池袋暴走事故:飯塚被告に禁錮5年の実刑判決で、トヨタがメンツ保つ

「異常認められず」6月に異例コメント

東京・池袋で2019年4月、横断歩道を通過中だった自転車の母子2人をはねて死なせ、9人に重軽傷を負わせたとして、過失運転致死傷の罪に問われた旧通産省工業技術院の元院長、飯塚幸三被告(90)の判決公判が2日、東京地裁であり、下津健司裁判長は禁錮5年の実刑判決を言い渡した。

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この事故では、飯塚被告が自家用車のトヨタ製プリウスについて「アクセルとブレーキの踏み間違えはなかった」と捜査段階から一貫して主張。公判に入っても無罪を主張し、被告人質問を取り上げた朝日新聞(6/21)によると、「エンジンが異常に高速回転してパニックになり、ブレーキペダルを踏んだがますます加速した」などと車のブレーキシステムに異常があったかのように述べていた。

これに対し、検察側はブレーキとアクセルの踏み間違えが暴走につながったと追及。飯塚被告の言い分を突き崩すため、捜査段階からトヨタ側に協力を要請。事故当時のスピードやブレーキの稼働状況についてデータが残っていたのを捜査で活用した。データは、航空機のフライトレコーダーに当たる「イベント・データ・レコーダー(EDR)」に保存されており、近年搭載する車両が増加。トヨタ自動車は2012年以降、全ての車両に付属しているという。

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トヨタが判決前に異例コメント

この裁判が結審する約3週間前の6月下旬、トヨタは異例とも言えるコメントを報道各社に発表し、

「本件の被告人が、裁判の中で、本件の車両に技術的な欠陥があると主張されていますが、当局要請に基づく調査協力の結果、車両に異常や技術的な問題は認められませんでした」

などと「無実」を改めて訴える異例の展開を辿っていた。池袋の事故以降、プリウスの絡む人身事故が何度かニュースになり、ネット上では「プリウスミサイル」と揶揄されることも。その中で、事故でプリウスに欠陥があるのではないかと取り沙汰されたこともあり、トヨタ側は「風評」に神経を尖らせていたとみられる。

NHKニュースによると、結局、この日の判決で下津裁判長は

「ブレーキとの踏み間違いに気付かないまま、アクセルを最大限踏み続けて加速させ、事故を起こした。車の速度は最終的には時速96キロに達していた。車に異常は認められず、故障をうかがわせる事情も一切ない

などと飯塚被告の主張を一蹴した。判決後、17時時点でトヨタ側が新たにコメントを出した報道や、ニュースリリースは確認できないが、パラリンピックの選手村近くで同社製自動運転のバスが選手をはねて負傷させ、出場辞退に至った事故が起きたばかりとあって、トヨタ側としてはメンツを保てて、少しだけ溜飲が下がるところだろうか。

 

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