トランプより狡智 !? タリバンのSNS発信の裏に「PR会社の暗躍」説が浮上

日本が知らない国際情報戦のリアル
2021年08月23日 16:00
  • ワシントンポスト紙がタリバンのSNS発信の裏にPR会社の存在説を掲載
  • リベラルメディアらしく、トランプ氏とタリバンを並び立てる論者の意見も
  • とはいえプラットフォーム側はすでにタリバンへの対応を余儀なくされている

アフガニスタンで20年ぶりに政権を奪回したタリバンが、SNSを駆使した広報戦術を展開し、プラットフォーム各社が規制などの対応を余儀なくされている。そうした中で、ワシントンポスト紙が、タリバン側の高度な発信スキルについて少なくともPR会社1社が関与しているのではないかと見立てる専門家の分析を紹介し、日本の政治・メディア関係者の注目を集めつつある。

カブール制圧後「平穏」を強調するタリバン(広報担当者ツイッター動画より)

話題になっているのは18日に電子版で配信された「Today’s Taliban uses sophisticated social media practices that rarely violate the rules(邦訳:今日のタリバンは、規則に違反することはめったにない、洗練されたソーシャルメディアを実践している)」と題した記事。同紙記者が、IT系のシンクタンクや大学の研究者らの専門家の取材をまとめている。これによると、タリバンは2011年までにはツイッターを、14年までにテレグラムをそれぞれ使い始めていたといい、重要拠点を占拠した際に動画を拡散して戦果を広めるなどしてきた。タリバンのSNS戦術の巧みさをうかがわせるのが、オンラインの過激な活動を監視する団体の担当者が次のように述べたくだりだ。

今日のタリバンは、テクノロジーとソーシャルメディアに非常に精通している。20年前のグループとは異なる(原文:The Taliban of today is immensely savvy with technology and social media — nothing like the group it was 20 years ago.)」

この担当者は、アメリカのトランプ前大統領が、プラットフォーム側の規約にたびたび抵触した経緯と比較した上で、

タリバンはソーシャルメディアのコンテンツポリシーを明らかに絶妙に克服しており、トランプ氏が越えた非常に明確なポリシー違反の境界線をまだ越えていない(原文:The Taliban is clearly threading the needle regarding social media content policies and is not yet crossing the very distinct policy-violating lines that Trump crossed.)」

との分析結果を示した。ワシントンポストはニューヨークタイムズと並び、アメリカの代表的なリベラル大手紙。トランプ氏ともことごとく対立してきたことから、タリバンとトランプ氏を並べて論じる識者の見立てを強調するあたりは、自社の論調に沿ったものと言えるかもしれない。

プラットフォームとタリバンの暗闘

しかし、フェイスブックやユーチューブはすでにタリバン側の利用を制限するなど、タリバン側の巧みとも言える近年のSNS活用にプラットフォーム各社が度々対応に追われてきたのも事実だ。今回の政変の直後にも動きが。フェイスブックのセキュリティポリシーの責任者、ナサニエル・グレイチャー氏は20日、ツイッターで新たな“タリバン対策”を連続投稿。その中で、アフガニスタンの人々がアカウントにすばやくロックをかけ、フレンドでない人がプロフィール写真のダウンロードや共有などをさせないなどの措置をしたと述べた(参照ツイート)。

ツイッターでは、タリバンの広報担当、ザビフラ・ムジャヒド氏は2017年4月にアカウントを開設。34万を超えるフォロワーを擁し、自国民や外国政府を意識し、タリバン側の見解をツイートし続けており、特に排除していないようだが、先述したように、ヘイトスピーチなどの明白な規約違反をしない限りにおいてどう対応するのか難しい判断も迫られつつある。プラットフォーム側が模索する間にも、タリバン側が、指摘されるようにPR会社のような外部の「プロ」の知見も活用して絶妙に対応しているのであれば、ネット上のプレゼンスを維持・向上させている「暗闘」は根深くて激しい。

日本では戦争やテロに関して背後に情報や宣伝広告のプロがいるという現実はほとんど実感されないが、2000年代にNHKのドキュメンタリー取材班が番組や書籍で、90年代のボスニア戦争の内幕として、アメリカの敏腕PRマンによる世論形成が、セルビアに対する国際的非難をもたらした事実を伝えたことで国際情報戦の認知度が上がった。今回のタリバンの背後に暗躍するPR会社の存在がいるのか、まだ不明だが、ネット時代に合わせてタリバンがいかに“情報武装”をしてきたのか、国際的にも注目されそうだ。

 

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