東京オリパラのメダルで世界が注目!日本の「都市鉱山」(前篇)

坂田薫『コテコテ文系も楽しく学ぼう!化学教室』第10回
2021年08月15日 06:00
化学講師
  • BBCも驚いた東京オリンピックのメダル素材の取れた日本の“都市鉱山”とは?
  • 使っていないPCやスマホ、デジカメ…誰の家でも一つはある都市鉱山
  • 金やレアメタルなどの希少金属の回収・リサイクルで都市鉱山は重要

みなさんは、東京オリンピックをどのように楽しまれたでしょうか。開催直前まで続いたトラブル、緊急事態宣言下で無観客での開催、そして開催中には感染者が一気に増加するなど、本来のオリンピックのようには楽しめなかったというのが本音でしょうか。しかし、今回のオリンピック。ネガティブなことばかりではありません。

選手達の胸に輝くメダルは全て、日本にある“世界屈指の鉱山”で採取された金属で作られたもので、BBCも「驚きの素材」と紹介しています。その鉱山の名は「都市鉱山」。この巨大な鉱山は、わたしたちに大きな課題を与えました。その課題を、わたしたちはどのように乗り越えていくのでしょうか。(今回は前編として「都市鉱山とその課題」をお伝えします。)

競泳200mと400mで2冠の大橋悠依(写真:杉本哲大/アフロ)

日本が世界有数の資源国 !?

都市鉱山とは「地上に蓄積された工業製品を資源とみなしたもの」で、1988年に東北大学の南條道夫教授らによって提唱されました。例えば、破棄される家電製品の中に存在するレアメタルなどが都市鉱山に相当します。今、ハッとしましたか?そうです。みなさんのお家にも都市鉱山の一部が眠っているはず。使っていないPCやスマホ、デジカメ。きっと、1台はありますよね。

この都市鉱山。2008年に独立行政法人物質・材料研究機構により「わが国の都市鉱山は世界有数の資源国に匹敵」と発表され、一気に注目を浴びることに。その詳細は「世界の現有埋蔵量に対し、日本の都市鉱山に蓄積されている量」で試算されており、金が約16%で世界第1位。銀が約22%、スズ約11%、タンタル約10%、インジウム約16%など、驚くべきものでした。なんと、日本の国内蓄積だけでも、多くの金属で世界の数年分の消費に相当する量があるのだとか。

偉大な都市鉱山

そうはいっても「PCやスマホに使われている貴金属やレアメタルなんて、たいした量じゃないだろう」と思ってしまいますよね。まったくその通りで、環境省のデータによると、スマホ1台から採取できる金はわずか0.05g!かなり少ないですよね。では、見方を変えてみましょう。例えば、金鉱石1トンから採取できる金は約3g。それに対して、スマホ1トン(1台180gとして約5600台分)から採取できる金は0.05g×5600=280g !! 金鉱石の100倍近い量の金がスマホから採取できるのです。さらに、経産省の調査によると家庭に眠っている、使われていないスマホ(携帯電話)はなんと2億台以上。ということは、家庭に眠っているスマホだけで、採取できる金が0.05g×2億=10トン !!   都市鉱山の偉大さがおわかりいただけたでしょうか。

実はお宝の山?(baranozdemir /iStock)

限界が近い鉱物資源の埋蔵量

ここで、改めて「金」という金属に注目してみましょう。金というと、ジュエリー類への利用が真っ先に浮かぶと思いますが、「電気を通しやすい」「加工しやすい」「さびにくい」といった性質から、PCやスマホなど多くの精密工業製品にとって、なくてはならない金属です。しかし、人類は金を人工的に作ることができないため、自然界にあるものを採取して使うしかありません。

では、あとどのくらいの金が、自然界に残っているのでしょうか。World Gold Councilによると、今まで地球上で採掘された金は約19万トン。これは、国際基準プール約4杯分に相当します。そして残された埋蔵量は約5万トン。これはプール1杯分。現在、年間約3000トンが採掘されているため、枯渇するまでざっくり十数年といったところでしょうか。

こうして数値でみると、危機感を感じますよね。しかし、悪い話ばかりではありません。まず「埋蔵量」とは「自然界にある金の総量のうち、現代の技術や資本で採掘できる量」のことです。すなわち、今の技術では採掘できない金や、技術的には採掘可能でもコストが見合っていないものは埋蔵量に含まれていないのです。例えば、海水にも非常に薄い濃度で金が含まれています。海水は量が膨大であるため、もし海水中の金が採取可能になれば、一気に埋蔵量は増えるのです。

また、金は石油と違って「使ったら終わり」ではなく、かつ「最もさびにくい貴金属」であるため、採掘したものは必ず何かしらの形で残ります。すなわち、回収しリサイクルすることで枯渇を防ぐことが可能。現在、世界全体で年間約1500トンの金がリサイクルによってまかなわれていますが、この数値はもっと増やすことができるのです。

都市鉱山が私たちに与えた課題

わたしたちの課題が見えてきましたね。その課題とは「都市鉱山から、金をはじめとする貴金属やレアメタルを、いかに回収しリサイクルするか」です。特に日本は、世界中から資源を集めて発達してきました。その資源は今、都市鉱山として眠っているのです。例えば金だと、蓄積されている量は、なんと約6800トン!これらをきちんとリサイクルできれば、日本は確実に「世界有数の資源国」になれるのです。しかし、この課題は思った以上に困難なものでした。

(後編では、都市鉱山に関する最先端の研究をお伝えします。記事はこちら

 

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