ソフトボール「13年越し連覇」つないだ陰の勲功は、ビックカメラと高崎市長
名門チーム存続危機を救った- ソフトボール13年越しの連覇。五輪から除外期間には名門の存続危機も
- 上野らのチームが親会社リストラで存続困難。市長仲立ちでビックカメラ受け入れ
- 受け入れ時点では五輪復帰も未定での決断は見事。選手たちも最高の形で応える
東京オリンピックのソフトボール決勝は27日、日本が2-0でアメリカを破り、北京大会から13年越しの連覇を達成した。ソフトボールは野球とともに北京を最後に除外されていたが、東京大会で追加種目に入る形で限定復活した。北京で大車輪の活躍を見せた上野由岐子も39歳となり、時の流れを感じた日本国民も多かったが、ソフトボールという競技にとり、13年という「長い冬」の時代を支えた存在があったことを忘れてはなるまい。
今回、その上野をはじめ、日本代表に最多の7人を送り込んだのがビックカメラ高崎だ。北京大会の時点ではこのチームは存在しなかった。いや、正確にいうと、当時の名称は「ルネサス高崎」。この名前で覚えている人も多かろう。1981年に誕生した時は日立高崎工場のソフトボール部。その後、日立などが半導体事業を分社したルネサステクノロジの所属となり、北京大会後にはルネサスがNECの子会社と合併したことで、チーム名も社名に合わせて「ルネサスエレクトロニクス高崎」に変更した。
しかしルネサスは携帯市場でガラケー向けの部品製造に注力していたため、スマホ時代に乗り遅れ業績が著しく悪化。官民ファンド「産業革新機構」による1500億円を投入し、実質的な国有化となったため、徹底的なリストラを展開。そのあおりでルネサスがソフトボール部を維持するのが困難になった。
関係者がチームの引受先を探す中で、地元・高崎市の富岡賢治市長に相談した。のちに富岡市長が記者会見で述べた話では、「高崎市はもとより、群馬県の『宝』ともいうべきチーム。何とか高崎市に残すことはできないか」と引受先として、ビックカメラに白羽の矢が立った。いまでこそ全国区の家電量販店の同社だが、1968年に高崎市内で創業者の新井隆司会長が写真現像所をはじめたのが原点という「ゆかり」があった。ビックカメラ側の決断は「極めて迅速」(富岡市長)だったという。こうして2014年11月、翌年から「ビックカメラ女子ソフトボール高崎」として再スタートを切ることを発表した。

目を引くのは、新チームの記者会見で同社の宮嶋宏幸社長(当時)が「オリンピックのあるなしに関係なく、この話を受けさせていただきました」と述べていたことだ。この時点で東京でのオリンピック開催は決まっていたものの、ソフトボール復帰の目処は全く立っていない。会社の業績は当時から堅調に伸びていたとはいえ、億単位であろう維持費を支えるのは宣伝の投資対効果を考えても微妙だったはずで、創業地への地域貢献、CSR的な意味であっても、よくぞ決断したと言える。このあたりは筆頭株主でもある新井氏のオーナー経営者の強みが生かされたのだろう。
いずれにせよ、ビックカメラが受け入れを決断しなければ、チームの存続は危うかったかもしれない。他に手を挙げるところがあったとしても、富岡市長が懸念したように高崎以外の地に移転したかもしれない。上野ら日本代表の主力選手たちは競技を続けられるかあやうくなりかけた窮地を救われた。そして選手たちも支えてくれた会社や、富岡市長ら地元関係者の熱意に最高のかたちで応えてみせた。
しかし本当の試練はこれからであり、しかも先が長い。ソフトボールは3年後のパリ大会で野球とともに再び除外される。北京で外されたのはオリンピックの肥大化批判を受けて、競技が盛んな国が日本やアメリカなどに限られていたことが理由だった。今後の復帰も容易ではないのは確かだが、関係者は手をこまねいてはいない。
来年春には新リーグ「JDリーグ」を発足させ、「現在の日本リーグ1部12チームと同2部4チームが参加し、計16チームが東西に分かれて戦う」(日刊スポーツ)方式により、地域密着を図る。当然ビックカメラやトヨタ自動車などの企業支援は欠かせない。コロナ不況で企業スポーツは再び試練の時期を迎えているが、オリンピックでの金メダルというブランド力をテコに活路をひらくように期待したい。
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