「外交史上の大失敗」日本も国会の調査委でアフガニスタン政策を総括せよ

巨額ODA投下、米と同じく調査委員会を求む
国際政治アナリスト、早稲田大学公共政策研究所招聘研究員
  • アフガニスタンの政変は自由主義諸国に致命的であり、膨大な戦費と人命を空費
  • アメリカでは議会で超党派によるアフガニスタン政策の見直しの動き
  • 日本も巨額の血税によるODAを投下。国会に調査委を設置して総括を

アメリカがアフガニスタンにおいてタリバンに敗北し、同国から脱出しようとする人々の一部を見捨てて逃げ出す姿が全世界に映し出されてしまった。これは自由主義・民主主義を掲げる西側諸国の大義の面から致命的な出来事であるとともに、膨大な多額の戦費等の血税はアフガニスタンの大地に吸われて消え去ることになってしまった。

膨大な戦費と人命、米議会で検証へ

アメリカでは共和党下院議員のエリーゼ・ステファニクとロブ・ウィットマンが共同リーダーとして、アフガニスタンでの米軍の撤退を調査するための委員会の創設を提案した。これはアフガニスタンでの戦略と行動を客観的に見直し、20年間で数兆ドルという膨大な戦費と数千人の米国民の命を失ったことに鑑み、国の指導者が戦略的誤りを繰り返さないよう支援することを目的としている。その上で、米国を再びそして自由世界の指導者として成長させることも併せて付記している。

遅かれ早かれ同様の趣旨の超党派の調査委員会が連邦議会で創設されることはほぼ間違いなく、米国はアフガニスタンでの失敗の総括を何らかの形で行うことは間違いない。そして、今後の対外政策の見直しをしっかりと行うことになるだろう。

では、日本はどうであろうか。日本は過去に7000~8000億円程度の政府援助(ODA)をアフガニスタンに与えてきている。この予算は外務省の年間予算に匹敵する金額であり、これらの予算が事実上海の藻屑と消えたことの責任は極めて重大だ。また、平和国家として、復興支援や武装解除などについても主導権を発揮してきたが、結果としてタリバン復活を可能とする政治状況しか創り出せなかった政策失敗の反省も併せて行うべきだろう。関係者各位の努力には敬意を払うものの、今日のアフガニスタン情勢は日本外交史上の大失敗と言っても過言ではない。

そのため、米国で共和党下院議員らが提案している特別委員会の設置を日本の国会も検討するべきだ。

日本が支援した、アフガニスタン・カブールの国内避難民キャンプの給水施設(外務省サイト掲載のJICA画像

外務省のお手盛りでない反省を

アフガニスタンにばら撒かれたODAは日本の納税者が支払った血税だ。外務省などが国際的に良い顔するための遊び金ではない。その資金があれば国内で減税政策をはじめとした様々な経済成長政策に利用できたものを、わざわざ縁も所縁もほとんどないアフガニスタンに投入してきたのだ。それらが全て無駄になったことの責任は重い。

日本の外交政策の在り方を根本から見直し、米国と同様にアフガニスタンとの20年間の付き合いから導き出される教訓を得、そして武力行使を是としない平和国家としての対外関与とはどのようにあるべきか、国民に向けた総括となる文書を作成することが求められる。

意思決定、予算編成、予算執行、現場の実務なども含めた綿密で精緻な分析を行い、同じ過ちを繰り返すことなく、なおかつ日本の役割を厳しく見直す、外務省のお手盛りの反省ではない総括が必要である。それを実行して報告書を作り上げて政府に是正を迫るのが、納税者の代表である国会議員の仕事である。

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