“菅のから騒ぎ” 大手新聞5紙の解散報道「飛ばしすぎた」のはどこか?
読売、朝日、日経、毎日、産経を読み比べて分析岸田氏が「二階外し」を仕掛ければ、菅首相が幹事長交代を決め、総裁選の前の解散断行もちらつかせる…。自民党総裁選に向けた駆け引きが激しくなるにつれて、スクープ狙いのマスコミ各社の政局報道もヒートアップするばかりだ。
そんな中、菅首相は1日朝、首相官邸で記者団の取材に応じ、「「これまでも、皆さんからたびたびご質問がありました。その際に『最優先は新型コロナ対策だ』と申し上げております。今回も全く同じであります。今のような厳しい状況では、解散ができる状況ではないと考えております」とコメントした。

その前夜22時過ぎ、毎日新聞がデジタル版で「首相、9月中旬解散意向 党役員人事・内閣改造後」と速報し、テレビ東京も「菅総理「総裁選先送りも選択肢」と二階氏に伝達」と追随したことで、解散と総裁選の先送りムードが一時強まったように思われていた。菅首相の早朝のインタビューはその「答え合わせ」だったことを考えると、1日午後の時点の情勢では、毎日新聞の報道は勇み足だったことになる。
それでは毎日新聞以外の大手新聞各紙の報じ方はどうだったのか。眞子様と小室圭氏の結婚報道で衝撃の夜明けとなった、1日の朝刊紙面(東京本社発行版)の見出し一覧は以下になる。いずれも一面で扱われている。
- 読売:首相、9月中旬解散意向 衆院選10月17日投開票
- 朝日:首相「月内解散も選択肢」
- 日経:下村政調会長 交代へ 自民役員人事「9月中旬解散」観測も
- 毎日:首相 今月中旬解散意向 来週党役員人事 総裁選先送り
- 産経:首相、月内解散も視野 来週前半に党人事 内閣改造検討
パッと見ただけでは大差ないようにも見えるが、読売と毎日は主見出しのレベルでは「中旬解散意向」でそろい踏み、具体的な解散時期を入れている。ただ毎日は袖見出し(一番大きなサブタイトル)に総裁選先送りを明記し、本文中でも「総裁選を先送りする」と言い切った。読売も本文中で「先送りする意向だ」と綴ってはいるが、その直後に「ただ、総裁選の先送りには反発が必至で、総裁選を行った上で『任期満了選挙』とする案も残っている」と“但し書き”も。その意味でトータルで勘案すると、毎日新聞が最も突出したと評価でき、読売としては袖見出しに先送りを入れなかった分、悪目立ちをせずに済んだ印象だ。
なお菅首相が「石破茂氏の要職打診も検討している」と書いているのは読売だけで、政権与党に強い取材ルートを持つ強みをいかんなく発揮している。
他方、朝日と産経はどうだったか。日頃は自民党政権への距離と論調が真逆ながら、この解散見通しについては「視野」「選択肢」と判断を留保することで足並みを揃えた。
日経は、総裁選の前の衆院解散断行について観測や選択肢という書き方をしている点は他と大差ないが、総裁選出馬を見送った下村政調会長の交代を主見出しする“独自路線”。ただ、菅首相の人事構想としては当たり前のことを提示された感もあり、独自色を出そうとして結果的にインパクトを欠いたようにも見える。
実際、時事刻々と情勢が目まぐるしく変化し、コロナ禍での解散総選挙ということもあり、過去の解散前政局と比べても先読みが難しい。今回、一番飛ばしてしまった格好の毎日新聞の記事は、政治部11年目、40代の女性記者で、平河クラブ(自民党担当)のキャップをしているそうだ。そんなベテランでも先読みが難しい情勢であることを示唆しているとも言える。また、踏み込みぶりでやや読売が慎重な言い回しをできているのは、読売の方が記者の数が多く、情報の裏どりを含め、他の取材ルートを確保していることで体制の厚みの差が出ているようにも見える。
安倍政権時代は、読売新聞や産経新聞が解散報道を的確なタイミングで投下していたが、菅首相が最終決断をする段階で正確な情報を最も早く出し抜くのはどの新聞社か。「1日待てば発表される情報」を血眼になって争う記者クラブ特有の「特ダネ合戦」については、その非生産ぶりに辟易する一般読者が昔より増えてきた感はある。そのリソースを調査報道に振り向けるべきとの意見ももっともなことだ。
ただ、わずかばかり、あえて読者にとっての「意義」を見出すのであれば、先読みが難しい混沌とした状況にあって、どこのメディア、新聞社、記者が陰謀渦巻く情報戦の荒波をかいくぐって、正確な情報をお届けする底力があるのか。読者から見て、各新聞社の報道機関としての「真価」を試す機会くらいにはなるかもしれない。
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