無印良品が仕掛ける団地再生:都市の限界集落「団地」は復活するか

将来の建替えなどの課題も
2021年08月03日 06:00
住宅・不動産ライター/宅地建物取引士
  • 無印良品とURがタッグを組んでの団地リノベーション事業が注目を集める
  • 建物の改装だけでなく、生活圏の活性化など「団地再生」にも取り組む
  • 設備が古いなどのイメージ一新に期待も、団地再生がもともと抱える課題も

昭和30年代から40年代にかけて全国を席巻した「団地ブーム」。当時の先進的な住宅設備や居住スタイルは地方から都市に移り住む人たちにとって憧れの的だった。だが、当時大人気だった団地も、現在では建物や設備の老朽化、住民の高齢化、少子化による入居者の減少など抱えている問題は多い。

そのような状況の中、無印良品(以下無印)の住宅事業部門を担う株式会社MUJI HOUSE(東京都豊島区)が、団地(団地以外のマンション含む)の住戸を買取り、リノベーションして再販売する事業を2021年7月からスタートさせ、各方面から注目を集めている。現在、無印が販売中のリノベーション済み住戸は東京・神奈川で2戸(7/30現在)のみだが、今後は物件数を大幅に増やしていく予定だという。

MUJI HOUSEが7月に発表した港南台めじろ団地(横浜市)の改装モデル(引用・プレスリリース 7/6)

ただ、はっきり言ってしまうと無印の新事業は既存のビジネスモデルである「中古マンションの買取り再販」とあまり変わらない。もちろん、築古団地の市場活性化という面では一定の効果は見込める。だが、この新事業が都市の限界集落ともいわれる築古団地が抱える諸問題を解決し、団地再生を導くとまではいえないだろう。

一方で、無印はこの新事業以外にもUR都市機構(以下UR)と連携し、団地再生に関するさまざまな取り組みを行っている。

実は、リノベーション再販という既存のビジネスモデルを踏襲した新事業より、無印がこれまで取り組んできた団地再生事業にこそ注目すべきなのである。

無印の「団地再生」とは?

無印が手がける今回の新事業の報道を受けて、「あの無印良品が住宅事業も始めたの?」と驚いた人も少なくないだろう。しかし、無印が団地のリノベーションを手がけるのは今回の新事業が初めてではない。

無印とURは、2012年度に関西で「MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト」を開始し、2015年度には関東圏から名古屋圏、九州圏まで全国でリノベーション住宅(賃貸)を供給してきた。この協業プロジェクトで供給されたリノベーション住宅は2020年度末で、約1000戸にのぼり、これらの住宅はユーザーからの人気も高い。URのホームページ上では、無印が手がけたリノベーション済みの団地を探すことができるが、各団地で「空室0」の表示が多く並んでいることからも無印リノベーション住宅の人気の高さがうかがえる。

北本団地(埼玉・北本市)の「ふすまで可変する多目的スペース」(引用・同 1/8)
保津川団地(京都府亀岡市)の「持出しキッチンのある広いLDK」(引用・同 1/8)

両社は今年3月に「MUJI×URに関する連携協定」を結び、さらに協業の幅を広げ、団地の住戸だけでなく団地外観や屋外広場、商店街区などの共用部分にもリノベーションの対象を広げている。

また、団地の地域コミュニティの形成にも連携して取り組み、団地を拠点とした地域の生活圏を活性化していくという。

つまり、無印良品は単に団地のリノベーションを手がける住宅・建築事業者から、URと共同して団地再生に取り組む民間事業者となっているのである。

リノベーションで団地は再生するか

URがこれまで供給した団地は大規模で、立地が良いものも多い。敷地の広さ、緑の多さもURの団地の魅力だ。また、大型団地の周辺には学校施設や商業施設があり、生活便も悪くない。URと無印の連携によって団地全体のリノベーションが進み、「間取りや建物デザインが時代ニーズに合わない、設備が古い」などの古い団地のイメージが一新されれば、本来、生活環境に恵まれている団地の人気も高まっていくだろう。

「港南台」改装モデルルームから望む緑豊かな眺望(引用・プレスリリース 7/6)

だが、団地再生事業については難しい課題も多い。昭和30年代、40年代に造られた団地は老朽化が進み、将来の建替え問題は避けて通れない。いくら万全のリノベーションを施しても、建物の躯体(建物の構造体)が経年劣化に耐えられなくなったら取り壊すしかないが、取り壊しや建て替えにはハードルが高い「住民の合意形成」が欠かせない。

さらに、築年数が古い分譲タイプの団地については、住宅ローンの問題もつきまとう。金融機関によって融資基準は異なるが、一般的に住宅ローンの返済期間は建物の築年数(区分所有マンションの場合)で制限している金融機関が多い。例えば某地銀の場合、築45年までが返済期間の上限であり、築30年の物件を購入しようとすると住宅ローンは15年程しか組めない。築年数によっては民間金融機関の住宅ローンが組めないケースも少なくない。

URがこれまでに供給してきた団地の総数は883,038戸に及ぶ(分譲・賃貸の合計総数。取壊し住戸も含む)。なかには立地条件などによって住宅としての需要がない団地も有る。住宅としての需要がない団地はそもそもリノベーションをする意味がないので、住居用以外の利活用方法を模索することになるだろう。

リノベーションがすべての団地を経済的、機能的に再生するわけではないが、無印とURの団地再生プロジェクトが現在まで一定の成果を上げていることは確かだ。築古団地の行く末は、賃貸・分譲にかかわらず人口減少によってスラム化が懸念される民間マンションの将来像をも示している。URと無印が多様な課題を抱える団地再生にどのように取り組んでいくのか、今後も注目していきたい。

 

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