文章を読ませたい?実は最初の100文字で勝負は決まる
尾藤克之「すぐに使える!バズる文章術」#4- 読まれる文章術講座。読者の気持ちをつかむには「導入部分のフック」が重要
- ただし文章や話し方が時代とともに変わるように「フック」にもトレンドがある
- それでも「時代の変遷に左右されない普遍的」な手本は存在。臨機応変が大切
文章には、「知ってもらう」「理解を深める」「説得する」「記録として残す」など、多くの役割があります。効果的に伝えるためには「フック」が大切です。読者の気持ちをつかむには、導入部分にフックとなる「なんだこれは!?」と思わせるような印象的な話題を用意しないと、次に誘導できません。具体的には100文字、つまり3行程度でフックがかからないと読んではもらえません。
イントロにフックが必要な理由
私はさまざまなウェブメディアで記事を執筆していますが、その際には、フックがかかることを意識しています。ただし、「フックが大事」といっても、そればかりに意識が向くと過剰な書き方になったり、内容がともなわない文章になったりしてしまうので注意しなければなりません。
また、フックをかける際には、全体のストーリーと最後にメッセージを用意しておくことも必要です。というのも、最後にメッセージを用意することで主張がはっきりするからです。
たとえば、企画書、プレゼン、セミナー資料も同じことです。さまざまな商品やサービスがあふれているこの時代に、相手に「なるほど!」と思わせるポイントや相手にメリットを感じてもらうポイント、つまり、フックがないと、調子が冗長になり、話を聞いてもらうことはできないでしょう。
フックがあることで、相手は「そういうことだったのか!」と納得するのです。そのためには、フックがかかったあと、読者の期待をはっきり提示することが必要になります。まずは相手がどう捉えるか。誰に向けて、何を、どのような目的で、どう伝えるか。きちんと整理してみましょう。
フックは時代とともに変化?
「フックは時代とともに変化するのか?」という疑問があります。約10年前、ニュースサイトでコラムを書きはじめた頃の話です。書き方のトレンドを理解するために、著名な日本語学者のテキストを読みあさりました。すると、とあるサイトで以下のような説明がされていたのを覚えています。
日常的なコラムであればA氏がお勧めです。B氏の格調高い文章も捨てがたいですね。
B氏の格調高い文章はお手本として、多くのコラムニストにとってバイブルになるという趣旨だと理解しました。ところが、最近になってB氏を批判する人が多いことに気がつきました。10年前には「お手本」だったのが、今ではそうではないのです。確かに文章や話し方は時代とともに変わりますから、当然といえば当然のことなのでしょう。
経済学者の野口悠紀雄が、「さらなる」は公文書では用いるべきではないと主張しています。法学者の星野英一は、「すべき」は文法上間違っているので公文書には不適切だと主張します。いずれも正しい指摘です。公文書には正確な文法表現を用いるべきだと私も思います。しかし、現実には「さらなる」も「すべき」も、一般的に使用されています。
小説家、丸谷才一の『文章読本』(中央公論社)には、次のような記述があります。
名文であるか否かは何によって分れるのか。有名なのが名文か。さうではない。君が読んで感心すればそれが名文である。たとへどのやうに世評が高く、文学史で褒められてゐようと、教科書に載つてゐようと、君が詰らぬと思ったものは駄文にすぎない。
丸谷は、「決めるのは読者自身」と明言しています。さらに、文章を見極める視点を持つことを推奨しています。では、時代の変遷に左右されない普遍的なお手本とはなんでしょうか?
名文は時代を経てもかわらない
中原淳一という、昭和に活躍した画家がいます。彼は、少女雑誌「ひまわり」の昭和22年(1947)4月号に次のような文を寄せています。
美しいものにはできるだけふれるようにしましょう。美しいものにふれることで、あなたも美しさを増しているのですから。
今の時代でも通じるようなクオリティの高いコピーだと思いませんか。時代の変遷に左右されない普遍的なお手本とは、著者の技術的探求の結晶ではないかと思います。そして、時代を経ても解釈が変わることはありません。
つまり、「フックは時代とともに変化するか?」という問いに対する回答は「イエスでもあり、ノーでもある」ということです。最も大切なことは、時代の空気に臨機応変に対応することではないかと思います。
あなたも、自分の大切な人に文章を書いてみませんか?
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