記録的大雨の現場から:防災・減災のカギを握る“情報力“

生きた情報を住民に届けるサイト構築を
広島市議会議員/元読売新聞記者
  • 記録的な大雨。筆者の地元・広島市でも土砂崩れや住宅浸水、冠水や陥没などの被害
  • インフラなどハード面の整備は進むも、災害初動を左右する情報、ソフト面に課題
  • 自治体や気象庁の情報も乱立。行政が住民に生きた情報をどう迅速に届けるか

停滞する前線の影響で、九州や中国地方など西日本を中心に記録的な大雨が続き、各地で土砂崩れや河川の氾濫など災害が発生しています。8月17日以降も前線が停滞して大雨が続く予報となっています。1週間近い長雨で地盤が緩んだり、河川の水位が高くなっていたりすることから、最大限の警戒が求められています。

冠水した広島市安佐南区のJR安芸長束駅前(安佐南消防団祇園分団撮影)

初動を左右する“情報力”

「防災・減災」という言葉のとおり、近年、災害を防ぐことと起きた災害の被害を減らすことをセットにした考え方が主流となっています。そうした考えのもと、被害が甚大化する災害から住民を守るため、大型堤防や砂防ダムの建設、河川の大規模改修、下水道の処理能力の向上、建物の耐震化といったハード面の整備が国を挙げて進められています。こうした整備は防災・減災に必要不可欠ですし、国民の生命身体、財産を守る基本施策だと思っています。

ただ、こうした整備に割くことができる人やカネといった様々な資源は有限です。自然の力は人間の力をはるかに凌駕します。ハード面の整備だけで100%災害を防ぐことは、事実上不可能と言わざるをえないでしょう。

土砂崩れの現場(広島市安佐南区山本6、筆者撮影)

実際、私の地元である広島市安佐南区でも土砂崩れや住宅への浸水、道路の冠水や陥没などの被害が出ています。このたび、消防団員としての警戒活動や土砂崩れ現場に入ったことなどを通じ、災害警戒時から発生初期においては、情報が住民の「安全・安心」を左右し、それほど重要であるということを再認識させられました。具体的には、行政、住民ともに、情報の収集、共有、拡散という、“情報力”を上げていくことが求められていると痛感させられたのです。

つまりは、ハード面の整備とともに、情報力といったソフト面の強化が、防災・減災のカギを握るのです。災害時の考え方に、「自助・共助・公助」という言葉があります。総務省消防庁によりますと、まず自ら身を守り、住民で共に助け合い、公的機関(行政など)が救うという意味合いです。

そこで、自らを守る武器の一つが、“情報力”となってくるのです。

迅速に情報をどう届けるか

ツイッターなどのSNSを活用すると、リアルタイムの情報が集まってきます。これらには動画や画像が付いていることが多く、現場の様子が手に取るように分かります。しかも、拡散力があります。現場の映像があるだけでも、消防や消防団、警察といった治安部隊の初動は変わってくると思いますし、住民の危機意識も高くなると思います。実際、警戒中、国土交通省の河川ライブカメラを見ていましたが、これはとても有益でした。広島市内を流れる河川の映像が24時間、ほぼリアルタイムに流れており、水量の変化が一目瞭然なのです。

ただ、残念ながら、今の行政では、こうしたリアルタイムな災害情報の発信を活用しきれていないと思います。だからこそ、住民の生命身体・財産を守る手段として、膨大な一次情報を生きた情報に変換して迅速に住民に届けるポータルサイトを構築する必要性を感じたのです。幸い、広島市内の土砂災害現場では、人的被害がありませんでした。住民の皆様が早めの避難をされていたことが奏功したということです。多くの住民が災害関連情報を手にすることができる状態にあれば、身体への被害を回避する確率が高まると言えます。

最後に今回見えてきた情報面での課題を以下にまとめました。

<災害警戒段階>

・防災無線の音声が聞き取りにくい
理由)音声が反響する。雨音や雷でかき消される。

・各種情報の意味が分かりにくい
「緊急安全確保」「避難指示」「高齢者等避難」←自治体が発表する避難情報
「大雨特別警報」「土砂災害警戒情報」「大雨警報」「洪水警報」「氾濫発生情報」「氾濫危険情報」「氾濫警戒情報」「氾濫注意報」←気象庁が発表する防災気象情報
理由)種類が多く区別しづらい

・発表された各種情報と現在地の状況がマッチしていない
理由)各種情報の対象エリアが広いため、平野部と山間地では状況が異なってくる。

<災害発生後>

  • 災害情報が住民に届くまでタイムラグが生じる
  • 情報格差が生じる(本来必要なところに情報が届いていない)

1分1秒を争う災害現場で、住民の命を救うのは情報です。皆様の自治体で”情報力”を高める施策があれば教えていただければ幸いです。

 
広島市議会議員/元読売新聞記者

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