アフガニスタン政権崩壊、中国人識者「アメリカは反省しないだろう」

タリバンを評価「国内平定の能力あり」
ライター
  • 紛争の続いていたアフガニスタンで事実上の政権崩壊
  • アメリカと対立する中国は、反政府勢力タリバンの統治能力を評価
  • アメリカは今後、南シナ海など「西太平洋で新たな混乱を生み出す」と警戒

アフガニスタンの反政府勢力タリバンは15日、首都カブールに進軍し、大統領宮殿を制圧。現政権のガニ大統領は国外に脱出し、アメリカが支援を続けていたアフガン政府は事実上崩壊した。

米軍は今年5月からアフガン撤退を開始していたが、アメリカと対立している中国はタリバンと急接近しており、7月28日には王毅外相がタリバン代表団を北京に迎え入れた。アフガニスタンの現政府の崩壊は、米中間のパワーバランスにも大きな影響をもたらすと見られている。こうしたなか、中国政府は今回の事態をどう見ているのか。参考になりそうなのが有力メディアに登場する有識者の見解だ。

中国王毅外相と会談したタリバン一行(中国外交部サイト)

中国外交の有識者「アメリカの資金投入で腐敗」

中国外交学院国際関係研究所の李海東教授が中国メディア「中国新聞網」の取材に対し、次のように答えた。

情勢は明瞭で、タリバンの一方的有利の状態。アフガニスタン政府には条件交渉をする余力は残ってない。交渉では、速やかに現政府と軍隊を新たな政治版図に組み込むことが急務となります

米情報機関の予測では、タリバンが首都カブールに到着後、包囲に30日、陥落までに90日はかかるとされていた。実際は10日間程度で陥落しており、この急展開は中国にとっても予想外だったようだ。

急展開の根本原因は、アメリカの統治が民心に背いていたからでしょう。アフガニスタンはアフガン人のアフガンであり、アメリカのアフガンではない。ほかの国のものでもない

中国は、アメリカのアフガニスタン介入を当初から非難し続けていた。

「アメリカは、この20年の混乱を招いた責任を免れないでしょう。アメリカが支持する現政府と軍隊は、役に立たないと事実が証明した。アメリカはアフガニスタンのエリートたちを掌握すれば国家を掌握できると考えていた。だが、アメリカの資金が大量に投入されたことで、エリートたちは極度に腐敗した」

隣国タジキスタンに国外脱出したガニ大統領/アフガニスタン政府HPより

アメリカの「壊滅的な大敗」

一方、現政府と対立するタリバンの統治能力を高く評価した。

タリバンはカタール・ドーハで行われた4カ国会議に出席し、アフガン統治の考え方を表明した上で、国内で秩序を回復させ平定させる能力があると示している。国内外で支持を得ている大きな要因となっている

中国にとっては大きな“敵失”を得たも同然で、国際的な影響力を高めることになりそうだ。

アフガニスタン政策の間違いにより、アメリカは不安定な情勢や衝突の可能性を生み出した。我々はアメリカに反省を求めなくてはいけない。無論、アメリカは反省しないだろうが

中国にとっては、アメリカこそ“厚顔無恥な大国”として見えるのだろう。

この30年ほどの間、アメリカは多くの戦乱を生み出してきたが、最後はいつもアメリカが尻尾を巻いて逃げ出している。今回のアフガニスタン紛争もそうだ。これは壊滅的な大敗だ。アメリカは教訓を汲み取ることはせず、アフガニスタン撤退後は西太平洋で新たな混乱を生み出すに違いない

西太平洋とは、日本や中国を含む東アジア、フィリピンやマレーシアなどの東南アジア、オーストラリアなどのオセアニアなど広範な地域を指すが、米中対立という情勢から考えると、台湾や南シナ海といった中国の近海を意味していると見て良いだろう。世界情勢は新たな局面に入りつつあるのかもしれない。

 

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