“ヒグマ変異型”朝日脳の迷走:新人記者逮捕、3つの謎と4つの疑問

幼稚な行動が招く新聞記者の「駆除」
朝日新聞創業家
  • 北海道新聞の新人女性記者の逮捕。“ヒグマ変異型”朝日脳の迷走として考察
  • なぜ新人記者に「危険」な取材をさせたか…事件を巡る4つの謎を提起
  • 公的施設なら侵入してよいか?筆者から関係者に3つの問題を公開質問

こんなことを書くと叱られるかもしれませんが、私は秋の北海道がどうしても好きになれません。景色や食べ物は素晴らしいのですが、しばしば現れる灰色の空と低い雲底には、心底うんざりします。その日私は、灰色の雲の中を揺れ続けて函館に着陸した飛行機から飛び出し、携帯電話の電源を入れました。朝から何回もかけている番号に連絡すると、「駄目でした」と、早朝に父の危篤を告げてくれたのと同じ声がしました。間に合わなかったということです。

タクシーの中で片っ端から家族親族に連絡したあと、朝日新聞の社長秘書にも一報を入れました。病院では生前父が親しくしていた葬儀社の社長が迎えてくれました。医師であった父が葬儀屋さんと親しかったというのも妙な話ですが、このときは大変心強かったのを覚えています。

通夜葬儀の段取りを片付けた後、マンションに戻り、何人かの弔問客を迎えていると、北海道新聞社(以下「道新」)の函館支局長がお参りに来てくれました。「社主の甥の村山です」と自己紹介をすると、「あ、それで朝日に抜かれたんだ」と突然おっしゃいました。どうやら、自分が知る前に朝日の夕刊に訃報が載っていたが、かなり悔しかったご様子。慶弔記事が地方紙・ブロック紙の最重要コンテンツだとは聞いていましたが、支局管内の出来事を全国紙に「抜かれ」たのは我慢ならなかったようです。

北海道新聞東京支社(東京・港区=SAKISIRU編集部撮影)

旭川医大盗聴事件を巡る3つの謎

さて、「道新」といえば、信じられないような事件がおこりました。オリンピックの喧騒で世間の記憶もうすらぎはじめていますが、旭川医大の盗聴事件です。詳細は、道新の報告書や各種報道を見ていただくとして、簡単に言えば、「道新の新米女性記者が旭川医大の会議を盗聴しているところを見つかり警察に突き出された」という事件です。本件、ヒグマ変異型朝日脳(*)事例としておきましょう。

(*……自分達のやることは、どんなに非常識かつ違法でも、正義であり他の全ての権利に優先する公共性があり万人が支持し絶対にうまくいくと、根拠も無くいつも思っている思考状態=太字はヒグマ変異で強毒化した部分)

初期の報道では、会議の場所を探していた記者がいきなり拘束されたような話でしたから、メディア関係者からはこの常人逮捕に抗議の声が上がりました。けれども、私は当初から、「この記者さん他に何かしでかしてるな」と睨んでおり、その話を前回の記事に書こうと思っていたのですが、朝日に抜かれたのでやめました。

さて、この事件、いまだに謎が残っているようなので、私なりに推理してみましょう。

1.なぜ、「危険」な取材を、あまり聡明とは思えない新米記者にやらせたのか

道新自身は、新人教育だと言っておりますが、そんな簡単な話ではないと思います。
現場は看護学科の校舎です。入学者60名中女子が57名という学科で、20歳前後の女性が歩いていても全く目立ちません。記者は医大の取材は初めてで、顔を知られている可能性もなく、潜入取材にはもってこいです。だから記者証を持参しながら着用していなかったのでしょう。盗聴はともかく、不法侵入に関しては道新はかなり入念な計画を立てていたように思います。

ちなみに、「(医大の立ち入り禁止通告について)記者に連絡できなかった」というのも嘘でしょう。このあと大活躍する彼女の携帯電話にメールをすればいいじゃないですか。しかも、立ち入り禁止区域は校舎内だけではなくキャンパス全体です。通告を無視して校舎の出口に張り付いてる記者が、同僚にその通告を、わざわざ伝達するはずがありません。

2.旭川医大はなぜ、常人逮捕という非常手段に出たのか。

報道によれば、「扉の隙間から携帯を差し込んで録音をしていた」とのことです。長引きそうな内容の会議の間、だれも廊下を通らないと考えたのでしょうか。案の定、職員に見とがめられ、所属や目的を問いただされても答えず、逃げようと後ずさりしたとのことでした。

一部の報道によれば、「会議の場所を探していた」と答えたそうですが(探したらだめでしょう)、お手元の携帯電話は何なんでしょう。盗聴の練習でもしていたのでしょうか。かなり本格的な不審者です。

大学の付属病院などには、さまざまな方が来られます。一般論ですが、ある種の若い女性患者が、医師に一方的な好意や敵意を抱いて、ストーカーじみた行動に出ることもときどきあります。正体不明の女性の幼稚な盗聴方法と常軌を逸した応答を考えれば、こちらの嫌疑も捨てきれないでしょう。自傷他害の危惧もあり、とても野放しにはできません。

このとき、「(所属の開示は)上司に確認しなければならない」などと言ったようです。所属を隠したままどうやって連絡をするのでしょうか。たとえば……

「もしもし、デスクですか。お疲れ様です。ところで、私常人逮捕されちゃったみたいなんですが、道新の記者と名乗っていいですか。だめ?わかりました…(プチッ)…上司の許可がないから黙秘します。」

真面目にこんなことを想定しているのなら、ステージ4の不審者です。凶器を持っているかもしれません。突然、暴れ出すかもしれません。だからと言って、猟友会出動、駆除完了、解剖実習、ジンギスカン、という訳にも行きますまい。結局、警察に突き出すより仕方がないわけです。

学内で奇妙な言動を繰り返した身元不明者に、職員が普通の対応をしただけの話です。
医大の不祥事も取材の自由も関係ありません。

3. 記者はなぜ48時間も拘束されたか

警官到着後、記者はやっと正体を現したそうです。「飼い主」がわかれば差し迫った危険はなく、「駆除」など手荒なことをする必要はありません。議論は、管理責任に移ります。家宅侵入か警備な威力業務妨害(盗聴)がせいぜいという事件ですから、さっさと釈放するのが普通です。警察だって道内最大の新聞社と事を荒立てたくないでしょう。

しかし道新がまともに対応しなかったら構図が変わってきます。特に、誰が不法侵入や盗聴の指示をしたのかが分からないと、刑事事件になったときの共同正犯(の容疑者)が特定できず、矛を収める訳にはいかなくなるのでしょう。実際、道新はいまだに、指示者も責任者もあいまいにしたままです。実行犯が逮捕後に48時間も拘束されたのは仕方ないのかもしれません。

事件の舞台となった旭川医大(公式サイトより)

公的施設なら侵入してよいか?4つの疑問

私なりの推理を並べましたが、逆に私から関係者に質問したいことがあります。

1. 各紙は、この記者の行動をどう評価するのでしょうか?

不法侵入の問題は一旦置くとしても、盗聴は明確な犯罪です。「いきすぎ」「勇み足」などの生ぬるい批判で済まさず、しっかりと糾弾し、まともな新聞記者とは別物であると明言するのかどうかです。また、道新は厳正な処分をするのでしょうか。言い換えれば、「自分たちは朝日脳かもしれないが、ヒグマ転移株ではないぞ」と宣言できるのかどうかということです。

2. 公的施設であることは、不法侵入や盗撮を正当化する根拠になるのでしょうか?

国立大学が、主として税金で運営されていることを根拠に、キャンパス内は常に自由に取材活動ができるとする意見が散見されますが、同じ主張を皇居や警視庁本部でもするつもりなのでしょうか。国公立の小中学校や私立大学で同様の問題がおきた場合はどうしますか。

また、公器であることを日常的に主張し、再販制度や日刊新聞紙法で保護された企業である新聞社に関しても同様なのでしょうね。

3. 大学当局の退去要請を無視するのは、大学自治の蹂躙ではありませんか?

通常、多くの新聞メディアは大学自治を重視し、捜査令状を持たない私服警察官の入構を阻止することさえ支持することがありますが、自分たちは別なのでしょうか。取材の自由と大学自治がぶつかった場合、どちらが尊重されるかの判断は、法治国家においては、最終的には司法の場で行われるべきだと思われるので
すがいかがでしょうか。

4. こうした方法で会議を取材することは、かえって公益を損なうことになりませんか。

会議の内容を盗聴したり、前後に参加者をしつこく追いかけ回したりすることが、少なくとも会議の質を向上させる可能性が皆無であります。北海道全体の医療体制に極めて大きな影響のある重要な議論の足を引っ張ることによる公益の損失を、取り返すだけの価値のある記事を書くことなど、そもそも可能なのでしょうか。

ただの朝日脳は、批判や嘲笑で対応できるものなのでしょうが、ヒグマ変異株の場合、「駆除」せざるを得ません。ここで言う「駆除」とは、相手の立場や主張を考慮することよりも、その危険を除去することを止むを得ず優先した行動で、今回の常人逮捕などはその典型です。新人記者の幼稚で軽率な行動が、ジャーナリストが「駆除」される時代への扉を、開いてしまったのではないでしょうか。

 

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