「二階外し」岸田氏が“突然変異”でまさかの支持率爆上げ⤴︎
日経調査で小泉氏より上に!「覚醒」は本物か?- 日経調査で岸田氏が自民党総裁選候補者で上位に急浮上。「二階外し」発信成功
- 選挙の裏方経験者の筆者から見ても気づいた「2つの変化」とは?
- サプライズ効果が続くかどうか、政策などで二の矢、三の矢をいち早く打てるか
自民党総裁選(9月29日投開票)の初動レースは、岸田文雄前政調会長が「想定外」のスタートダッシュを見せた。
日経新聞が昨晩発表した世論調査によると、「次の自民党総裁にふさわしい人」で、岸田氏は、1位タイの河野太郎、石破茂両氏(ともに16%)に続く13%の支持を獲得し、菅首相を2ポイント上回った。自民党支持層に限っても、菅氏(20%)、河野氏(18%)に続く14%の支持を集めた。
ちなみに近年化けの皮が剥がれてきた小泉環境相にも全体(9%)、自民支持層(8%)ともに大きく上回る「快挙」となった。

「優柔不断」から脱却 !?
昨年8月末の同じ調査で岸田氏は全体で5位の6%。自民支持層に限っても同じく5位の9%と沈んだ。小泉氏には全体14%、自民支持層13%と水を開けられており、発信力や一般的な知名度の不足が大きな課題だった。それどころか4月の参議院広島再選挙で全力支援した自民候補がまさかの惨敗を喫し求心力が急低下。それでなくても、河井案里氏の件を含め、菅首相や二階幹事長など党執行部に広島の選挙で煮湯を飲まされ続けてきたのは周知の通りで、首相の座はほぼ無くなったと目されていた。正直、筆者も9割方無くなったと思い、SAKISIRU創刊時の初署名記事で書いたものだが、その時点で岸田氏のここまでの大逆襲を誰が予想していただろうか。
岸田氏の好発進の理由は紛れもなく「二階外し」に舵を切った点だ。党の役員任期を最長3年とする公約は、幹事長に歴代最長の5年居座り続ける二階氏への事実上の対決姿勢を明確にしたもので、時事通信の解説記事が配信先のヤフーニュースで6600超のコメントを集め(29日深夜時点)、その多くが好意的に受け止めるという「これまでにない大反響」となった。これまでどこか優柔不断なイメージのあった岸田氏が大胆な言動に出たというサプライズ効果も絶大だった。
筆者が気づいた明らかな変化
確かに26日に総裁選出馬の記者会見を見た時点で、「二階外し」以外に筆者自身もあきらかな変化を二つ感じていた。選挙の裏方を過去にやった経験から述べてみたい。
一つは「らしくない演出」(広島県内の自民地方議員)。岸田氏は会見で「国民政党であったはずの自民党に声が届いていない」との思いを強調するため、「自民党が野党に転落してから、10年以上続けてきた」という国民の声を聞き書きしたノートを「宝物」として掲げてみせたのだ。小池都知事がフリップを効果的に使うように、記者たちの耳目を集めるアイテムは効果的な手段だ。

二つ目は記者たちとの質疑に90分以上も費やしたことだ。自民党の派閥の領袖クラスでは極めて異例で、政界広しでも政治家時代の橋下徹氏が記者たちの質問がなくなるまで長時間やっていたのが珍しがられるほどだ。「橋下方式」は、記者たちに丁寧に説明するという岸田氏の誠実さをアピールするとともに、記者対応が課題に挙げられる菅首相や二階幹事長への強烈な当て付けを演出することにもなる。
それでいて140字の世界も怠らない。岸田氏がツイッターを開設したのはいまの総裁選候補たちの中でも最も遅い昨年4月。フォロワー数もやっと2万を超えたばかり。当たり障りのないコメントだけでなく、先日のアフガニスタン政変の折には、外相経験者にもかかわらず、反応したのが2日遅れで、実は筆者周辺の“安倍シンパ”たちは「反応が遅い」「他人事のようなコメント」などとかなりの不満を見せていた。総裁選に向け、テコ入れ必須と思われたが、出馬表明以後は自らのツイートにリプライを重ね画像や動画を挿入、ハッシュタグも使い始めるなど工夫も伺える。
複数の政界関係者によると、優秀な広報チームが結成された模様で、永田町にその人ありと言われた空中戦のマジシャンを軍師に迎えたとの情報があり、それを聞いて納得だった。しかし某環境相ではないが、ブレーンがどんなに優秀でも、本人の覚悟や決意がなければ虚飾はたちまち剥がれるし、何より熱源がなければ選挙で最も重要な熱伝導もない。「宏池会のプリンス」林芳正氏の衆院転出が予想以上に危機感に繋がっているようだ。岸田氏周辺からすれば「やっとやっと目覚めてくれた」という思いだろう。
二の矢、三の矢を打てるか
しかし本番はこれからだ。問題は「二階外し」「打倒菅」を掲げたはいいが、岸田氏がどんな政策をやりたいのか。党改革は重要だが内輪の話にすぎない。国民との3つの約束、3つの政策はブログを見る限りはやや総花的だ。この点、高市早苗氏が保守層向けに尖らせたものとはいえ、ニューアベノミクス(サナエノミクス)、経済安保を融合した成長戦略など個性的ではある。岸田氏のブログでは「領土・領海・領空を守り抜く覚悟」もうたうが尖閣の二文字がない。
岸田氏のサプライズ効果が続くかどうかは、二の矢、三の矢を次々に繰り出せるかどうかだ。成長と分配の好循環による「新しい日本型の資本主義」はパンチにかけ抽象的だ。財政についても宏池会伝統の財政規律重視のイメージから保守層に「財務省寄り」と思われているが、もし筆者がブレーンなら、2年前に「財政タカ派からの部分修正」として注目された、IMFの元チーフエコノミスト、ブランシャール氏の理論などを活用し、日本の長期停滞特有の「低金利限定」の財政赤字容認を打ち出して不安を和らげるところだ(注・あくまで選挙向けの献策するならばの話で、筆者の真意ではなく、藤巻さんにはご容赦いただきたい)。
ツイッターもネットニュースに随時取り上げられるようなキャッチーな発信ができるのか。維新の松井代表のように時には政敵にも大胆に絡むような機動力を発揮するのか、この辺りは本人や広報チームのスピード感や感度が問われる。

他方、筆者は岸田氏を含むどの候補にも一長一短を感じている。岸田氏については菅首相のように、電波改革も視野に入れた大胆な行政改革をやる気があるのか、あるいは、コロナ対策で医師会を相手に渡り合い、場合によっては入院病床と人材確保のために合憲の範囲内で大胆な医療規制改革を行えるのか、人の良さがある調整型リーダーだけに決断力に不安を残すのも確かだ。総理総裁になれば、開成高校の大先輩でもある読売新聞・渡邉恒雄主筆の覚えはめでたかろうが(意外にも開成OB初の首相)、コロナで仕損じたり、優柔不断さに戻ったりすれば来たる総選挙での逆風は変わるまい。
いずれにせよ、岸田氏と陣営にこれまで最も欠けていた本人の覚悟と攻めの広報体制が備わりつつあるのは、予想外のことであった。岸田陣営が仕掛けた空中戦を、菅首相の陣営がどう迎え打つのか。高市氏や下村氏が健闘を見せるのか。不出馬と言われている石破氏が電撃的に参戦するのか。派閥の統制が昨年の総裁選ほどは効きづらいとも言われている中で、安倍氏や麻生氏、そして昨年も暗躍した元議員の“元老”たちが水面下で何を仕掛けるのか……。
俗物根性丸出しで総裁選ウォッチをしたくない理性のウラで、政局的にも政策的にもついつい見入ってしまう戦いになるかもしれない。
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