インフレは必ずやって来る…その足音は「国際商品価格」
平成生まれが知らない「世界」- 30歳以下が知らないインフレ。国際商品価格の動きから足音を感じる
- 海上輸送コストの上昇と国際商品市場で暴れている投機マネーが背景
- 木材価格を例にインフレを「一過性」とするFRBパウエル議長に疑問
天災は忘れたころにやって来るというが、インフレもここ30年近く経験していないので忘れそうになる。特に30歳以下の若い人たちはインフレを経験したことがない。古い歌を持ち出して恐縮だが70年代に「戦争を知らない子供たち」というフォークソングが流行ったが、それをもじれば「インフレを知らない子供たち」なので、インフレの怖さが実感できていないかもしれない。
価格を上げる2つの要因
しかし、インフレは必ずやって来る。その足音が国際商品価格の動きから聞き取れる。この春以来、国内メーカー各社から食用油、小麦粉、コーヒー、木材などの値上げや値上げ予定の知らせが相次いでいる。値上げ幅は2%から大きいものでは20%にもなる。その理由の大半が輸入原材料価格や包装資材価格の高騰だ。
国際商品先物市場の価格動向を見てみると、いずれも昨年3~5月ごろにコロナ禍の中で価格が底を打った後、急に右肩上がりとなって上昇している。コロナで経済がショックを受けて落ち込んでいた昨年の春先と比べるのが適当ではないかもしれないので、一昨年12月初めと比べてみても、小麦は約3割、食用油の原料の一つの大豆は約5割、コーヒーも約5割、木材は今年5月のピークよりかなり下がったものの3割以上の高値が続いている。
これらの値上がりの理由は天候や需給などそれぞれ違ったものもあるが、共通しているのは、船やコンテナの不足による海上輸送コストの上昇と国際商品市場で暴れている投機マネーだ。商品先物市場でも株式市場と同様にヘッジファンドが活発に動き回っている。また、専門家の意見では海上輸送のひっ迫は来年までしばらく解消しそうにない。
輸入品の値上がりは冒頭に述べたように国内物価に徐々に影響して来るので、現在日本の消費者物価はまだ前年同月比で0.2%増(6月の生鮮食品を除く総合)だが、いずれもっと上昇して来るだろう。
「一過性」パウエル発言に疑義
一方、アメリカを見てみると、アメリカのCPI(消費者物価指数)は前年同月比で4月4.2%、5月5.0%、6月5.4%、7月5.4%とFRB(連邦準備制度理事会)が中長期の平均的な目標としている2%を大きく超えている。
これも、巨額の財政支出と超金融緩和の影響が出てきているのだろうが、FRBのパウエル議長は、7月23日のFOMC(連邦公開市場委員会)後の記者会見で、現在の物価上昇は「一過性」というこれまでの見解を繰り返し、金融政策の方向転換には慎重な姿勢を崩さなかった。そしてその際にパウエル議長は「一過性」の上昇の例として木材価格を挙げた。
アメリカでは昨年秋ごろ始まった木材価格の上昇は今年3月ごろから速度を増し、5月には前年の5倍近い高値となったが、上旬に木材先物価格が1670.5ドル(1000ボードフィート当りの価格、Nasdaq Data資料)のピークをつけた後、一転急落して7月にはほぼ1年前の水準に戻った。パウエル議長はこれをもって「一過性」と言っているのだろうが、木材需給のひっ迫は「一過性」ではなくずっと長続きしそうだ。
木材価格を押上げたと言われる各種の要因が5月上旬を境に急になくなったわけではない。低金利を背景に旺盛な住宅購買意欲は衰えておらず、アメリカの住宅着工戸数は6月の前年比が29.1%増(前月比6.3%増)と増加が続いている。一方で製材所の新設などの能力増強には時間がかかる上に、5月ごろに高値で仕入れた木材を使用した住宅は高値で販売されている。木材先物価格も2~3年前に比べるとまだ25~30%高いレベルにとどまっている。
やはり、そろそろアメリカも日本も超緩和金融政策を転換してテーパリング(資産の買入縮小)を始めないと物価上昇に勢いがついて、インフレ抑制に後れを取ることになるかもしれない。
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