閉会式で日の丸掲げ…東京オリンピックが示した「日本の沖縄」

大会が残した“レガシー”に
2021年08月09日 06:30
SAKISIRU編集長
  • オリンピック閉会式で旗手を務めた空手の喜友名諒選手。沖縄初の金が持つ意味
  • 沖縄勢は喜友名選手を含め3人が一挙にメダリストの歴史的な快挙
  • 大会を通じて47都道府県で確認しあった「日本の沖縄」の紐帯もレガシーに

東京オリンピックが8日閉幕した。世界的なコロナ禍を頂点にした数々の試練を乗り越え、8年がかりの国家的プロジェクトをやり切ったことについてまずは大会関係者の皆様に心より敬意を表したい。

競技結果は、金27、銀14、銅17の計58と史上最多。特に金の数はアテネ大会で最高だった16個を大きく上回り、開催国としてのプレゼンスを示すことができた。今大会限定の復活となった野球やソフトボールがダブルで金に輝いたことも目を引いたが、新競技の空手の形で、沖縄出身者としての初の金を獲得した喜友名諒選手の快挙が、予想以上に大きな意味を歴史的に残すような予感がしてならない。

閉会式で日本の騎手を務めた喜友名諒選手(写真:ロイター/アフロ)

そのシンボリックなシーンが訪れたのがまさに昨晩の閉会式だった。各国国旗を掲げる騎手が入場するシーンで、喜友名選手が五輪発祥地のギリシア選手とともに日の丸を誇らしげに掲げて入場したのだ。オリンピック憲章により、いかなる政治的な宣伝活動が禁止されていることからすると、次のような見立ては慎むべきかもしれないが、米軍基地問題をきっかけに日本国内における沖縄県の存在が四半世紀余り揺さぶられてきたのも、政治的な現実だ。

中国が海洋進出を強め、「尖閣」にその影を落とす情勢にあって、一部の人たちが「沖縄独立論」を掲げ、46都道府県と沖縄県の「紐帯」にひびを入れようとする。また逆に46都道府県側が、米軍の基地負担を沖縄県民に押し付ける中で、ややもすれば差別的な言動をして沖縄の人たちの心象を無用に害することも散見される。特にこの7年ほど、国政と沖縄県政が対立的な関係が続いてきたことで、政治勢力もメディアの論調も左右に分かれ、ときに批判の度を超えて非難の応酬となり、結果的に分断を画策する人たちの利益になってはいなかっただろうか。

繰り返すが、オリンピックを政治的文脈において声高に論じるのは健全なことではないし、憲章の理念にも反しよう。しかし「オリンピック休戦」という言葉もあるように、日頃の政治的な対立を超越し、立ち止まって思索を深める時間を持つこともまた実に重要であり、オリンピックの存在があるが故だ。

振り返れば、東京大会では喜友名選手(沖縄市出身)が沖縄初の金に輝いたことで、金メダリストが47都道府県全てから送り出されることになった。そしてレスリングのグレコローマンスタイル77kg級で、屋比久翔平選手(名護市出身)が銅メダルを獲得。また野球で平良海馬投手(西武ライオンズ)が、喜友名選手に続いて県2人目の金に。石垣市出身の平良投手の金獲得は、八重山地域にとっても初の金となった。

来年で本土復帰50年。沖縄とオリンピックの歴史を振り返ると、まさに復帰した1972年ミュンヘン大会に、陸上三段跳びの具志堅興清選手とボクシングライトフライ級の新垣吉光選手が出場してから挑戦の歴史がスタート。1992年バルセロナ大会の体操男子団体で、知念孝選手が銅を獲得し、沖縄にメダルを初めて持ち帰ったが、東京大会では3人もメダリストを輩出した。金の2人が表彰台の頂点に立ち、国旗の掲揚と国歌の斉唱する瞬間を、沖縄県民と46都道府県民が共有したことの意味は決して小さくない。

閉会式では沖縄の伝統芸能のエイサーが披露される動画も流れた。昨晩のSNSを見ても指摘している人が意外に多くなかったのだが、東京オリンピックで47都道府県で確認しあった「日本の沖縄」の紐帯もまた大会後のレガシーになったと感じさせた。まさに多様性と調和を掲げた今大会の意義を体現するものであった。

 

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