小池氏の知事会見での都民ファ激励は、乾坤一擲のモラルハザード
政務と公務、一線を越えても記者たちは鈍感- 小池氏の定例記者会見での都民ファーストの会激励は「公私混同」
- 会見は都政などの公務が主題。かつては政務との会見に分けた2部制も
- 小池氏も確信犯の疑いだが、記者クラブも問題意識が足りないのでは
東京都の小池知事が2日、過労による静養から復帰して初の定例記者会見で姿を現した。凡百のメディアが報じ、「倒れても本望」などと見出し狙いで述べたであろうことの是非がネットで論じられているが、2日深夜の時点の報道を見る限り、なぜかどのメディアも指摘していない問題点がある。それは、知事の公務として行われている定例記者会見において、与党会派である都民ファーストの会に公然とエールを送る政務との“公私混同”があったことだ。

朝日記者の質問から都民ファへ舵
まずは問題のやりとりを振り返ってみよう。この日の記者会見、筆者もライブで聞いていたが、小池氏は、記者クラブ幹事社の朝日新聞・岡戸記者から「都議選について現時点の受け止め」を尋ねられると、
コロナ禍を経たオリンピック・パラリンピックの後、どういう東京にしていくのかなどなど、課題は山積しております。また、都政の改革ということも引き続き行っていかなければ、世界のスピードに間に合いません。
などと都政を取り巻く状況に触れた上で、
よって改革を続けるとともに、江戸の伝統を守るという、そういう皆様方が、都政と、そして都議会とともに共鳴しあって東京を高めていくということは極めて重要だと思っております。
と都議会に言及。ここで述べた「改革」や「伝統」は先日の退院時の知事談話にもあったように、都民ファを改革勢力になぞらえ、自民党は伝統の一語に比喩し、両者のバランスをとったように思わせた。ところが、ここから小池氏は踏み込む。
承知のように、都民ファーストの会は私自身、特別顧問を務めるわけでございますので、当然のことながら頑張ってもらいたいと、率直に当然のこととして思っております。そういう中でずっと、今回は選挙戦には直接加わっておりませんが、街頭演説であるとか、今コロナの中で非常にやりにくい選挙でございます。ただ私は、今申し上げましたように、東京大改革を担ってきてくれた都民ファーストの皆さんには、ポスターとかチラシとかさんざん出てますし、エールを送っているところです。そしてまた、都として、これからも安定的に、そして大胆に進めていくためにも、多くの皆様方に頑張っていただきたいと思っております。
時間にしておよそ2分30秒。小池氏が今回の都議選で旗幟を鮮明にしたのは初めてだろう。当初の苦戦が一転、自身の入院による同情票の集まりで支持回復傾向から、最終盤で乾坤一擲のダメ押しに踏み切ったのではないかなど政局的な憶測が流れているが、今回は他の政局報道に譲る。問題は、知事の「公務」として対応している定例記者会見が、いくら特別顧問をつとめているとはいえ、特定政党のプロモーションの場にして妥当だったのかどうかだ。
税金が使われる定例記者会見

定例記者会見は都庁記者クラブが主催し、毎週金曜午後2時から開催される。報道によると、小池氏の体調からこの日の定例会見が行われない可能性もあったが、小池氏の強い意向により、恒例より2時間遅れての開催となった。当然のことながら注目度は高く、記者会見はネットだけでなく、地上波テレビで同時間帯に放映していたニュース番組でも一部生中継をしていた。
定例記者会見は、概ね、都政の予算案や新規事業、その他報告事項などの発表を知事がした上で、記者たちとの質疑応答に入る。主催者はたしかに記者クラブだが、場所は都庁第一庁舎の6階にある記者クラブの会見場だ。そして東京都は、中枢である政策企画局の職員を中心にテーマごとに関係部局が対応し、プレゼンテーション用の資料一式など記者会見の準備や応対をする。さらに記者会見後も、同局政策調整課の職員が数時間で会見録のアップもしている。自治体によっては何日かかっても更新しないところもあるが、会見録の掲載スピードは全都道府県でもナンバーワンでないだろうか。想定問答など当然用意して知事にレクチャーもしているだろう。
要は場所から応対の人員稼働もろもろすべて都民の税金で賄っている。もちろんその税金は選挙の時に、小池氏や都民ファではない候補者に入れた人、そもそも選挙に行ってない人も払っている。
政務と公務の線引きは?
記者会見の目的は、コロナ対応やその他の事業などを取り扱う「公務」について説明や質疑をするのが本来の筋だ。ところが、公務ではない「政務」、小池氏個人の政治活動や、小池氏が特別顧問をつとめる都民ファーストの会に関する話題も流れによっては言及される。特に政局やいまのような選挙時は、質疑応答で出てしまうところで、報道も政務的なものが主になりがちだが、少なくとも記者会見に出る側は、「公務」として臨む定例記者会見で、積極的に「政務」の場として活用するのは抑制的であるべきだろう。前述した通り、公務対応である以上、都民の税金を使ったリソースを投入しているからだ。
当然、小池氏も公務と政務の線引きは認識している。4年前の前回都議選の約1か月前、都民ファの代表に就任した際は、「公務」と「政務」会見を2部制に分けて行った。当時の毎日新聞によると、「都民ファースト代表として質問に答える政務部分は中継せず、背後にある都庁のPRパネルも外す」(記事より)配慮が行われていた。この切り分けモデルは、大阪維新の会の代表だった橋下徹氏が大阪府知事や大阪市長だった時が先例で、小池氏、東京都もそれを参考にしたとみられるが、2部制の会見は小池氏が前回の都議選直後に党代表を辞任した後はやらなくなった。なお、2017年衆院選前の希望の党創設の会見時も都庁のPRパネルを外して行っており、この点からも小池氏自身が公務と政務の線引きの認識はあったことがうかがえる。
翻ってきのうの記者会見。小池氏自身が2部制で会見する体力的な余裕はなかった可能性があるし、記者たちの質疑も選挙中とあって政務寄りになってしまうのは仕方がないかもしれないが、あえて筋論を言えば、小池氏は特定政党への支持表明をするのは別の場所でするべきだったし、記者たちも政務と公務の線引きを全く意識していなかった。小池氏のリアル会見復帰の第一声を取るに必死だったとはいえ、そのあたりの問題を指摘する意見がすぐに見当たらなかったのは噴飯ものだ。
小池氏も確信犯で言った疑いがある。都民の一人として筆者はその当該質疑の約2分30秒の税金を返して欲しいくらいだ。モラルのない彼女に何も期待はしないが、しかし記者会見を宣伝の場として利用された都庁記者クラブは、なんのために名目上の会見主催者をあなたたちにしているのか。これで小池氏に記者たちも、そしてその後ろにいる都民も舐められっぱなしではないのか。
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