イーロン・マスクの“狭小住宅”が話題!災害住宅を巡る世界の新たな潮流

「ガラパゴス」傾向の日本は変わるか
2021年07月17日 16:00
ジャーナリスト/SAKISIRU副編集長
  • イーロン・マスク氏が5万ドル、37平方㍍のプレハブ住宅に移り住んで話題に
  • 住宅はベンチャー企業が災害対策や感染隔離で開発。男性一人の職住なら十分
  • 日本の災害住宅はプレハブより快適なトレーラーハウス導入が始まっている

テスラやスペースX社のCEOとして約17兆円近くの資産を持つ億万長者のイーロン・マスク氏が引っ越したテキサス州ボカチカの家は、約500万円(5万ドル)の小さな住宅だと話題になっている。

イーロン・マスク氏(NORAD and USNORTHCOM Public Affairs/public domain)

マスク氏が“狭小住宅”に移り住んだワケ

マスク氏は昨年「ほぼ全ての所有物を売る」とミニマリスト宣言をし、海沿いの一軒家だけ残し、カリフォルニアの邸宅など7つの邸宅を売りに出した。そして今住んでいるのが37平方㍍とコンパクトなプレハブ住宅だという。「私のメインの家は、スペースX社から借りた5万ドルの家です。でもこれはちょっとすごい」

マスク氏が住む部屋は、テキサスのベンチャー企業「Boxabl」の開発した「Casita」という部屋モデル。37平方㍍に、リビングエリア、バスルーム、ベッドにキッチンある。このプレハブ住宅は折りたたみ式で、耐水性、耐火性、耐風性、耐カビ性に優れているという。なんと1時間で組み立てが出来るのだという。「Boxabl」創業者のガリアーノ氏は「災害が起こった際、またはウイルスで急に隔離が必要となった場合、迅速で費用対効果の高い住宅を提供します」と業界紙に語っている。

マスク氏のような豪邸に住んでいた男性が満足出来る住宅が、庶民にも手が届く価格で登場するこの時代、家に対する価値観は今後は大きく変わっていくことだろう。

ちなみに、妻や子供はこのプレハブには住んでいないということなので、男性ひとりが使う仕事場に近い住処が37平方㍍もあるのなら、決して手狭に感じるようなものでない、と考えてしまうのはやはり日本人の感覚だろうか。アメリカと比べると、住宅事情のスタンダードは決して良いわけではない日本でも、すぐ作れて快適な家が、安くて高品質ならば理想的なようにも思う。

プレハブより快適なトレーラーハウス

特に災害時にこうした高品質な住宅がすぐ用意出来るようであれば、理想ではないだろうか。日本の住宅業界はガラパゴス傾向が強く、総じて海外で素晴らしい家の水準には追いついてはいない。

特に災害ではその傾向が強く、従来型の決して快適とはいえないプレハブ住宅に住む以外の選択肢はなかった。こうした傾向にも少し変化はあるようで、東日本大震災の仮設住宅では、従来型のプレハブ工法に加え、比較的快適な木造の仮設住宅も一部建てられている。しかし期間が終了したあとには、解体しなければならない問題があった。

そこで登場したのがトレーラーハウスだ。2018年の西日本豪雨の際には、岡山県倉敷市で日本で初めて公式の応急仮設住宅として50戸のトレーラーハウスが認められたのだ。2012年に規制が緩和されていたものの、道路交通法上のトレーラーハウスが公道で走れない問題があったが、これも法改正を経て可能となり環境が整ったのだ。

※画像はイメージです(uptonpark/iStock)

トレーラーハウスなら、通常のプレハブ建設と比べて工期が1か月も短くすむという。災害時に被災現場に持ち込むと、すぐ住むことも出来る。

「窓が三重構造なので、特に冬が暖かくていい、という評判がありました。災害住宅なので原則2年間しか住めないのですが、気に入ったので、このまま買い取って住みたいという要望をおっしゃる方もいましたね。リースなので、期間が終わればそのまま業者に返しますから、自治体に空き家が余ったりするようなことはありません」(倉敷市住宅課)

日本人は暮らしの質に欲張りでいい

既存の日本の従来型のプレハブ住宅は断熱機能がなく、夏は熱く冬は寒い。さらに、防音効果もあまりない。ところがトレーラーハウスの性能は、一般住宅並み。さらに、IHヒーターや冷房も完備されている。内装も木材が使われているという。2×4工法なので、従来工法よりも災害にも強い。

リース費用も、1台あたり2年間で約300万と格安だ。東日本大震災の仮設住宅では一戸当たり600万〜700万程度かかったというのだから格安である。

毎年のように異常気象が続く昨今、どこで災害が起こり、仮設住宅に住まざるをえない事態が起きるか予測がつかない。被災者の立場になったときてあっても、より快適で多様で住環境が得られるようになるのが理想だといえる。

イタリアの仮設住宅の基準は、夫婦2人なら60平方㍍、家族6人なら100平方㍍、家具家電食器付きと、日本から見ると“いたれりつくせり”の仕様がスタンダードだ。日本では「被災者は施しを受けているのだから生活クオリティは我慢すべきだ」という考え方をしがちだが、日本人ももっと暮らしの質についてもっと欲張りであってもいいだろう。

ジャーナリスト/SAKISIRU副編集長

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