福原愛さん離婚で「共同親権」認知度が日本でも上昇か

G20の大半は導入、日本は法務省で審議中
現役時代の福原愛さん(XIAOYU TANG/Wikimedia=CC BY-SA 2.0)

卓球元日本代表でロンドン五輪銀メダリストの福原愛さん(32)が、台湾の卓球選手・江宏傑さん(32)との離婚に際して、子どもの養育について「共同親権」を選んだことで、離婚報道直後には「共同親権」がツイッターのトレンドワード入りするなど、「単独親権」制の日本国内での注目度が著しくあがろうとしている。

日本国内での「共同親権」問題を巡ってはその認知度が低いばかりか、左派系の有識者などがDV問題の横行を名目に共同親権導入に反対。推進側は、DV対策とは分けて考えるべきとの見解を示して反論するものの、左派系有識者らがメディアへの影響力の強みを生かし、言論封殺に近いことも行われてきた。しかし今回、台湾の法制度に基づくとはいえ、日本の著名人が共同親権の当事者になったことで、世界の親権制度においては日本の単独親権がむしろ少数になっていることに社会的認知度が広がりつつある。

福原さんのケースでは、福原さんの不倫疑惑や江さんのモラハラ疑惑が週刊誌報道で浮上し、江さん側が今年4月に台湾・高雄の裁判所に離婚を申し立てた。2人の間には2017年に長女、19年に長男が生まれており、裁判所の審理では親権の取り扱いもポイントになっていたようだ。台湾はかつては日本と同じく、離婚後は単独親権制だったが、1996年の民法改正により、単独か共同かの選択制に変更(※)。共同親権を選ぶ割合は2005年に10%ほどだったのが、その後の10年間で倍増するなど、増える傾向にはあったようだ(※)。福原さん、江さんのケースでは、子どもたちがすでに台湾で生まれ育ってきた経緯から、江さんとともに引き続き台湾で暮らしつつ、福原さんも親権を持つことになった。

「単独親権のみ」G20で3か国のみ

我が国ではこの10年ほど、親権制度のあり方を見直す論議が高まり、2011年には国会で民法の一部改正が成立した際の附帯決議で、「親権制度については、今日の家族を取り巻く状況、本法施行後の状況等を踏まえ、協議離婚制度の在り方、親権の一部制限制度の創設や懲戒権の在り方、離婚後の共同親権・共同監護の可能性を含め、その在り方全般について検討すること」といった要請が盛り込まれた。これに対し日本共産党などが「共同親権の拙速な導入に反対」を掲げるなどしてきたが、世界的には共同親権への流れが圧倒的だ。

法務省がG20を含む海外24か国の法制度を調査し、昨年4月に発表した「父母の離婚後の子の養育に関する海外法制について」の調査では、日本と同じく単独親権のみを採用するのはいまやインドとトルコだけであることが明らかになった。フランスやイタリア、ドイツなどは原則として共同親権を採用。スペインなどは父母の協議により選択制にしているという。離婚後の共同親権の行使で、元夫婦が対立した場合には、イギリスや米ワシントンD.C.などは裁判所での判断に委ねることが多く、タイは行政機関が助言や勧告するという。

こうした流れを受け、日本では3月から、法相の諮問機関である法制審議会の家族法制部会の討議に、共同親権の是非が入って議論される予定だ。ここまで当事者や有識者、メディアなどの間では、約束が守られないことが多い養育費や面会交流、DVがある場合の対策などの問題が挙げられているが、世論の関心の高まりがどう影響するか、上川法相は今年1月ツイッターで「私自身強い思いをもって臨んできた離婚に伴う子の養育のあり方について、法改正に向けた検討を行って頂くため、#法制審議会 に諮問することとしました。離婚に伴う養育費の不払いや交流の断絶は子の養育に深刻な影響を及ぼします。#チルドレン・ファースト の観点でスピード感ある議論を期待します。」と意欲を見せており、議論の行方が注目される。

(※)離別後の親権についての日台比較研究(2) : 東アジアの家族主義福祉国家における調査結果からの一考察

 

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