旭川いじめ:教頭発言「被害者より加害者の未来…」は教育現場でありがちな理由
“いじめ探偵”に聞く:被害者に寄り添っても評価されぬ構造- 旭川いじめ問題で教頭が遺族に「加害者の未来」を優先した発言が物議
- いじめ問題に詳しい探偵、教育現場で「みんな本当は良い子」の意識が強いと指摘
- いじめの解決ができない構造問題。地方では第三者委の中立性が保たれないケースも
今年3月に北海道旭川市の公園で凍った状態で発見された当時14歳だった廣瀬爽彩(さあや)さんの遺族が、このたび手記を公開。爽彩さんの通っていた中学校の教頭は、遺族である母親に対し「10人の加害者の未来と、1人の被害者の未来、どっちが大切ですか。1人のために10人の未来をつぶしていいんですか」と発言していたことが明らかになり、波紋を呼んでいる。探偵の調査能力を駆使していじめ問題の解決を無償で行っている“いじめ探偵”の阿部泰尚さんに、この問題をどう見ているかを聞いた。

事なかれ主義と過剰な平等主義
阿部さんによると、こうした考え方は、教育現場では極めてありふれたものだという。
「教師だけでなく、警察官もよく言います。特に私立の学校は頻繁に言う。被害者が『徹底的に争いたい』という意志を示すと、『1人の将来と10人の将来のどちらが大事だ』と迫ってくる。耳にタコができるほど聞いています」
根底にあるのは、学校現場の徹底した“事なかれ主義”だ。
「『被害者が騒がなければ、ただの事故で終わって何事もなく平和に過ごせるのに』っていう考えがあるんです。『加害者の未来も大事』という話は、被害者を説得して黙らせたいときによく出てくる言葉です」
加害者に謝罪させるより、被害者を黙らせるほうが労力的にラクなのだろう。学校側は、加害者の将来をとかく気にする。
「逆に言えば、『自分の将来が潰れるようなことをやったんですね』ってことなんですよ。教頭は加害者たちが何をしたか知っているので、外に漏れたら将来が潰れると考えたのでしょう。それぐらい残酷なことをしたわけです」
被害者と加害者を同一に扱おうとする、過度な平等主義が不公平な結果を生んでいる。
「教育現場では『みんな本当は良い子なんだ』という理想論が非常に強い。もちろん、生まれた時から悪人という人はいないでしょうが、悪いことをしてしまった以上、教育や更正が必要になる。そのために少年院や少年鑑別所がある。謝罪や反省のないまま社会に出てきて欲しくないと思うのが普通です」
市長は問題を放り投げ辞職
教師たちから見れば、いじめ被害者は自分たちの仕事を増やす“厄介な存在”に見えるのかもしれない。
「謝罪の会も、被害者のために“やってやってる感”がすごくある。謝罪をしたら絶対に許すべきという考えが蔓延していて、『謝っているんだから許してあげなさい』『許さないのは心が狭い』と言わんばかりなのです。一般的な社会常識とズレたところがあり、学校には治外法権があると思っているようです」
被害者と加害者を強引に握手させ、それによって和解したと見なすこともある。いじめ問題に深入りして、下手に仕事を増やしたくないという一心なのだ。これには、いじめ解決に労力を割いても報われないという制度的な問題もある。
「教師たちの評価は、学力診断テストの点数が上がったとか、スポーツ大会で優勝したとか、そういうことで決まってくる。いじめを解決したり、不登校の生徒を献身的にサポートしたりということは、評価につながりにくいのです。組織的な問題ですよね。結局、いじめ問題に真剣に取り組んでないということです」
旭川市では過去5年間で4人の教員が、児童買春などで逮捕されている。同規模の自治体と比較しても、異常なほど多い。問題の陣頭指揮を執っていた西川将人・旭川市長は、次期衆院選に立憲民主党からの出馬を表明、8月末で市長を辞職する。全国的に注目されている爽彩さんの問題を、途中で放り投げる形に批判もある。

旭川だけが異常ではない
旭川市教育委員会は第三者委員会し調査を行っているが、遺族側は「第三者委員会には今も違和感と疑問をぬぐい去れません。公平で中立な調査が行われているのか、誰が、どんな調査をして、本当に真実に迫ろうとしているのか」と不信感を示している。いじめ防止対策推進法では、重大事態となるいじめが発生すると、利害関係のない弁護士やカウンセラーなどが第三者委員会を設置し、中立的な立場からいじめ調査を行うよう定めている。だが、実際には“中立性”が守られていないこともしばしばあるという。阿部さんは指摘する。
「特に地方に行くと、いじめ問題に詳しい専門家が少ないので、利害関係者とすぐ繋がってしまうんです。地縁のある人はどうしても繋がりやすいので、第三者委員会は地元の人ではなく、例えば都道府県外から選ぶことにしたら良いのではないかと思います」
旭川市の教育委員会や学校が特に異常なのではなく、全国的な問題だと強調する。
「世の中のみなさんにもっと怒ってもらって、行政にお灸を据えて頂きたい。いろいろ問題点があると分かっていても、私一人の力では限界がある。おかしいと思う人が増えれば、新たな法律や制度が生まれ、良い方向に変えていけると思います」
爽彩さんの死を、無駄にしたくないものである。
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