世界で賄賂事件に巻き込まれる日本企業…サラリーマンでも安心できない!

外国公務員があの手この手で賄賂要求
2021年07月28日 06:00
ジャーナリスト
  • 日本企業が海外進出先で賄賂に巻き込まれる事例。M&Aのせいで20億円損失も
  • 賄賂を出すに至るまでの経緯は公表。ある国では公務員が顧問料名目で要求
  • 国外の贈賄も「域外適用」で摘発。日本は個人に罰金を課するため社員もリスク

これまで世界の公務員の汚職度や、おもに海外取引において日本企業が、現地公務員に賄賂を要求される実態について解説してきました。今回は日本企業が海外進出先で、賄賂に巻き込まれた事例をいくつかご紹介しましょう。

Rawpixel/iStock

サントリー子会社、20億円払う羽目に

昨年、公務員への賄賂を行った罰金として、サントリーホールディングスのアメリカ子会社、ビーム・サントリー社は、アメリカの司法当局に1957万ドル(約20億円)の和解金の支払いをすることで合意しました。

サントリーは2013年に、“ジムビーム”のバーボンウィスキーでおなじみの老舗、アメリカ酒類販売大手のビーム社を買収。実はこのビーム社、サントリーとの合併前となる2006~2012年の間に、インドで酒販の許認可を得るためインドの公務員に賄賂を送っていたのです。合併後に賄賂の事実が発覚し、ビーム・サントリー社が取り調べを受け和解金を支払うことになったのです。サントリーが、M&A先の企業が提携前に行っていた賄賂に罪に巻き込まれた形です。企業のリスク管理の上で、合併先についても、過去に違法な贈賄行為がなかったかまで確認することが、今の時代、大きな意味を持つようになりました。

パナソニックでも2018年に似たようなことがありました。米国子会社であるパナソニック・アビオニクスは、アメリカ司法当局に2億8000万ドル(約310憶円)の制裁金を払っています。同社が中東の複数の国営航空会社へ贈賄を渡していたのです。同社は航空機内エンタテイメント・システムの最大手。世界市場で7割のシェアを持つともいわれています。飛行機に乗ると、音楽や映画、天気やフライト情報を確認できますが、あのサービスの多くは同社製で、これらの商品を国営航空への納入をすすめるがために、現地公務員に贈賄を渡していたのです。

公務員が「私に顧問料を払って」

賄賂を要求したのがどこの国かまでは明かされていないものの、賄賂を出すに至るまでの経緯は公表されています。同社が某国に商談に行った際に、担当職員(公務員)のほうから「私が契約を取り付けるための手助けをしてあげます。そのために、私と顧問契約を結び、顧問料を払ってください」と求めてきたそうです。その公務員は、自分を代表とするコンサルティング会社を作って顧問料の受け取り先に指定していました。

複数の国で同様のことがあり、同社は総額88万ドル(9600万円)もの顧問料を公務員に支払った結果、2社で計7億ドル(765憶円)の契約を得ているのです。米司法当局は、これらのコンサルティング会社の働きに実態がないとして捜査に乗り出し、賄賂を認定したのです。

2016年には、オリンパスのアメリカ子会社が中南米の複数の国で、内視鏡などの販売にあたり、現地の医師らに採用を促すために接待をしたり、旅行やワイナリーに招待したり、キックバックを約束していた事件がありました。これが発覚したことで、アメリカの司法当局に6億4600万ドル(740憶円)の和解金を支払っています。

贈収賄事件は国境を超えて摘発される(BrianAJackson/iStock)

外国公務員への贈賄に国境なし

さて皆さん、ここで疑問がわきませんでしょうか?

インドや中南米で起こった贈賄事件なのに、これをアメリカ政府が捜査したり罰金を取ったり出来るはなぜなのでしょうか?たとえば日本人やアメリカ人がインドや南米に観光旅行で行って犯罪を犯したら、逮捕や捜査をするのは通常、現地政府の仕事です。裁判も現地の裁判所で行われます。本来ならアメリカの出る幕は無いはずです。日本の刑法でも効力をもつのは基本的に日本国内だけで、日本の法律が海外には及ぶことはありません。これを、法律の属地主義といいます。

ところが「外国公務員贈賄罪」の世界では別なのです。

アメリカの贈賄防止法であるFCPA(Foreign Corruput Practices Act、米国海外腐敗行為防止法)という法律には「域外適用」という制度があります。この法律は日本企業であっても、アメリカに子会社があれば適用されます。アメリカの上場企業であれば、外国での活動を含めて、アメリカのサービス、ドルを使うすべての商取引に適用されるのです。同様に英国の贈賄防止法であるブライバリ―・アクト(Bribery Act、英国賄賂防止法)という法律も、イギリスに支店をもつ外国企業には全て適用されます。そうなると、米英に拠点がある日本の大企業のほとんどが、外国公務員贈賄について米法と英法の適用を受けることになるのです。

ところが日本の外国公務員贈賄防止法に該当する不正競争防止法には、海外への域外適用はありません。とはいえ同法は、“属人”主義をとるので、日本人が海外でする行為には適用されるのです。

サラリーマンが背負う刑罰リスク

ですので、日本人ビジネスマンが商用で外国にいくと過酷です。外国公務員贈賄のリスクに対して、日本の不正競争防止法だけでなく、現地の法律、さらに多くの場合は英米法の適用も受けることになります。4つの法律を心して覚えておかなければ、犯罪に問われることになりかねないのです。

ただし、アメリカFCPAで罰せられた事件が、重ねて英国法や日本法で罰せられるようなことはありません。一時不再理といって、処罰は一回だけ。一つの法律だけで裁かれることになります。英米法の罰金が巨額なのは、外国捜査にかかる巨額費用を回収するため、そして再発防止のためという制裁的な意味合いがあります。

ちなみに日本の不正競争防止法では、米英のような巨額の罰金はありません。そのために裁かれるのならば、日本企業は日本で捜査・裁判を受けたほうが罰金が少なくてすみます。数年前から日本の検察なども国際対応に乗り出し、日本企業が日本の不正競争防止法で裁かれることも増えてきました。ところが、日本の法では、罰金自体は少ないものの、個人に罰金が課されます。関わった役職員が懲役刑となったりと、サラリーマン個人にはとても厳しい判決が昨年下って議論が沸き起こりました。

この件については次回に触れようと思います。

 

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