実質無観客、途中出場辞退、悪天候…「甲子園」呪われた夏のゆるキャラ

今大会の運営に創業家として物申す
朝日新聞創業家
  • 実質無観客、途中出場辞退2校、前代未聞の連続となった甲子園を斬る!
  • 大会のテレビCMには、村山龍平を彷彿とさせるキャラクター登場の愚弄
  • 今年の甲子園は東京オリンピック以上に呪われた大会に

村山龍平(Wikimedia public domain)

甲子園には魔物が住むと言いますが、この夏、甲子園では亡霊が歩き回っています。朝日新聞創業者で私の曾祖父、村山龍平(1850〜1933)の亡霊が……と思いました。高校野球のテレビCMに、紋付き袴にパナマ帽の老人が映り込んでいました。

「おい恭平、わしが所望してきた歴代社長どもの首、いつになったら墓前に並べてくれるのか。待ちくたびれたぞ」と、今にも言いだしそうです。それに対して私は「お言葉ですが、ひいおじい様の時代とは社会通念も法律も変わっていて、朝日脳で汚染された生首の採取・運搬・販売・陳列は禁止されています」と言い訳でもして許してもらおうか思っていたのですが、その白髭老人は龍平ではなく、全国高校野球選手権大会の化身(笑)だそうです。

龍平は、比喩ではなく、元服までした本物のさむらいでした。明治維新がなく、また本人が何もしでかさなかったら、地方武士として一生を終わっていたはずです。いくつか残っている写真を見ても、血の気に満ちた眼光といい野獣じみた立ち姿といい、平成生まれのイケメン俳優がリアルに演じること自体、無理な話です。有名な羽織袴で始球式のとき龍平は65歳。役者として脂が乗り始めた35歳に特殊メイク……意味不明です。正体不明の不気味な男(「ゆる山龍ぴょん」と呼びましょう)に「全力で応援」されても、たいていの選手は気持ち悪いだけでしょう。

ここから先は憶測ですが、撮影の段階まで「竜ぴょん」は「龍平」を名乗る予定だったところを、トラブルを避けるために、急遽、「全国高校野球選手権大会の化身」になったのではないでしょうか。だとすると賢明な選択だと思います。もし、「龍平」を名乗っていれば、本人から、さらし首の追加オーダーが出かねません。演じた山崎育三郎氏のキャリアのためにも、この件は忘れてしまうのがいいと思います。おい、竜ぴょん、二度と出てくるなよ。

前代未聞のトラブル続き

とはいえ、今年の甲子園、良くも悪くも(というより、かなり悪い意味で)忘れられない大会になってしまいました。実質無観客、五輪なみに貧相な開会式、途中出場辞退2校、前代未聞の連続です。天候にまで祟られ、どしゃぶりの中で散々泥仕合を強要されたあげくコールド負けしたチームもあり、日程もぐちゃぐちゃです。

KozieZ400GP /Photo AC

こうした前代未聞多発の中で、無観客開催はかなり早い段階から決まっていたようです。夏の甲子園は仮にコロナがなくても保健関係が大変です。数年前の話ですが、熱中症が多発したこともあり、球場内に10床程度の医務室(書類上は病院らしい)が完備されていました。スタッフは、新聞社の産業医たちが中心でしたが、救急車が来ることもありました。

今夏、不特定多数の怪我人・急病人が運ばれてくる医務室では、コロナ対策は大きな負担増になります。緊急事態宣言下の西宮市で、外部の医療者の応援は頼みにくいでしょう。さらに、救急車など呼ぼうものなら、五輪反対の朝日が何をしているとボロクソに非難されます。よって、学校関係以外の無観客は止むを得なかったでしょう。

この件で、一番泣きたいのは、阪急阪神ホールディングスでしょう。ご存じの通り、高校野球では甲子園球場の使用料は無料で(なぜか地方予選は有料使用が多い)、その代わり阪神は電車の運賃で回収するという大正時代からの構図があったのですが、去年今年と無観客。今年はおまけに、日程は延長されるは、長時間のナイターは多発するは、無理な雨天試合でグランド整備に手がかかるはで、やたらと物入りになってしまいました。経費は高野連も負担するらしいのですが、球場側も無傷ではすまないでしょう。

熱中症や雨天コールドゲームの時で必ず出てくる話は、ドーム球場での開催論ですが、タダで貸してくれるドームがあるとは思えません。それどころか、近い将来、甲子園の有料化が検討されるはずです。将来、高校野球の動員力が低下すると、甲子園球場さえも有料化が検討されるはずです。そのキッカケになりかねない2年連続の無観客開催は、主催者にとってかなり頭の痛い問題でしょう。

こうまでして守り切ろうとした、「無観客バブル方式」にも大きな穴があります。応援団、特にブラスバンドです。野球が「汗と涙の甲子園」なら、応援団は「汗と唾液」の甲子園です。大声の声援では唾が飛びますが、さらに大きな音の管楽器ではもっと唾液が出ます。トランペットなどの金管楽器には唾抜き用の穴があるぐらいで、吹けば大量の唾液が分泌されるということです。もちろん、飛沫は周囲にも飛び散ります。そのため吹奏楽部は通常、全員が濃厚接触者で、しかも、中高生はこの夏の段階でほぼワクチン未接種でしょう。

「アルプススタンドは屋外だから大丈夫」と思われるかも知れませんが、ぶっつけ本番で甲子園に乗り込む学校はなく、自校の音楽室などでたっぷり練習します。応援の練習が許されるなら、学校としては演奏会やコンクールの練習もダメとは言えなくなります。

さらに、テレビからコンバットマーチが全国に流れれば、日本中のブラスバンドが活性化し。合唱や軽音も引っ張られることになります。オリンピックが国民全体の自粛ムードを破壊したのと同様、甲子園は若者の音楽部活の自粛を破壊しました。今後、日本中の音楽室でクラスターが出現しても全く不思議はありません。

朝日脳に求めたい反省の日々

重大なことをいつのまにか雰囲気で決めてしまうという日本人の悪い癖を考えれば、五輪と同様、甲子園も後から思えば、“感染地獄”への大きな分岐点だった、ということになるのかも知れません…と、ここまで記事を書いていたら、8月22日から応援団を含む、野球部員以外の生徒の入場が禁止されました。危険性を分かっていたのなら、最初から対応しておくべきだったと思います。

夏の長雨といいコロナの第五波といい、今年の甲子園は東京オリンピック以上に呪われた大会となってしまいました。ゆるキャラまで作られた村山龍平の呪いなのでしょうか。だったら、閉会式の最中、稲妻が誰かを直撃し黒焦げにするでしょう。曾祖父はそういう男です。

ちなみに、私は、龍平を愚弄した朝日脳のみなさんには、長い老後にじっくりと反省の日々を過ごしていただく方が、人生100年時代にふさわしいと思うのですが、いかがでしょうか。

 

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