原子力潜水艦の保有が狙い?韓国の「20年来の野望」を止めることはできるか
絶対的ではないアメリカの「壁」- 韓国の今回のSLBM搭載潜水艦就役は、盧武鉉政権時代からの「野望」の一環
- 米・ロ・中・英・仏・印に次ぐ、戦略原潜(SSBN)の保有国をめざす狙いか
- アメリカとの米韓原子力協定が「壁」だったが、韓国は緩和を試みている
韓国海軍で13日に就役した初の3,000トン級潜水艦「島山安昌浩(ドサン・アン・チャンホ:SS-083)」が、北朝鮮対策としては明らかにオーバースペックであり、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を搭載可能な同潜水艦が、我が国を意識している疑いが強いことは前回も述べた。実はこの潜水艦配備は20年近く前から続く「野望」が現実化しつつある。

近い将来は原潜保有も
プラットフォームとなる大型の潜水艦に関しては、(文在寅大統領の恩師とされる)廬武鉉(ノ・ムヒョン)政権下の2003年に、原子力潜水艦3隻を2020年までに実戦配備するという「362事業」を計画し、韓国の野望を見抜いた米国の大反対によって全面破棄させられた経緯がある。
しかし、韓国は2019年になって北朝鮮のSLBMの脅威を前面に掲げて再び原子力潜水艦の必要性を唱え始め、このためのTF(タスクフォース)を立ち上げていることも明らかになった。2020年8月に韓国国防部が発表した「2021~2025国防中期計画」の中では、空母の建造計画と並んで、4,000トン級の新型(原子力)潜水艦3隻の建造計画が含まれていたのである。
今回の通常型潜水艦はSLBMを搭載して運用するためのノウハウを蓄積するための先駆けに過ぎず、最終的に韓国は原潜にSLBMを搭載するという目標があるものと見られる。即ち、米国・ロシア・中国・英国・フランス及びインドの6か国に次いで、戦略原潜(SSBN)の保有国となることを目指しているということだ。忘れてはならないのは、このSSBNは核抑止戦略として位置付けられるものであり、韓国も同じ狙いがあると見なければならないということである。
恐らく、韓国は将来米軍の撤収を見越して、独自の核戦力の保持を念頭に置いているのであろう。あわよくば、原子力潜水艦の建造過程で得られた核技術を核兵器にも充当しようと考えているのではないか。はたまた、北朝鮮と統一すれば核技術を共有してもらえるなどと考えているかも知れない。これは、わが国にとって恐るべき未来である。政府はこのことに気付いているのだろうか。
アメリカの「壁」どうなる
わが国にとって幸いなのは、これらの計画には大きな壁が立ちふさがっているということだ。それは、言わずもがな米国の存在である。前述のように、2003年の原潜建造計画は「米国がこれを容認せずにとん挫した」というのも、1973年3月に発効した米韓原子力協定において、韓国のウラン濃縮の上限ラインは20%に制限されており、「協定により移転された核物質を核兵器または爆発装置の研究・開発やどのような軍事的目的のためにも利用しない」と規定されているからである。効率が高い高濃縮ウランを燃料として使用する原潜を建造するためには、この協定を見直すか、米国から核物質の提供を受けるか、いずれにせよ米国の協力が不可欠なのである。

現在の朝鮮半島の情勢で、米国が北朝鮮を刺激するような韓国への核技術提供を容認する可能性は低いとは考えられるが、決してこれで安心してはいられない。
韓国は、2015年11月に発効した「米国と韓国の平和目的の原子力利用に係る協力協定」(新協定)の改定交渉においても、外交や米国政界へのロビー活動などを駆使して様々な形で制限緩和を図る努力を行っており、南北情勢の行方などによっては、今後米国の協力を取り付ける可能性もあり得るからだ。
6月10日の拙稿でも指摘したように、「米韓ミサイル指針の撤廃」に関して、米国は事前にこれをわが国に伝えていなかった。韓国に対するわが国の不信感は、果たしてどこまで米側に伝わっているのだろうか。今回のSLBM搭載潜水艦就役の報道にも、わが国はもっと厳しい反応を示すべきではなかったのか。「米韓ミサイル指針の撤廃」も今回の件も、わが国がこれを容認しているような誤ったシグナルを米韓に発信してはならない。
韓国に対しては、どのような目的で、何をするために、このような戦略的な計画を進めているのかしっかりと説明を求めるべきであり、米国に対しては、わが国が韓国を信頼できない理由が、このような「韓国の不必要な軍備増強にある」ということを伝えるべきではないかと思うのである。(終わり)
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