小山田圭吾辞任:世界との報道落差を埋めたネットの民意
この国が変わる「きっかけ」になるか- 小山田圭吾氏の凄惨ないじめの中身は海外メディアの方がリアルに報道
- 日本メディアは言葉を濁すもネットで拡散。SNSでの批判が辞任に追い込む
- 数々の不祥事に示された日本の「後進性」。自浄能力はあるか
東京オリンピックの競技スケジュールは開会式に先立ち、ソフトボールの予選から21日朝、始まる。その開会式での楽曲を担当していた小山田圭吾氏が過去のいじめについて、一旦謝罪したものの、辞任に追い込まれたのは、雑誌に語っていた凄惨すぎるいじめの内容がネット上で拡散したためだ。今回の騒動は、51歳の小山田氏が未成年時代に行ったはるか昔のこと、それが時を経て今問題になるという、あまりないケースだった。とはいえ本人が雑誌に語っていたいじめの内容はあまりに凄惨すぎて、その罪に時間の経過など関係ない、と皆に思わせるものだった。批判が収まらなかったのは、ツイッターなどで具体的ないじめの情報が拡散したからだ。
海外は報じていた凄惨な中身
「うん。もう人の道に反していること。だってほんとに全裸にしてぐるぐるに紐を巻いてオナニーさしてさ、ウンコ食わしたりさ」
当時、雑誌を読んでいたファン達の間ではすでに知られた話だったそうだが、紙媒体の古い情報であり、知っている人は限られていた。今回、彼がオリンピックに関わることになったことをきっかけに、当時のインタビュー内容がネット上で拡散したのだ。
今の時代若者層を中心に、気になることを検索して詳しく調べる文化が定着しつつある。調べれば、小山田氏がおこなったいじめの具体的な内容を知ることが出来る。内容のあまりの酷さに驚いた人たちから、ツイッターなどで情報が拡散し、さらに多くの人に知れ渡った。こうして、「過去のことであっても許されることではない」と小山田氏を、オリンピックの開会式の直前にして舞台から引きずり下ろすまでになったのだ。
ところが日本の新聞社の記事では「小山田氏が、過去に雑誌で語ったいじめ」と紹介される程度で、その凄惨な内容の具体性まで紹介されることは、ほぼ無かった。
いじめの具体的内容まで調べていない人たちからは「未成年時代の過ちが数十年もたって蒸し返されているのはおかしい」との声もあったくらいだ。新聞だけ読むことが多数派の時代であったならば、この問題は最後まで見逃されていたことだろう。
遠く離れた海外のメディアの方が詳しく真実を報じている。イギリス・テレグラフ紙は、いじめの内容に至るまで詳細に報じた。
「1994年と1995年に日本の音楽雑誌で行った2つのインタビューが再浮上しました。学校にいるときに、仲間に恐ろしい虐待をしたことを語っています。
彼は障害のある同級生を箱に閉じ込め、頭の周りに段ボール箱をテープで留め、チョークを中に注ぎ、マットレスで包んで蹴り、自分の糞便を食べさせ、他の生徒の前で自慰行為を強いることを説明しました」
「ホリー、ファック」海外SNS驚がく

いじめは、報じるにはあまりに下品な内容で、日本のメディアの規範では活字にすることが憚られたのかもしれない。だが、このいじめの酷さ具合は言葉を濁していれば伝わらない。皮肉なことに、日本の新聞だけ読んでいる人は、海外の新聞を読む人よりもリアルな情報から取り残されているのだ。
こうした具体例が紹介されたからだろう。外国からのツイッターやSNSでは、日本と同様に、驚きの声が寄せられている。
「ちょっとまって、これは日本では普通のことなの?」
「ホリー、ファック。これは通常のいじめを遥かに超えている」
「拷問の領域に入っているのではないか」
「過去の過ちを遡って断罪するのもいいとは思えないが、あまりに内容が酷すぎる」
「障害者の子供に対する度を越したいじめには、心が痛む」
「これは単に未熟な少年がした馬鹿な行為というより、障害者に対する無情な暴力と虐待です。彼を参加させようとしていたなんて。あまりに恐ろしい!」
「彼の話している内容は、他の国なら刑務所に入るのに十分な内容だ」
「いじめの内容を知ったからには、彼がやめるよう署名することにしたよ。」
「漫画と電子機器と野蛮な刑務所がある国・日本、完全に普通じゃないな」
「彼はオリンピック憲章を理解しているのか?そもそも何故オリンピック委員会は彼を選んだんだ?」
「パラリンピアンは東京オリンピックをボイコットする必要がある」
「今回のオリンピックについて知れば知るほどますます中止されるべきだったと思う」
また世界的に知名度のある小山田氏ゆえか、海外ファンからも落胆の声があがった。
「90年代はコーネリアスの曲をずっと聞いていたけど、いじめの話はショックだよ。病んでいる」
「いつもフリッパーズギターの曲を聞いていたけど、もう聞きたくない!」
この国に自浄能力があるか
BBCは、小山田氏の辞任を、一連のオリンピック関係者の度重なる辞任劇とともに報じている。クリエイティブチーフの佐々木宏が「芸能人渡辺直美が豚の耳をかぶることが出来ると語った。彼は後で謝罪した」という話や、森喜朗氏が「女性の話が多すぎて、多くの女性取締役との打ち合わせには“時間がかかる”」と発言し組織委員会の委員長を辞任することを余儀なくされたエピソードまで振り返っていた。他にもアジア諸国のメディアが、オリンピックの話題性も相まって小山田氏のいじめの話題を大きく報じていた。
オリンピックでは、世界に日本の明るい話題を報じてもらいたいところだったが、不本意ながら現実はそうはいっていないようだ。米ワシントン・ポスト紙は「誰もオリンピックにはいけません。ではなぜ政府は前進しようとしているのか。秋に総選挙があるから有権者と向き合わなければならないからか」などと冷笑している。巨額の税金を投じて開かれたオリンピック。結果的には日本社会の「後進性」を改めて世界に見せつける場になった。
とはいえ、今回の辞任劇を見ると、民意には一定の力があったことが証明されたともいえる。直前にも関わらず民意が問題ある小山田氏を辞任に追い込んだのだ。いつかオリンピックを振り返ったとき、あの頃これまでの問題が明るみになって、この国が変わるきっかけになったのだとせめて振り返りたいものだ。この国の自浄能力を信じたいところである。
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