば、十分に建材としての価値がある。

実際に中国からの需要がいま増えているのだという。住宅需要が増えていることと、そして中国には杉はあまり無いために、日本の杉の需要が増しているというのだ。「ウッドショックで今深刻に困っているのは、輸入材のみに頼ってきた業界です。国扱っている業者にとっては、今は追い風という面がありますね」(同)
コロナ禍によって衰退の一方だった日本の林業。展望の見えなかったこの業界が、このウッドショックによって、立ち直る可能性があるならば、朗報だろう。そして、何よりこれまで多くの日本人を苦しめてきた花粉症の原因がなくなるのだとすれば、“ウッドショック”はまさに希望だともいえる
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