「ソフトバンクがワクチン接種をファンクラブに拡大」って、おかしくないか?

ファンクラブの年会費は年間2980円(税込)
ライター
  • ソフトバンク従業員は6万人だが、ワクチン接種は25万人規模で実施
  • スマートニュース、楽天グループでも同様の事態が発生
  • 河野大臣も「余剰ワクチンが相当数発生するおそれ」を当初から指摘

ソフトバンクが16日、福岡ペイペイドームで実施している新型コロナウイルスワクチン職域接種の対象を、クラブホークス・ホークス筑後ファンクラブ会員へ拡大すると発表したことが物議を醸している。

一見、自社用のワクチンをファンたちへ分配する良心的な試みのようにも見えるが、冷静に考えてみたい。ファンクラブの年会費は年間2980円(税込)であり、各自治体のワクチンが枯渇している現状を考えれば、ワクチン目当てにファンクラブに加入する人がいてもおかしくない。となれば、自治体から配布された貴重なワクチンに値札を付けて“転売”しているとも言える。ツイッターでは、すでに“営利目的”との非難の声も出ている。

福岡ペイペイドーム(らびっこ/Photo AC)

ファンクラブにまで広げるって、どんだけワクチンをガメてんだよ。いったん国に返して大学とか教員とか優先しろ。確か楽天も本社のある世田谷で住民に募集してたが、不公平すぎるだろ。

ワクチンを会社の広告に使わないでください。

国の金で買ったワクチンをソフトバンクがファンクラブ会員に接種って、だめだろ。利益供与じゃん。そんなの職域じゃないじゃん

経済評論家の渡邉哲也氏も、こうツイートした。

ワクチンの職域接種については、7月にスマートニュース株式会社が「『炊き出しの精神』で地域の方へのワクチン接種を開始します」と発表し、批判を受けたことは記憶に新しい。スマートニュースは社員数400人だが、接種規模は5000人。必要な数の10倍以上のワクチンを過剰申請をしていたことになる。

ソフトバンクの従業員数は連結ベースで約6万人だが、ワクチンの接種規模は25万人。こちらも必要量の何倍ものワクチンを厚生労働省に申請し、余ったからファンクラブ会員や地域住民にも分けることにしたようだ。

recep-bg/iStock

厚労省はノーチェック?

ワクチンの職域接種については、楽天グループも世田谷区民や関連企業、さらには取引先企業にまで接種対象を拡大している。楽天グループの従業員数は約2万人だが、ワクチンの接種規模は6万人。「楽天やソフトバンクのおかげでワクチンが打てた! ありがとう楽天! ありがとうソフトバンク!」と思う人もいるかもしれないが、本来は、各自治体がやるべき仕事ではないだろうか。

厚生労働省へ職域接種を申請する際の「申請項目Excelテンプレート」を見ると、「総接種予定人数」を記入する項目がある。ここで記入した人数分のワクチンが各企業に割り当てられるが、申請人数について、厚生労働省は何もチェックをしなかったのだろうか。

厚労省ワクチン職域接種 申請項目Excelテンプレートより

職域接種が始まった直後の6月22日、河野太郎規制改革担当大臣は、企業などが必要以上の量のワクチンを供給するよう申請しているケースがあると指摘。

「このままだと、余剰ワクチンが相当数発生するおそれがある。貴重なワクチンがむだにならないようにしなければいけない

と述べた。我々の知らないところで、すでに大量のワクチンが無駄になっているのではないか。楽天やソフトバンクは、なぜ有り余るほどのワクチンを抱えているのか。「公平な分配」ができていないのではないか。ほかにもワクチンを余らせている企業があるのではないか――。ソフトバンクが膨大な数のワクチンを確保し、ファンクラブ会員にまで接種範囲を拡大していると聞くと、そうした疑問を抱かずにはいられない。

余談だが、私(筆者)の両親はともに高齢者だが、いまだにワクチン接種の予約が取れない状況だという。福岡ソフトバンクホークスのファンクラブ会員に加入するよう、勧めないといけないのかもしれない。

 

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