東京オリパラのメダルで世界が注目!日本の「都市鉱山」(後編)

坂田薫『コテコテ文系も楽しく学ぼう!化学教室』第11回
2021年08月29日 06:00
化学講師
  • 東京オリパラのメダルで使用され、注目を集める都市鉱山。今回は問題点を解説
  • 小型家電リサイクル法改正前の小型家電の多くは廃棄物扱い。掘り起こしも規制
  • いかに回収し低コストでリサイクルするか。メダルプロジェクトがきっかけに

世界中から資源を集め、発達してきた日本。そしてそれら資源は、いつの間にか、世界屈指の鉱山である「都市鉱山」へと姿を変えていました。前編の「都市鉱山の重要性」に続き、後編は「都市鉱山が抱える問題点」をお話します。

実はお宝の山?(baranozdemir /iStock)

都市鉱山が抱える課題

「都市鉱山に眠る資源を回収し、リサイクルできれば、日本は世界有数の資源国になれる」。これは間違ってはいませんが、そんなに簡単な話でもありません。というのも、前編で登場した「日本の都市鉱山に蓄積されている金は約6800トン」という数値は、あくまでも「蓄積量」であり「埋蔵量」ではないのです。「蓄積量」とは散在している金属そのものの量で、利用できる状態のものではありません。

では、どんなところに金属が散在しているのでしょうか。冷蔵庫やエアコン、テレビ、洗濯機などは「家電リサイクル法」、PCや小型二次電池は「資源有効利用促進法」の対象として、比較的早い段階からリサイクルがおこなわれてきました。しかし、スマホ、デジタルカメラ、携帯音楽プレイヤーなどの小型家電の多くは、2012年の「小型家電リサイクル法」公布まで、一般廃棄物として処理され、不燃物として焼却・埋め立てられたり、中古品として海外に流出していたのです。

焼却・埋め立てなど「ごみ」として処理されたものは「廃棄物処理法」により掘り起こすことは禁止されているため、現時点ではリサイクルの対象になりません。当然、「蓄積量」にはこれらも含まれています。「いったいこれまで、どれだけの資源が「ごみ」として処理されてしまったのだろう」と考えるとため息が出てしまいますね。

しかし、ため息をついている場合ではありません。家庭で眠る「使用済みの家電」は都市鉱山の大きな鉱脈の一つ。この鉱脈を生きたものにするには「それらをいかに回収し、低コストでリサイクルするのか」が重要であり、その中でも「回収」の部分は「わたしたち一人一人の意識にかかっている」と言っても過言ではありません。

この「わたしたち一人一人の意識」を変える一つのきっかけになったのが、東京オリンピック・パラリンピックに向け実施された1つのプロジェクトでした。

26日、パラリンピック日本勢金1号の競泳・鈴木孝幸選手(写真:ロイター/アフロ)

日本にしか作れないメダルを

環境省は、東京オリンピック・パラリンピックに向け「環境に優しい大会」と「環境都市東京」の実現のため、様々な取り組みを進めてきました。その一つが「東京2020五輪に必要なメダル約5000個を全てリサイクル金属で作る」という国民参画型の「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」です。みなさんはご存知でしたか?

このプロジェクトは大成功を収め、メダル5000個分に必要な、金30kg、銀4100kg、銅2700kgを100%回収達成。メダルに必要な金属を100%リサイクルで賄うのは五輪史上初で、BBCも「驚きの素材」と紹介しました。

ただし、これで終わりになってはいけません。環境省はメダルプロジェクトの成果をレガシーとして活用し、自治体、認定事業者等と連携した「アフターメダルプロジェクト」を実施。普及・回収促進イベントなど、小型家電リサイクル制度の普及促進に向けた取り組みをおこなっています。

わたしたちも、東京2020五輪の思い出話の一つにすることなく、資源を次の世代につなぐための責務として、継続して意識、行動していかなくてはいけませんね。ひとまず、引出しの奥に眠っている古いスマホを掘り起こしに行くところから始めてみましょうか。

中学生でもできる?金のリサイクル

都市鉱山の活用に向け、研究も進んでいます。例えば金のリサイクル。リサイクル時には回収された電子部品などを溶かすことから始めますが、金は「最もさびにくい金属」で化学的に安定であるため、溶解させるのは簡単ではありません。溶解させるためには、取り扱いの難しい物質やプロセスが必要になります。

しかし、それを「中学生でもできる」容易な方法で可能にする液体が開発されました。その名も「有機王水」。有機王水を用いれば、金を短時間で容易に溶解させることが可能。さらに、水を加えるだけで溶解した金を析出させ、高濃度で回収すること可能。これが実用化されれば、日本の都市鉱山の活用はまた一つ前進することでしょう。

小さな行動が、大きなチカラに

日本の都市鉱山を「生きた鉱山」にすることは、研究者だけでなく、わたしたちの挑戦でもあります。目の前に転がっている用済みのスマホはちっぽけに感じるかもしれませんが、それを回収場所に持っていく行動は、きっと未来に向けた大きなチカラになるはずです。

 

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