高市氏にまたもドン引き:福島処理水「風評被害リスクある限り放出決断しない」
「中国や韓国と言っていることが同じ」の声も- 高市氏が総裁選出馬表明で福島原発の処理水海洋放出に後ろ向きな発言
- 風評被害対策や地元の理解なしに放出しない考え。自らの署名入り文書も理由
- 高市発言に他党議員や専門家から、むしろ風評被害を拡げるとの批判噴出
自民党総裁選に出馬表明した高市早苗・前総務相が9日、福島第一原発からの処理水の海洋放出について「風評被害を広げる可能性がある。そのリスクがある限り放出の決断はしない」と後ろ向きな発言をしたことが、自民党支持層にも波紋を広げた。

処理水の保管タンクが22年夏には満杯になる見通しであることから、政府は4月に海洋放出をすでに正式に決定している。これに対し、高市氏は当時から自らのブログで疑問視するなど、菅政権の対応と見解を異にしてきた。今回、総裁選出馬に当たって改めて異論を公然と述べた格好だが、高市氏の発言は、菅政権の海洋放出方針を支持する自民党支持層が失望するだけでなく、タンクの保管継続に反対してきた福島第一原発の地元、大熊町と双葉町の両町長が反発するのは必至だ。
高市氏が海洋放出に消極的な理由の一つにあげるのが、政府が2015年8月に福島県魚連宛てに出した文書の存在だ。高市氏のブログによると、政府はこの中で、処理水(文書では汚染水)のリスク低減について国内外に積極的に広報・情報発信することを約束。さらにトリチウムについての検証結果について「まず、漁業関係者を含む関係者への丁寧な説明等必要な取組を行うこととしており、こうしたプロセスや関係者の理解なしには、いかなる処分も行いません」と誓っていた。
自らの名前が使われた文書に固執
ここで問題をややこしくしているのが、この文書の差出人の名義だ。文書を作成したのは所管官庁の経産省だが、宮澤洋一経産相(当時)が海外出張中だったため、総務相だった高市氏が臨時代理として名義になっていた。高市氏は後年、文書の名義が自分になっていたことをテレビ報道で知ったといい、ブログでは「私が経済産業省から当該文書の説明を受けたという記録もありません」「内容を承知していない文書を私の名前で発出されていたことも腹立たしくは思いますが」などと不快感を示しつつ、「少なくとも官庁が閣僚の氏名を使って文書で約束した内容は、絶対に守っていただかなくては困ります」と苦言を呈していた。
経産省側から総務省側に対して説明が十分でなかった点は事実だ。しかし、大臣経験者の高市氏もブログで「総務省でも、最終決裁者が局長であり大臣への説明も為されない書類が大臣名で発出されていることは少なからずありました」と認めるように、行政実務の実態として極めて異常だったとも言いきれない。高市氏が殊更に自らの署名だったことを理由に、決定事項の見直しを迫れば迫るほど、菅首相や経産省、東電から見た時に「揚げ足取り」だと思われかねず、ひいては高市氏を支援する安倍前首相の処理水問題に対する真意に憶測を呼ぶ可能性もある。

「風評被害を拡げる」の批判続出
高市氏の発言が報道された8日夜、ツイッターでは、日本維新の会で処理水問題を担当してきた柳ヶ瀬裕文参議院議員が「いかに困難な決断を菅総理がしたか、理解していない。高市さんのこのような発言が、風評被害を生む契機となる」と猛批判。「総裁になったらガチンコで戦いましょう」と“宣戦布告”もした。
政治家やマスコミの非科学的な言動を批判しているブロガーの藤原かずえ氏も「科学的な論拠もなく非科学的な風評を拡大して理不尽な風評被害を拡げるような発言は厳に慎むべきです。非科学的な風評を払拭するために関係者が科学的な説明に費やした多くの労力と時間を個人の認識で無力化するのはもう勘弁して下さい」と非難。また、処理水問題で、韓国や中国が日本の風評被害を拡大するような対応を見せてきたこともあり、日米の政治に詳しい渡瀬裕哉氏は「菅内閣の決断、台無し。中国や韓国と言っていることが同じ」と切り捨てた。
高市氏は経済政策についても積極財政を掲げる一方で、金融所得増税を打ち出して投資家に総スカンを買ったばかり。Twitterでは、当初支持していた保守層からも「どんどんボロが出る」と嘆く声も出始めている。
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