横浜市・山中新市長への質疑応答を全文掲載!新聞テレビが疑惑スルーの本音もゲット

筆者の直撃に「リサーチフェローと研究員は同義」と説明
2021年08月30日 20:30
ライター/SAKISIRU編集部
  • 「渦中」の山中竹春氏が横浜市長就任記者会見。全文再録!見栄えはいい
  • 会見では「当局と連携」「検討します」を連呼。フリーランスが厳しく追及
  • 大手メディアは“山中疑惑”を完全スルー、ヌルい質問に終始

横浜市長選で初当選直後、経歴詐称の疑いなどで刑事告発の動きも出てきた「渦中」の山中竹春氏。その就任記者会見が30日、市役所で行なわれた。記者クラブ非加盟の媒体も参加でき、私(筆者)も『SAKISIRU』の記者として参加した。

会見が行われた9階「レクチャールーム」に入ってまず驚いたのは、空間の大変な“密”ぶり。学校の教室より少し広い程度の一室に、記者とカメラマン、市役所職員ら約50人が詰め込まれている。ソーシャルディスタンスの概念はなく、隣の人との距離はたった20〜30センチ程度。完全に“ビフォーコロナ”の状態だ。区役所の職員たちは、思考停止しているのだろうか。難関の公務員試験を突破しているはずなのだが……。

筆者撮影

見栄えは良い新市長

14時の定刻となり、山中市長が入室。3分ほどかけて表明演説を行なった。と同時に、部屋中に機銃掃射のような勢いでキーボードを叩く打鍵音が広がった。何かが異様だ。

余談だが、この人たちは本当に“記者”なのか。やっていることは“文字起こし業者”とまったく変わらない。ノートパソコンにかじりついてメモを取るより、市長の表情やしぐさ、取り巻きの職員たちの様子などを観察するほうが、記者としてよっぽど重要なのではないか。

事情は分かる。新聞記者もテレビ局の記者も、他社に遅れないよう一刻も早く原稿を仕上げないといけないのだろう。だが、記者クラブで1人か2人文字起こし業者を雇い、共同運営すれば良いのではないか。会見中にネットにつないで、リアルタイムで文字起こしを加盟社同士で共有することも、技術的に十分可能なはず。高度な訓練を受けた記者たちが集団で文字起こしに夢中になっているのはひどく滑稽で、改善の余地が大きいと感じられた。

話が逸れた。ロイヤルブルーのスーツとネクタイに身を包んだ市長は堂々としており、端的に言って見栄えが良い。外見だけで選ぶとしたら、私(筆者)も迷わず山中市長に投票したに違いない。口調は丁寧で噛むようなこともない。きっと、事前に何度も練習したのだろう。

山中市長は2分43秒かけて、次のように述べた。

「みなさま、こんにちは。第33代の横浜市長に就任しました山中竹春でございます。どうぞよろしくお願い致します。
横浜市政を預かる責任の重さを改めて痛感しており、身の引き締まる思いです。今、生活を抱える環境の変化が著しく、将来に希望を持ちにくい社会になってきていると感じています。そのようななか、魅力ある都市として住み続けたい街横浜、移り住みたい街横浜を作って行く。そして、企業からも選ばれる街横浜を作って行く。その決意を新たにしています。

このたびの選挙活動を通して、市民の皆様より多くのお声を頂戴しました。どのような点が課題となっているのか、また、どのようなニーズを持たれているのか、現場の声を聞く重要性を実感致しました。今後も現場のご意見を丁寧にお聞きし、また、データの効果的な活用も踏まえながら、あまねく議論をお越し、住民自身による世論を作ることで、市民のための市政運営を進めて参ります。

市民の皆様、市会の皆様、市職員の皆様、この三者と市長とか横浜をさらに魅力的な都市にする。この共通のゴールに向かって一体となり、対話を重ねながら、今の横浜のため、そして将来の横浜のために希望の持てる社会の仕組みづくりを行なって参ります。皆様のご期待に答えることができるよう、誠心誠意努力をして参ります。どうぞよろしくお願い致します。ありがとうございました」

決意表明を述べると、記者会見の幹事社である共同通信から代表質問を行なった。司会の女性が「それでは質疑に入ります。幹事社、共同通信からお願いします」と発声し、次々と社名を当てていく。挙手している人を選んでいるというより、機械的に社名を読み上げているような感じだ。

IRの代案「税収増加も必要」

筆者撮影

・共同通信
――登庁した感想は?
横浜市政を預かる責任の重さを痛感し、身の引き締まる思いを感じた。
――市長として最優先で取り組みたいことは?
現場の意見を丁寧にお聞きする、住民自治による世論を作って行く、市民のための市政運営を進めて行く。その原点は常に忘れないようにする。市政を預かり、まずはコロナの問題に立ち向かう。IR誘致については、市民からさまざまな意見を頂戴し、即時撤回を公約として当選したので、誘致撤回の手続きを速やかに進める。

――当選後の1週間をどう過ごした?
市の職員からレクチャーを受けたり、私自身で色々な資料に目を通す、支援者へのご挨拶などに一週間の時間を使った。

・毎日新聞
――IRの撤回は具体的にいつまでにどうする?
スケジュールは当局と検討した上で、速やかにスケジュール感を出したい。可及的速やかにと考えています。まだ初日ですので、当局と議論します。
――人事の面で副市長刷新など、方向性はあるか?
副市長4名はこれまで市政の運営を担い、これまで尽力してきた方々。一方、副市長の方々がどのように考えているのか、まだ話し合いの場を持っていないので、話し合いをさせて頂きたいと考えている。

・NHK
――IRについて宣言はどのように出す? コロナについて病床確保などの具体策は?
IRを止める宣言を出すと先週申し上げたが、私自身の口から市の公式スタンスとして意見を発する機会が必要だと考えている。そうした宣言を行い、どういったスケジュールで手続きを進めるか、当局と連携しながら進めていきお示しをしたい。
コロナについては、ワクチンの接種、検査体制の拡大、医療体制の確保、こういったことは従前から申し上げているので、それぞれ効果的な施作を現状を把握した上で、対策を打ち出したい。

・読売新聞
――IRについて経済活性化の代替案は?
今後厳しい財政運営が予想されるので、当局を中心に対策を検討する必要がある。3000以上ある事業のうち、見直しも必要かもしれませんし、税収を増加させていくことが必要なので、そうした対策も検討したい。

――ハーバーリゾート構想は?
山下埠頭の整備については、代替案を策定する予定です。山下埠頭の歴史、あるいは特性を生かす必要がある。横浜のなかでもシンボル的な場所なので、歴史や特性を踏まえた整備案。市民から理解を得られる整備案を策定することが重要だと考えている。市民の皆様からも意見を伺う機会を作っていく。

――政治歴のなさをどう補っていく?
一つは、市民の皆様ときちんと真摯に対話を重ねていく。市会の皆様とも真摯に対話を重ねていく。さらに市職員の方々、市長と連携をしていく重要な方々ですので、きちんと連携をし、理解をえるように勤める。いろいろな主体がいるので、その方々の理解を得るという丁寧なプロセスを欠かさないようにしたい。

・神奈川新聞
――コロナ対策の具体案は? 市の権限でできることは限られるが、県との連携は?
県との連携に関しては、いろいろな情報を頂いております。県との連携が十分であるとか不十分であるとか、さまざまな情報を横浜市の外にいる立場で見聞していたが、正しい情報の把握に勤める。県との連携は欠かせないので、非効率なことが起きないよう連携を進める。具体的なことはこれから協議していく。
県がやっていることを横浜市がやるとか、その逆とか、そういった非効率なことはなくすべき。今は緊急事態なので、災害医療の状態には言っている。一刻も早く効率的な施策を展開できるよう調整する。

――24時間のワクチン接種体制を掲げたが?
接種体制の加速化を進める上で、集団接種をどう弾力的に行うか。一案として24時間の接種体制も出したので、こういった可能性に関して検討したい。

筆者撮影

・日経新聞
――データサイエンスの専門家として、どうコロナ対策に生かすか?
データを分析する、解析することがデータサイエンスだと思われるが、問題解決をするために、どういうデータが必要なのか、そういう整理から始めることが必要。コロナだと区ごとでどういう状態か、データがあるのかもしれないが、オープンデータとして整備されていないところもあると思う。可視化も十分することで、数字の羅列だけではわからないことも可視化をすることで見えてくることもある。そういうことを積極的に行いたい。
――市長がすることは意思決定ではないか?
職員の意識の共有の情勢は必要。データサイエンスといっても広いので、専門性が必要な部分とジェネラリストの部分と分かれるので、役割文体をしながら進めていきたい。今後長期的なデータサイエンス、データ活用については適切な体制を検討してまいりたい。

・時事通信
――IRについて、9月の最初に事業者選定委員会が開かれるが、どうするか?
中止と考えている。

・朝日新聞
――少数与党の市長として、どのように市政を進めるか?
市会の各会派の先生方、議員の方々とご挨拶したが、ゴールは共通であると。横浜市を魅力的にし、横浜市民が住んでよかったと思える街づくりをする、企業からも選ばれる街となる。ゴールは共通なので、どう進めていくか。色々な考えもあるので、是非対話を進めていくことが必要だと思う。

・朝日新聞(別の記者)
――全員給食などの財源は?
関係部署、当局と十分に連携しながらスケジュールを作っていきたい。登庁初日ですので、今後検討してまいりたい。

朝日新聞は、別の記者が2人連続で指名された。立憲民主党と社論が近いことが影響しているのだろうか。

・共同通信
――選定委員会の中止はどのように?
関係部署と検討して、早期に中止に向けたスケジュールを作りたい。

――選定委員会は今後開かない?
はい。

フリーランスと非記者クラブメディア

ここまでが、記者クラブ加盟社の質問。続いて、「日仏共同テレビ局フランス10」という媒体の記者が当てられた。赤いTシャツ姿で声が非常に大きく、これまでのサラリーマン然とした記者たちとは、明らかに雰囲気が異なる。同僚は野球帽を後ろ向きにかぶっていた。あまりの声の大きさに、職員たちが「下げて、下げて」と手を上下に動かすジェスチャーを繰り返した。

・フランス10
――4つ質問がある。旧市庁舎の売却についてどう思うか。中学校の給食、いわゆるハマ弁という冷たい給食を15分で食べることについてどうか。花博の実施をどうするか。上瀬谷地区の空き地をどうするか?
旧市庁舎の売却については経緯を知りたいので、今後、事実関係の確認をしたい。給食、ハマ弁については、ゴールは中学生がこの給食は美味しいと思えるものを提供すること。冷たくて美味しくないということであれば、目標を満たせませんので、しかるべき対策を取るべきだと思う。
花博とか上瀬谷地区については、当局と相談しながらより良い案、市民から理解を得られる案を速やかに検討を開始する。

「グレーのジャケットの方」と司会が言い、私の隣の席に座っていた記者が指名された。

・フリーランスの畠山理仁氏
――山中さんは「コロナの専門家」ということで良いのか?
データサイエンスの手法を用いて、コロナ領域で貢献してまいりました。

――「中和抗体」の研究以外で、コロナ研究に関わったことがあるか?
お薬の治療効果についての検討や、抗原検査の検査性能の検討などを行なってきた。

――弁護士の郷原さんが経歴やパラハラ、強要未遂の問題を取り上げているが、山中さんの反論はなぜなかったのか?
選挙に出るということについては、本当にいろいろなことを書かれるんだなと正直なところ思いました。市民の方にしっかりと自分の取り組みを理解してもらう。その努力がもっとも重要なのではないかと思っている。

――音声は聞きましたか?
存在は聞いているんですが、内容については途中まで聞いたが、全部は聞いていません。

――音声は山中さんのもの?
はい、そうです。

・NHK
――花博は、方針を見直すことはあり得る?
検討します。花博についてはどういう議論があったか承知している。当局と連携していく。

横浜市役所/筆者撮影

ここでようやく私が指名された。

サキシル(筆者)
――02年〜04年まで、アメリカ国立衛生研究所で「リサーチフェロー」の肩書きを持っていたのは事実? これまでの経歴は?
まず、ナショナル・インステチューツ・オブ・ヘルス、NIHで研究員をやっていたことに関して、詐称はございません。

「詐称ではないか」とは聞いていないのに、市長のほうから「詐称はございません」と答えた。疑惑を持たれていることを、認識しているという意味だ。

――リサーチフェローという肩書きで良い?
研究員を表す一般的な用語として、リサーチフェローという言葉を使ったことはございます。ただ、リサーチフェローに関しても、機関ごとに定義が違う場合もあるんですが、研究員を表す用語としてリサーチフェローと使っています。

――リサーチフェローだったことは事実?
研究員であったことに詐称はございません。

このあたりから、質問と答えが噛み合わなくなってくる。「リサーチフェローだったか?」と質問しても「研究員であったことに詐称はない」としか返ってこない。

――リサーチフェローだったということ?
研究員を表す一般的な用語として、リサーチフェローという言葉を使ったことはございます。あるいはフェローという言葉を使ったこともございます。

――研究所のホームページには、「リサーチフェロー」の肩書きは博士の学位を持っている者に与えられるとある。02年に博士の学位を持っていたのか?
博士号を取得したのは2003年です。
研究員を示す用語としてよく研究員とリサーチフェローを同義に使うこともございますし、研究員とフェローを同義に使うこともある。そこは言葉の問題なのではないか、使い方なのではないか。NIHで研究員として研究活動をしていたことに関して詐称はございません。

追加でパワハラ疑惑などの質問もしたかったが、すでに3分が経過していたためか、即座に次の質問者が指されてしまった。

・フリーランスの横田一氏
――文春に違法接待の疑惑記事があるが、受け止めは? 平原副市長が抗議して撤回要請をしているが、再調査はしないのか?(※注:8月26日発売号の『週刊文春』が、「菅義偉首相の側近である平原敏英横浜副市長がIR業者から違法接待を受けていた」と報じた。横浜市は「強く抗議し訂正」を求めた)
文春の報道に関しては、前の市長の時代のことですので、まず本人に事実関係を確認する。

――菅総理の息のかかった幹部職員が多いという声もある。意気込みは?
特にお答えすることはございません。平原副市長にはインタビューとかされたんですか。もしされていたら、ご本人がどう言っていたか教えて欲しいなと思いまして。私もまだ先ほどご挨拶しただけで、それ以上に話してませんので。

――菅総理に1000万円の献金要請をしたと言われている。徹底検証するのか?
ご本人に中身と、週刊誌報道と抗議文の中身について確認することから始めたい。

――オペラ劇場については見直し中止? 定例会見ではフリーも質問可能な状態が続くか?
オペラ座劇場についても、関係当局と手続きについて検討していく。建設中止については、選挙活動中から申し上げていた。その方向で調整したい。
定例会見の出席の方々については、これまでの経緯なども聞いた上で、検討したい。

突然の会見打ち切り

ここまで約35分間。唐突に司会の女性が終了を宣言した。

「すいません、このあと予定がございますので、本日はこれで終了したいと思います。定例会見を終了致します」

畠山氏が手をあげ、指名を待たずに大きな声で質問を投げかけた。

――すいません、郷原さんに反論などはされるのでしょうか?
えー、今ですね…。

市長が語り始めたところで、今度は男性職員が割り込み、市長の口を塞いだ。

「次のスケジュールがありますので申し訳ございません。会見のほうを終了致します」

台から降りようとしたタイミングで、別の男性が食い下がった。市長のパワハラ疑惑についていち早く報じていたフラッシュだった。

山中竹春氏ホームページより

・フラッシュ
――すみません、週刊フラッシュなんですが、ホームページに「憶測をもとにした事実無根の記事」とあります。具体的な反論を頂けますか?
フラッシュですか。フラッシュに関しては、こちらの見解はホームページ等を通じて公表させて頂いていたかと。

「フラッシュ」という媒体名に鋭く反応し、一瞬、市長は動揺したように見えた。

――ホームページには具体的な内容がなかったと思いますが。具体的な反応は?
ホームページに記載してございます通り。

まともに答えようとせず「ホームページに記載してある」と繰り返し、職員に促されて立ち去ろうとした。パワハラ疑惑についての説明は私も聞きたかったので、声を張り気味にして質問を投げかけた。

「事実無根であれば、訴訟を起こすなどの考えはありますか?」

挙手していない状態で質問するのは少々マナー違反とは思いつつ、一方的に終了される以上は仕方ない。だが、市長はこちらを見ることもなく、職員とともに会見場から去って行った。

会見中、山中市長は「市民の皆様ときちんと真摯に対話を重ねていく」と言い、「対話」という言葉を繰り返した。だが、疑惑を追及される場面ではマシーンのように同じ言葉を繰り返し、対話が成立しなかった。

会見後、一般紙の新聞記者からこう声をかけられた。

「郷原さんのことは私も知っているんですが、まだ新聞で取り上げられる話ではないんですよね」

確かに、この話はまだ疑惑段階であり、一般紙で記事にできる話ではないだろう。だが、記事にするしないは別として、質問ぐらいしても良いのではないか。記者会見に出席していた大手メディアの記者たちは、全体的に市長にとって“答えやすい質問”が目立った。市長と正面から対立することは避けたいという“忖度”が働いているのだろうか。

記者クラブに属していないフリーランスなどの記者をある程度入れたほうが、幅広い質問が問いかけられ、“知る権利”につながると感じた。だが、非加盟社の質問は時には偏りがあったり、質問の仕方が上手ではない時もあり、幹事社などが最小限度の審査はしても良いかもしれない。それでも、過去にある程度の実績があれば、記者クラブ以外の者もなるべく参加を認めたほうが、より良い政治につながるだろう。

 

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ライター/SAKISIRU編集部

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