2年間で200万円也 〜 小学校受験にFPがかけたお金
「いくらあれば足りる」とは言えない難しさ- 一般家庭でも増えつつある小学校受験。FPが実際にかけた「お受験代」を語る
- 「これだけかければOK」はない難しさ。なぜお金の事情がミステリアスか分析
- 「さっき引き出したお金はどこへ…」思わぬ出費が盲点に
限られた家庭のイベントといわれていた小学校受験は近年、首都圏を中心に一般家庭にも身近になっています。その場合、「お受験」は子育てで初めて訪れる教育費の山になります。ところが、受験情報として語られるのはほとんどが入試対策や攻略法であり、お金のことは二の次になりがち。そこで、実際に子どもの小学校受験を経験したファイナンシャル・プランナー(FP)が、「お受験」の世界のお金を語ります。

わが子にはよりよい教育を受けさせたい。子どもを思う親の多くが願うことでしょう。その思いが、親子の生活や家計への影響として現れる「受験」。特に首都圏では近年、小中学校での受験者数の増加が続き、コロナ禍で迎えた2021年度入試ではさらに加速したようです。
大手進学塾「日能研」のまとめによると、中学受験では、この春に小学校を卒業した生徒に占める受験者の割合は1都3県で20.8%と、過去2番目の高さを記録しました。東京都に絞ると30.6%と、3人に1人が中学受験をしたことになります。
中学受験回避で「お受験」身近に
過熱する中学受験を避けようとの考えから、小学校受験に挑む家庭もあります。いわゆる「お受験」は、かねては一般家庭にはそれほど身近な選択肢ではない印象がありましたが、中高への一貫教育のある小学校が中学受験の回避策として注目されるにつれ、こちらも受験者数の増加が続いています。小学校受験の統一模試を実施する教育図書21のまとめによると、直近の2021年度には首都圏60校への受験者数は約3万4千人と、前年の1割近い増加を記録したといいます。
少子高齢化で子どもの人口が減る一方で受験生数が増えていることから、お受験はいま、限られた家庭だけのものではなく、教育に関心の高い家庭に身近な挑戦になってきているようです。
しかし実際にわが家が受験に臨むとなると、気になるのがお金のことではないでしょうか。受験までの長い道のりでかかり続ける塾代、模擬試験代、教材費、そして特に私立校に入学させた場合にはその後の学費と、子どもの進学にかかるお金は、親にとって頭の痛い問題です。
かくいう筆者も、子どもを小学校受験させた親の1人として、予想以上の出費に苦労しました。受験までの2年間、子どもを幼児教室に通わせ、定期的に模擬試験や外部講習に通わせた経験から特に感じたのが、「小学校受験のお金の不透明さ」でした。

年100~200万円?お受験代がミステリアスな理由
ちまたに出回っているお受験対策本やウェブ記事では、一般的な情報としておおまかな受験費用は解説されています。その額は年間100万円とも、200万円ともいわれています。実際に、わが家が受験のためにかけた費用もちょうど、2年間で200万円ほどでした。
しかしこの金額には裏があります。これだけかければOKという訳ではないからです。たまたまわが家では目安とされる年間100万円(2年間で200万円)程度におさまりましたが、家庭によってはそれより高額をかける方もたくさんいます。
定期的に通う幼児教室の月謝だけでも、教室によって大幅な差があり、合格実績の多い教室や大手などでは高額な傾向があります。通う頻度が多い、個別指導を受ける、ペーパー対策の他に制作・絵画、行動観察や体操などの講座も掛け持ちするなどであれば、どんどん出費は膨れ上がります。
逆に、それほどお金をかけていない方もいるようです。入学した子どもの同級生のご家庭の話を聞いていると、幼児教室には通わずに家庭でテキストを解いていた、直前期に単発の講習だけ受講したという話も聞きます。なかには、本当に何も対策せずに合格したという猛者もいます。
お金のことはただでさえ人に話しにくいことに加え、受験のことは当事者同士では話題を避ける人もいますから、皆さんが実際に小学校受験にどれくらいかけているかは謎に包まれています。ただ、かなりの個人差があることは確かです。
受験期にはお金に羽が生える!?

ところで、FPとして家計のファイナンシャルプランニングをしていると、住宅や車の購入など、ライフイベントでかかる費用の多くには目安となる金額があります。それをもとに予算を決めてお金を準備すれば、たいていのケースでは出費は予算内におさまります。しかし子どもの受験となると、そう簡単にいかないことに気づかされます。一言で言うと、天井がないのです。
少しでもわが子に実力を付けてほしい、少しでも合格の可能性が高まってほしいという親の願いは無限大です。その願いとともに、想定以上に講習を受講させたり、対策本を買い込んだりするうちに、お金も無限大に出て行きがち。受験期に近づくにつれてそのペースは加速し、直前期にはコントロール不能なほどにもなります。費用の目安や予算を決めていても、いざとなるとあっさりとそれを超えてしまうリスクがあるのです。
わが家でも、子どもに受験をさせると決めた際に設定した予算額は、山場といわれる年長の夏に尽きてしまいました。しかし11月の本番に向けてまっしぐらに進むなかで、出費を止めるわけにもいきません。直前期には、それまで付けていた家計簿が追いつかなくなるほどに、お金が連日出て行きました。
家計管理の盲点に…
ママ友の一人は「お金に羽が生えてるみたいね」とため息をついていましたが、まさにその通りで、私の財布の中には、何度ATMに駆け込んでもいつもお札が1枚もありませんでした。さっき引き出したお金はいったいどこへ消えたんだろうと、本気で思っていました。
いくら予算を決めていても、わが子の将来のためならばと、ついお金を出してしまうのが親心。それが、小学校受験に限らず、「いくらあれば足りる」とは明確に言えない受験のお金の不透明さであり、(自戒もこめて)家計管理での盲点です。しかも、お金をかけたからといって合格する保証はないのですから、どこまで、いくらかけるのかは極めて難しい問題です。
とはいえ、家計のお金は有限です。子どもの将来は小学校の後もずっと続くことを思えば、中長期的な視点で家計を維持していかねばなりません。その観点で、目下の受験のために何にいくらお金をかけるかを判断するためには、どんなお金が、いくらくらいかかるのか?をより詳しく把握しておくと有効です。
次回は、予測が難しく、意外と見落とされがちな小学校受験の費用を紹介します。(9日に掲載予定)
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