小学校受験のお金を祖父母に援助されたら贈与税はかかるの?
帰省シーズンは実家に相談するチャンス !?- お受験のお金は平均的な就業収入で賄うのは難しい。祖父母の援助が7割のデータも
- 年間110万円までは贈与税は非課税。110万円超でも必要な都度なら非課税も
- 個別の状況によって、贈与税の対象か判断も。専門家に相談して慎重に検討を
年間に100万円とも200万円ともいわれる、小学校のお受験にかかるお金。高額なお金を夫婦だけで用意するのは簡単なことではありません。そんなときには祖父母を頼りにするケースがあります。孫のお受験のために、資金援助を買って出る祖父母も少なくないようです。ただ、お金を出してもらうと贈与税が心配かもしれません。お受験のお金を支援してもらうと贈与税がかかるのか?実際に子どもの小学校受験を経験したファイナンシャル・プランナーが、「お受験」のお金と贈与税について解説します。

祖父母のお受験支援7割も !?
幼児教室の授業料、模擬試験代、夏期講習や直前講習の受講料、お受験グッズなど、小学校受験にはさまざまなお金がかかります。対策を始めてから合格するまでの間に200万円、300万円がかかるのが決して珍しくない勝負には、親子の努力とともに資金力が欠かせません。
子育てにかかるお金は親の家計収入から工面するのが標準的ですが、小学校受験のお金は平均的な就業収入だけでまかなうのはきついといわざるを得ません。そこで一端をになうのが祖父母というケースもあるようです。筆者が調べた限り、小学校受験の費用負担に絞った調査データは見当たりませんが、経済誌の記事(※1)によると、生徒の7割が祖父母からの支援を受けている大手幼児教室もあるようです。少なからぬ子どもたちが、おじいちゃん・おばあちゃんの援助でお受験に挑んでいることを伺わせます。
一方で、お受験に限らず資金援助全体では、50代~80代の8割超が孫へ支援したことがあるというデータがあります(※2)。そして、約16%の人は教育のために援助をしたといいます。細かな使い道は学用品の購入や学校の入学金、授業料などが中心で、小学校受験に限ったものではありませんが、習い事や塾の月謝のために援助した人もそれぞれ2割ほどいるようです。お受験の幼児教室の受講料を祖父母が負担するケースも珍しくないかもしれません。
注目すべきなのが、援助したタイミングです。孫が小学校に入学するときと、保育園・幼稚園に入園するときに援助した人が5割を超えており、中学以降に比べて圧倒的に多いという調査結果もあるのです(※2)。一般的に、子どもが成長する過程で特に教育費がかかるのは大学など高等教育の時期ですが、祖父母が資金援助をするのは孫が幼い頃の方が多いようです。
「年間110万円まで」非課税
資金援助というと、年間110万円までは贈与税がかからないことがよく知られています。祖父母が孫の小学校受験のお金を支援する場合も、年間110万円までに抑えている人もいるかもしれません。
贈与税は、一般的には1年間に110万円を超えて財産をもらったときに、超えた金額に対してかかります。これを「暦年贈与」といいます。非課税になるのは1人の人が1年間にもらった財産が110万円までです。たとえば孫一人が贈与を受ける場合、祖父1人から支援してもらうのでも、祖父母2人から支援してもらうのでも、孫が受け取る金額の合計が年間110万円までが非課税になります。非課税の範囲なら、税の申告手続きは不要です(※3)。
もしそれを超えた金額を渡すと、暦年贈与の原則でみると贈与税の課税対象になります。超えた金額200万円までなら、超えた部分に10%の税金がかかります。それ以上の金額になると、孫の年齢や贈与財産の金額などに応じて税率や計算式が異なります。財産を受け取った翌年2月~3月の確定申告の時期に申告、納税することになっています(※3)。

「年間110万円以上」でも、かからない場合
実は、教育費については暦年贈与とは関係なく、そもそも贈与税がかからないことがあります。贈与税は親子や夫婦間などで、生活や教育に必要な財産を譲り渡す場合にはかからないことになっているためです。祖父母も、税務上は孫の生活や教育を支える扶養義務者とみなされて、通常の日常生活に必要な範囲であれば、お金を贈与しても贈与税はかからないと判断されるようです。
ですから、学費や教材費、文具費はもちろん、幼児教室の受講料や習い事の月謝なども、孫にかかる費用を祖父母が負担しても贈与税の課税対象にはならないと考えられます。
ただし、贈与税の対象外とされるのは生活に必要な金額を、必要な都度に贈与した場合に限ります。このためこれを「都度贈与」と呼ぶことがあります。たとえば幼児教室の受講料を祖父母が負担する場合に、教室から請求されるタイミングでお金を渡したり、教室に祖父母が直接払い込むなら、必要な都度に贈与したことになります。しかし、幼稚園児の頃に将来の大学進学のためのお金を先に贈与するような場合は、都度贈与にはなりません。また、贈与したお金を使わずに預金したり、株式や投資信託の購入にあてて運用したりすると、直接に教育のためのお金を贈与したことにならず、贈与税の課税対象になります。
都度贈与には、上限額はありません。教育上、本当に必要で、必要なタイミングであれば、いくら贈与しても全額が非課税です。私立小学校を目指しているなどで高額なお金を支援してもらうときにも、都度贈与なら課税の心配はありません(※4)。
高額贈与は専門家に相談、慎重に
もし、必要なときにその都度贈与するのではなくまとめてお金を渡したい、暦年贈与の110万円を超えて贈与したいときには、これらのしくみとは別に、教育資金の一括贈与に関する非課税の特例という制度もあります。これについては次回に改めて解説します。
実際には、税務署や税理士など、税の専門家に相談してから贈与をしてもらうことをおすすめします。個別の状況や受け取ったお金の細かな使い道によって、贈与税の対象になるかどうかの判断がわかれることがありますし、教育費として贈与したことがわかる証拠をしっかり残しておくうえでも、専門家の助言があると安心です。また、将来に相続が発生することを考慮すると、無理に非課税にしようとするよりも贈与税の申告・納税をしておく、または相続時精算課税制度という非課税制度を適用する方が有利になるケースもあります。
夏休みシーズンは、帰省などで子どもがおじいちゃん・おばあちゃんに会うことが多いでしょう。年長児の子どもにとっては、受験前にゆっくりできる貴重なひとときにもなるはずです。同時に受験生の親にとっては、目先のお受験のお金のこと、そして親の老後やその先のことについても、家族で話し合うきっかけになるかもしれません。
【参考文献】
※1. リソー教育グループニュースリリース:2013年3月11日
※2 一般社団法人 信託協会「教育資金贈与信託に関する調査(2020)」
※3 国税庁HP「No.4402 贈与税がかかる場合」
※4 国税庁HP「No.4405 贈与税がかからない場合」
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