橋下氏「最大の争点」と指摘。「医療提供に強制力」は総裁選で論じられるか?

「激しい反発が出るが国民のためにやり遂げなければ」
  • 橋下氏が日医の前会長が提言した病床確保や医療従事者の強制確保に言及
  • 自民党総裁選や衆院選で「争点」との認識。医療界からの反発は必至
  • 総裁選を争う岸田氏、高市氏、河野氏の見解は?野党は?

橋下氏(Wikipedia:CC BY 3.0)

元大阪市長の橋下徹氏が8日、ツイッターで医療体制の構造改革に言及し、自民党総裁選や衆院選での争点ですべきとの持論を述べた。

橋下氏は、日本医師会の横倉義武前会長らが緊急時の医療提供体制と法制度の整備を提言した内容を紹介した日経電子版の記事を引用。提言では、コロナのような緊急時に際し、病床や医療従事者の確保をする際に法的な強制力を持たせ、実効性のある対応ができるように要求。「すべての医療機関に対してより強制力のある法制度を整備し、運用面での実効性を担保する」ことを菅政権に申し入れたものだ。

橋下氏はこれについて「やっとこの動きが活発化してきた」と評価した上で「自民党総裁候補のうち誰が言い出すか。次の衆議院選挙でどの党が言えるか。激しい反発が出るが国民のためにやり遂げなければならない。選挙の最大の争点だ」と指摘。さらにリプ欄で「強制力のことを言わず・実行せずに、単に医療体制の強化だけを言うのは政治家ではなくコメンテーター・学者」とバッサリ切り捨てた。

全国で病床のおよそ8割を占める民間病院に対し、現行の法制度では、政府が強制力のある対応を求めることができず、「お願い」ベースにとどまっていることが病床逼迫の要因の一つとして指摘されている。昨年の第1波、第2波の時は、ネットメディアのごく一部でしか論じられなかったが、今年に入ってから日経新聞や東洋経済など経済媒体を中心に大手メディアでも論じられるようになり、ネットではこの問題への認知度が広がってきた。

そうしたこともあり、政府がコロナ病床を増やした病院に多額の補助金を出したのに、病床の利用度が低迷しているケースへの疑念や批判も強まっており、今月1日は政府の新型コロナ分科会の尾身茂会長が理事長を務める地域医療機能推進機構(JCHO)傘下の東京都内の5つの公的病院で、病床の利用率が伸び悩んだと報じられ、ネットで非難の声が巻き起こったこともあった。

101cats /iStock

橋下氏が「自民党総裁候補のうち誰が言い出すか」と注目する総裁選は、岸田文雄氏がこの日午前、高市早苗氏が夕方にそれぞれ記者会見し、自らの政策を披露した。ただ、岸田氏の政策会見は2回目で、経済政策の話題になったが、1回目の政策発表ではコロナ対策が主要テーマだった。「コロナウイルスは非常に変異が早く、残念ながらゼロにはできない」など現実的な認識を示し、健康危機管理庁(仮称)の設置など危機管理体制の強化をうたったが、緊急時の医療提供体制については「より強い権限を持てるための法改正」と述べるにとどめ、資料では詳細に踏み込んでいない。

高市氏はコロナ対策について「ロックダウンを可能にする法整備を始めなければならない」と述べたが、病床確保についての具体策には触れなかった。

河野太郎氏は正式な立候補を表明する前でここまで病床確保の強制性について目立った発言はない。政権発表はこれからで、近刊「日本を前に進める」でもコロナ政策については言及していない。

なお最大野党、立憲民主党は7日、枝野代表が記者会見し、「政権発足後、初閣議で直ちに決定する事項」7項目を発表したが、日本学術会議の人事や赤木ファイルの問題など、自民党政権のネガティブキャンペーンに力点が置かれ、コロナ対策についても「新型コロナウイルス感染症対策司令塔の設置」といった意思決定構造の改編を述べるにとどまった。

今のところ自民党総裁選も、野党側も病床確保のための具体策を十分に議論できているとは言い難い。医師会への忖度が働くのか、国民の健康と安全を最優先に大胆な解決策に動き出すのか、当面の注目ポイントになりそうだ。

 

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