「晴海フラッグ」が人気再燃…オリンピック後の不動産市場動向は?

首都圏不動産は買い時?売り時?
2021年08月17日 06:00
住宅・不動産ライター/宅地建物取引士
  • 五輪の経済効果が望み薄の中、不動産市場の今後を占う
  • 選手村を改装する晴海フラッグが負のイメージから一転人気再燃した理由
  • オリンピック後の不動産市場は買い時か?売り時か?

開催の是非について世界中で物議を醸すという前代未聞のオリンピックが9日、無事閉会式を迎えた。

筆者は今回の開催に肯定的な立場だが、やはり残念だったのは、経済波及効果が当初試算された約32兆円という数字には遠く及ばないことだろう。オリンピック開催の随分前から一部の評論家と称する人たちが、「五輪後には不況がくる!」や、「五輪後は都心の不動産が暴落する!」などの主張を繰り広げたのは、大きな経済効果を得た五輪後に、急激な消費低下があると予想したからだ。

しかし、コロナ禍という誰も予想しえなかった事態によってそもそも世界的に経済が混乱してしまったので、それらの声もいつの間にかほとんど聞かれなくなった。一方で、経済の混乱などものともせず、首都圏を中心とした都心部での住宅需要の過熱ぶりは一向に収まる気配がない。新築住宅市場も中古住宅市場も近年で例を見ないほど需要が高まり、首都圏の多くのエリアで売物件の在庫不足に陥っている。

公益財団法人 東日本不動産流通機構が公表しているデータによると、2020年7月に44,350件あった首都圏の中古マンション(売物件)の在庫物件数が、今年の7月には34,159件にまで激減している。特筆すべきは、中古マンションの在庫物件は2019年12月から 「20か月連続」で前年同月を下回っている点だ。これだけ在庫不足が続けば需要が供給を上回ることはむしろ自然なのかもしれない。

「晴海フラッグ」再注目の理由

一昨年、オリンピックの延期が決まり、その影響をまともに受けたのは、オリンピックの選手村として利用された晴海フラッグ(HARUMI FRAG)だ。

選手村から「晴海フラッグ」へ(y-studio /iStock)

晴海フラッグとは約18haの広大な敷地に、住宅だけではなく、商業施設や保育園、小中学校、商業施設など、官民一体で都市開発を行う大規模プロジェクトの名称であり、五輪の選手村として利用後に民間活用されるという、いわば五輪のレガシーという位置づけの巨大事業だ。

東京オリンピックが1年延期となった一昨年、当時すでに販売を開始していた晴海フラッグは、分譲戸数4145戸のうち約900戸が契約済みとなっていた。選手村として使用された住戸は、使用後に大幅なリノベーションを行ってから購入者に引き渡される予定となっており、そのリノベーション工事期間は約3年を見込んでいる。

入居が契約から3年後というのもかなりレアなケースだが、オリンピックの延期により「購入者の意思に関係なく」当初の予定よりも入居がさらに1年延期されるというのだから、購入者はたまらない。当然、購入者は入居までのさまざまなライフプランの見直しを余儀なくされることになっただろう。

負の遺産「一変」した選手の投稿

当初、この件については報道が過熱し、晴海フラッグのマンションを購入した人を「被害者」と見立て、分譲主(売主)側を批判し、選手村としての利用やオリンピック開催自体を揶揄するような報道や論調が多く見られた。また、販売当初から東京オリンピックのレガシーとして人気度、注目度が高かった晴海フラッグを、まるでオリンピックの負の遺産であるかのように報じるメディアも少なくなかった。

そのような流れが明らかに変わったのは、晴海フラッグを実際に利用した海外選手たちのSNSによる「発信」だ。体操オーストラリア代表のエリザ・へメルレ選手が、自身のインスタグラムで選手村の自室で撮影した2枚の絶景ショットを「Views to remember」(覚えておくべき光景)として公開し、その見事な眺望写真は大きな反響を呼んだ。

 

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晴海ふ頭の南側に位置する晴海フラッグは3方を海に囲まれた立地で、もともと眺望の良さは「売り」のひとつだったが、実際の眺望写真が公開されたことによってその魅力が再認識された形だ。さらに、分譲価格が近隣相場に比べて割安感があるのも晴海フラッグが再注目を浴びている大きな要因となっている。晴海フラッグの最寄駅となるのは都営大江戸線の勝どき駅だが、同エリアの分譲中マンション価格が66.24㎡で8500万円(ベイサイドタワー晴海:中央区晴海3丁目、駅徒歩10分)なのに対し、11月に販売が開始される予定の晴海フラッグの住戸は61.18㎡で4900万円台からとなっている。

オリンピック後は買い時?売り時?

晴海フラッグの分譲住戸の販売状況については、不動産業界関係者からも注目が集まっている。晴海フラッグの特徴は、五輪レガシー・割安感・大規模プロジェクトであるという点だけではなく、最寄の駅から「遠い」という点も挙げられる。不動産業界関係者が注目しているのは、この交通利便性の悪さだ。

最寄駅である勝どき橋駅から晴海フラッグまでは歩いて16分から20分位かかる(20分を超えるエリアもある)。マンションの経済的価値を担保する一つの要素となるのが、交通利便性だ。23区内の分譲マンションで、最寄駅からの距離が徒歩20分を超える物件はあまり見かけない。マンションの経済的価値に欠かせない交通利便性が決して良いとは言えない晴海フラッグが、これからも好調な販売を続けていくなら、首都圏住宅需要の底堅さを示すひとつの指標となっていくことは間違いない。

豊洲方面から見た都内タワーマンション街の夜景(kanzilyou /iStock)

繰り返すが、現在、首都圏の大都市圏近郊ではマンション、戸建、新築中古問わず、住居用不動産の売り物件在庫が不足している。在庫不足は今後、さらに住宅価格を上振れさせてしまう可能性もある。

今の住宅需要の高まりは、大きな経済効果を生めなかった「オリンピック景気」とは無縁だ。そして、オリンピック後に訪れると考えられていたオリンピック景気の反動による「オリンピック不況」も到来しそうにない。このような状況の中、売り物件の在庫状況を客観的にみれば、不動産市場価格の上昇基調と需要の底堅さはしばらく続くと言っていいだろう。

ただ、これから不動産の売り買いを予定している場合、市場価格の「上がりきり」や「下がりきり」を見極めようとしすぎると、そのすぐ先には大きな崖(値下がり、値上がりの分岐点)が待っていることは覚えておいてほしい。この崖は通り過ぎた後でなければ誰も気付けはしないのだ。

 

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