「学生のうちに」学校でお金の基本ルールを学ぶ重要性

家庭科で「家計」、18歳成年...来年からの変化
ファイナンシャルプランナー/キャリアカウンセラー/(株)イー・カンパニー代表
  • お金の基本を学んでいないため、安易な儲け話に騙される大学生が続出
  • 来年から高校の「家庭科」の学習指導要領に「お金」の項目が盛り込み
  • 来年4月から18歳が成年となり責任も発生。「お金」の基本を学校で学ぶ意義

(編集部より)八木陽子さんはこれまでの連載でも、日本人の投資への「偏見」や「誤解」、あるいは先進国でも極端な「貯蓄志向」であることなどの要因について、学校で十分お金の教育を学んでいなかった点を指摘してきました。しかし来年から高校の「家庭科」の学習指導要領に家計を本格的に学ぶようになるなど、世の中の流れが変わろうとしています。「学校でお金の基本を習う」意義について詳しく解説します。

metamorworks /iStock

だまされる大学生が続出する投資詐欺

ファイナンシャルプランナー/キャリアコンサルタントの八木陽子です。

資産運用や投資が怖い、なかなか始められない方もいますが、実は、今どきの若者たちはどうかというと、日本の経済があまりよくない状況で育っているせいか、運用などで「儲けたい」意識が強い傾向にあるようです。つまり、投資、儲け話、おいしい副業に飛びつきやすいのです。友人の紹介だったり、SNS等で知った情報などで、誤った儲け話を信じてしまい、その結果、詐欺にあうという被害が出ています。

たとえば、USB詐欺といわれるものです。USBフォルダの中に、金融商品で儲ける方法のソフトが入っているということで、数十万円~50万円などの高額で購入する事件です。アルバイトなどで手に入った、なけなしのお金を使ってしまって、大学をやめざるを得ないという学生もいるそうです。

先輩から紹介されるなど巧妙な手口でもありますが、「なんで、こんな話、信じてしまったのだろう?」と首をかしげたくもなります。溢れる情報の中で、正しい情報を選択する力を身に着ける必要性があるのでしょう。また、あわせて、学校で、お金の基本を習う必要性があると思っています。

「あれ、学校で習ったことと違うぞ?」と一瞬でも心の奥底にストッパーがあれば被害に逢わずに済んだ学生もいるでしょう。

家庭科の学習指導要領の記載は…

そんな中、以前も少し話題にしましたが、ようやっと、2022年から、高等学校の「家庭科」の学習指導要領に多くのお金について項目が入ってきました。今日は、具体的に見ていきましょう。

学習指導要領によると「家庭科」で取り扱う項目は、次の表のとおりです。

今の保護者世代が受けてきた「家庭科」といえば、調理実習か裁縫のイメージが強い方が多いでしょうから、時代の変化が感じられる驚きの内容ではないでしょうか。家庭科のイメージが強い「衣食住」は、3本柱中の1本で、残りの2本は、現代のライフスタイルの変化に対応した内容になっています。

中でも、「消費生活・環境」、お金に関係することが多く取り上げられて、目を見張ります。

18歳の高校生でも責任発生

実は、この背景には、2022年4月以降、18歳が成年年齢になることも起因しています。高校生のうちに、成人になる学生が出てきます。成年、つまり大人となると何が変わるかといえば、親の同意を得なくても、自分の意思で様々な契約ができるようになります。それ自体は、自己決定権を尊重し、積極的な社会参加を促すためによいことです。ただし、様々な契約において、未成年者取り消しができなくなることに注意が必要です。

未成年者取り消しとは、社会経験の少ない未成年者が保護者(=法定代理人)の同意を得ずに契約した場合、契約を無効にできる法律です。これは、普段のお買い物でもそうですが、金融商品を購入する契約にもあてはまります。今後は、18歳の高校生であっても、契約や買い物に自己責任が問われます。もちろん不当な契約の場合はクーリングオフ等の利用ができますが、「どんな買い物も契約」と意識することは、社会で自立する上で重要です。

学習指導要領の「消費生活・環境」の中には、消費者としての契約について項目が多く割かれていますが、さらに、家計管理や資産形成(投資)も入っています。

家計管理は、もともと出来ている人から見ると、わざわざ学校で習うことなの?と思うかもしれません。実は、私もファイナンシャルプランナーになって相談の現場に入る前は、家計管理に関しては、収入>支出で生活でき、貯蓄ができていればいいので、それほど難しい話ではないと感じていました。

ところが、実際には、どんな収入が高くても、「収入<支出」になり、生活費が払えなくなり、困ってしまう方がいます。そういうご家庭は、「まず、ほしい物を買う」とか「これぐらいの買い物は普通でしょ」という思考で、「成り行きの支出」になってしまっています。限られた収入の中、支出に優先順位をつける発想が薄いのです。「収入>支出」が基本で、まずはいくらぐらいで生活をしたらよいという線引きをし、今の生活にかかるお金を把握するだけでも家計は変わってきます。

・家計管理の基本は、「収入>支出」で考え、しくみをつくる。
・投資の基本ルールは「長期・積立・分散」であって、すぐに儲かる商品はない。

出来る人から見ると、当然のことかもしれない「お金」の基本。でも、改めて、学校で学習することで、人生においてのつまずきが減る未来がやってきてほしいと思っています。

 
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