平井大臣報道:朝日新聞が「利権勢力の逆恨みに利用された」疑惑が深まった
「報道されざる」問題点とは?- 「NECには死んでも発注しない」平井大臣の音声データ報道の背景を徹底分析
- 言葉の行き過ぎはともかく、平井氏の説明は筋は通っている。“刺された”可能性?
- 弁護士による検証報告書。朝日と文春が逆恨みに報道が利用されたか検証すべき
(編集部より)平井卓也デジタル改革担当大臣の「疑惑」を指摘した朝日新聞と週刊文春に対し、平井氏が「猛反論」してバトルになったことはSAKISIRUでも6月に取り上げました(当時の記事)。記事の元になった音声データの流出経緯について、弁護士による調査チームの報告書がこのほど公表。これを受けて、「情報検証研究所」でフェイクニュースのチェック活動を行っている原英史さんが、平井大臣を巡る報道を分析しました。大手メディアで「報道されざる」問題点とは?

情報検証研究所 文責:原英史(株式会社 政策⼯房代表取締役)
オリンピック・パラリンピック向けに国が開発したアプリの事業費削減を巡って、平井卓也大臣が「NECには死んでも発注しない」、「完全に干す」、「(NEC会長を)脅しておいて」などと幹部に指示した、との記事が掲載されたのは6月11日の朝日新聞だ。平井氏と内閣官房IT室幹部との内部会議の音声を朝日新聞が入手して報じたものだった。
「徹底的に干す」「脅しておいて」平井大臣、幹部に指示(朝日新聞デジタル2021年6月11日)
さらに翌週の6月18日には、今度は週刊文春が新たな音声データを入手し、平井氏が親密なベンチャー企業への発注を示唆したのでないかとの疑惑も取り沙汰された。
平井氏が“刺された”?
しかし、経過をみるとどうもおかしい。
平井氏は当初から、
- 外国人観光客を受け入れないことになったので顔認証は利用しないなど、アプリの機能削減を図った(当初の契約金額は73億円だったが38億円に圧縮)
- 内部会議での発言は「交渉スタッフに檄を飛ばした」ものだった
- ベンチャー企業への発注を示唆した事実はない
と説明し、政府側で保存していた音声データも公開した。言葉の行き過ぎはともかくとして、筋は通った説明だった。その一方で、政府の内部会議の音声データが複数メディアに漏れたのは、ふつうには起きない異常なことだった。
一連の報道をみて、私がすぐ思ったのは、「これは平井氏が“刺された”のでないか」ということだ。つまり、
- 契約金額を減額された企業や、そことつながった内部関係者が逆恨みし、音声データを持ち出したのでないか
- 朝日新聞と週刊文春は、そうした逆恨みにまんまと利用されたのでないか
と推測した。さらに背景には、「ITゼネコン」と「ベンダーロックイン」の問題がある。政府のシステム開発は、従来から一部IT事業者が寡占的に担い、いったん契約すると別会社に乗り換えがたいため、政府に過大な請求がなされやすい構造があった。平井氏が先頭に立って立ち上げつつある「デジタル庁」は、実はこの構造に手をつけようとのプロジェクトだ。オリパラアプリに限らず、平井氏があちこちで恨みを買う局面があっただろうことは想像に難くない。
私は、ネット番組などでこの件の解説を求められると、こうした推測と背景説明を行ってきた。
あくまで推測だったが、どうやら的中していた可能性が高そうだ。一連の報道後に外部調査チームによる調査がなされ、8月20日に報告書が公表された。
焦点は、朝日と文春の対応へ
報告書によれば、まず、平井氏が減額交渉のために「檄を飛ばした」との経過は概ね裏付けられている。そして、以下の事実が明らかにされた。
- IT室長代理である神成淳司氏(大学教授でもある)とそのチームが、別事業者の参考見積(入札の前段階で予定価格決定のために求められる)を他社に提供し、「税込70億くらいで」などと事業者側に示唆しながら予定価格を形成し、結果として、NTTコミュニケーションズ・NECなどのコンソーシアムが73億円で落札したこと
- 神成氏は、利用される情報連携基盤の共同開発者であり、著作権の実施料収入を受けうる立場にあったこと(週刊誌報道で明るみになったのちに権利放棄を申出)、また、特定事業者(コンソーシアムからの再委託先)に利益をもたらそうとしたのでないかとの疑問が生じうること(注)、
- 当該事業者(再委託先)は、当初契約金額6億6千万円に対し、減額交渉後は2億2千万円となったこと。
(注)結論として、断定はできないとしている。
報告書ではその上で、内部会議の音声データを誰が流出したかは、結論は不明としつつ、音声データのダウンロードを行ったのは3名であり(サーバーにアップロードした担当者を含む)、そのうちの1名が神成氏だったことが示された。
もちろん、報告書で問題指摘された当事者には、それぞれの言い分があろうし、ここで報告書を超えたことをいうつもりは毛頭ない。問題にしたいのは、朝日新聞と週刊文春の対応だ。
両社はもちろん、誰がデータを渡したのかを知っている。上記の事実が報告書で明らかにされた中、情報提供が適切なものだったのか、逆恨みに報道が利用されてしまった可能性がないか、改めて検証すべき状況のはずだ。訂正の必要があるなら、読者に正しい情報を伝え直す責務があるはずだ。
ところが、残念ながら、朝日新聞が8月20日に報告書を報じた記事「内閣官房職員、入札見積もり他社へ漏洩 オリパラアプリ」では、そうした検証の形跡が全くみえない。

朝日の「疑惑深まる」ばかり
記事では、報告書が「平井大臣の発言の是非」を判断しなかったことを不満とし、相変わらず平井氏の発言を問題視し続ける。その一方で、音声データ流出に係る記述には一切触れず、報告書における中心人物である神成氏の名前すら報じていない。
内閣官房職員、入札見積もり他社へ漏洩 オリパラアプリ(朝日新聞デジタル8月20日)
この点、例えばTBSでは、『平井大臣「脅しておいて」発言の“真相”』と題し、神成氏の名前はもちろん、音声データ流出に関しても報じているのとは対照的だ。
平井大臣「脅しておいて」発言の“真相”、IT室幹部が関与か(TBSニュース 同日)
これでは、朝日新聞は後ろめたい事情があって、音声データ流出の話を伏せていると捉えられても仕方ないのでないか。朝日新聞の好むフレーズを借りるなら、一部の利権勢力の逆恨みに利用されたとの「疑惑が深まる」ばかりだ。新聞社として、新聞倫理綱領に則った責任ある対応を求めたい。
■
最後に、別事案だが、現在、私は毎日新聞と訴訟係争中だ。9月21日(※)に地裁判決が出ることになっている(訴訟の内容に関しては、2019年6月以来、アゴラなどで記事掲載してきた)。
実はこちらも類似の構造で、要するに「新聞報道が特定勢力の思惑に利用されていないか」という問題だ。判決が出たら、改めて整理してご紹介したい。
(※)8/30編集部追記:地裁の都合により判決日変更しました。
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