都議選余波…「ポスト小池」で元ヤフー宮坂副知事の昇格待望論

都知事選の場合に予想される暗闘劇
報道アナリスト/株式会社ソーシャルラボ代表取締役
  • 都民ファの都議選大健闘で、小池氏の国政復帰説が再燃している
  • 国政復帰の場合、都知事選に。ポスト小池に副知事の宮坂氏の名前も
  • 待望論が出ても一般的な知名度に加え、政党間の主導権争いの予感

4日の東京都議選で、小池知事が得意の機略で都民ファーストの会の議席減少を最小限にとどめ、自民・公明に過半数をとらせなかたことで、永田町では小池氏の国政復帰を占う観測論が再燃している。

入院前に「東京の観光振興を考える有識者会議」に出席した小池氏(東京都「知事の部屋」より)

東京のローカル政局にも絡むが、菅原一秀氏の辞職により、小池氏が住むエリア隣の衆議院東京9区が空いたことで、二階幹事長が小池氏を9区から擁立するとの見方が燻り続けている。もちろん、東京都連が猛反対するところだろうが、9区については神奈川県選出の元衆議院議員の名前も上がったものの、地元組織の反対で流れてから、まだ正式な後継は発表されていない。また都連が反対して9区に別候補者を擁立したところで、小池氏が無所属の都民ファーストの会推薦で出馬すれば、圧勝するのは目に見えている。

一部の政治アナリストは、小池氏の国政復帰説はないとの見方を示すが、左脳ロジックで弾き出す選挙予測が、小池氏の右脳的な勝負勘による奇襲戦術を読み切れなかったように、天才的な「軍神」の動向を見通すのは極めて困難だ。たしかなことは小池氏は10日後に69歳。今秋までに行われる衆院選での国政復帰を逃すと、平均任期の2年半後に次の次の衆院選が行われる頃にはもう70代に突入する。国政で勝負を賭けに行くのであれば、年齢的にリミットが近づいている。

ところで新聞、テレビは小池氏の国政転出をささやいているが、そうなった場合の大事なことを忘れている。小池氏が任期途中で知事を辞めるとなると、その衆院選と同時、あるいは直後に後継を決める都知事選をやらなければならない。昨晩、YouTubeの動画番組生田よしかつさん、カンニング竹山さん、中川コージさんと共演し、番組終了後、都知事選になった場合の候補者が話題になって、これという人を挙げ損ねたのだが、筆者自身、あの人のことを忘れていた。小池氏が都政のDXの切り札として民間から副知事に招聘した、元ヤフー社長の宮坂学氏だ。筆者の知っているウェブ界隈では、「ポスト小池」として宮坂氏の待望論は以前からあったのだが、昨日の選挙結果を受けて、広がりそうな気配がある。

小池氏と宮坂氏(Facebook「東京都知事 小池百合子の活動レポート」より)

宮坂氏は政治的な野心めいたものを感じさせないので、自民党側の印象も悪くないはずだ。実際、副知事に就任する前のおととし7月、宮坂氏が都の参与になったとき、都議会自民党は、5G活用やsociety5.0についての勉強会を開催し、宮坂氏を講師に招いた。当時取材したところ、勉強会の中身は好評で、「第2弾、第3弾も期待する声も高まった」(都議会自民党関係者)ところだったという。

宮坂氏待望論に待ち受けるハードル

政府にデジタル庁が誕生した時流にあって、首都・東京のさらなるDX推進は、国政をリードするくらいの存在感が求められる。日本最大手のネット企業、ヤフーを動かしたマネジメント経験も含め、知事としては適任に思えるが、乗り越えるべきハードルはいくつかある。

まず都知事選は日本最大のテレビ選挙で独特の難しさがある。1995年知事選でタレント出身の青島幸男氏が与野党の候補者を打ち破って当選して以来、大衆に知名度のある候補者が優位に戦う傾向が加速している。また経営者出身の候補者は、2011年の都知事選で3位に終わったワタミグループ創業者の渡辺美樹氏のように健闘はしても、都内全域にまでは支持が広がりにくい傾向もある。仮に「ポスト小池」として宮坂氏に白羽の矢が立ったとしても、新興企業界隈では抜群の知名度も、一般的には「ヤフーの元社長」としてやっと認識されるかどうかということだろう。しかし投票用紙に書くのは「宮坂学」だ。「ヤフーの元社長」の肩書きを書いて有効と判定されるかは微妙だろう。

候補者調整では政治的な困難も予想される。「ポスト小池」としての位置付けで、現与党会派の都民ファーストの会と、第1党に戻ってきた都議会自民党、および公明党との主導権争いは避けられない。二階幹事長が仲裁するかたちで「相乗り」する可能性があるが、千代田区長選の折に小池氏が応援に入るかどうかで、小池氏側近の都民ファ・荒木千陽代表と二階氏との綱引きがあった経緯を考えると、その再現の可能性はある。また、小池氏の意向で荒木氏が矛を収めても、小池嫌いの都議会自民党(=自民党都連)は二階氏の言うことを聞くのかどうか。都民ファの宮坂氏囲い込みが過ぎると判断し、候補者調整が失敗すれば、自民党が独自候補擁立に動きはしまいか。こうした暗闘が起きた時の調整役だった内田ドンは(表向きは)もう都連にいなくなった中で、分裂選挙回避になるのか….。

…とここまで書いたところで、あくまで想像でしかないから筆を止めたいが、ここまでの都政政局をみていると嫌な予感ばかりがするのも本音だ。政局の主導権争い、党利党略ばかりになって、肝心の都政課題がおきざりになり、宮坂学という稀有な人材を政争で浪費し、漁夫の利を狙うポピュリストに都知事の座をさらわれるような最悪の事態は避けてもらいたいと思う。

 
報道アナリスト/株式会社ソーシャルラボ代表取締役

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